【第12回】障害者を試しに採用し、継続雇用へつなげる「トライアル雇用助成金」。「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2コースを知ろう
「トライアル雇用」とは、試しに雇うこと。「トライアル雇用助成金」は、障害者を一定期間、試しに雇った企業に支給する助成金です。試しに雇った後、継続雇用につながるケースが多いことから、厚生労働省は制度の拡充に力を入れ、企業へ活用を促しています。
【1.復習】
障害者雇用の助成金全体の中で、「トライアル雇用助成金」の「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」がどこに位置づけられているか、確認してください。
障害者の雇用を促す国の助成金 令和5年度
財源は雇用保険 | 1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | |
2.特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) | ||
3.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | 今回取り上げます | |
4.トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | 今回取り上げます | |
5.キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | ||
6.人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース) | ||
財源は | 7.障害者介助等助成金 | |
8.職場適応援助者助成金 | ||
9.障害者作業施設設置等助成金 | ||
10.障害者福祉施設設置等助成金 | ||
11.重度障害者等通勤対策助成金 | ||
12.重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 |
【2.制度の概要とメリット】
トライアル期間中に、企業は障害の特性や必要な配慮について、障害者は業務や同僚について、それぞれ理解を深めることができるので、継続雇用へつながりやすくなります。厚生労働省によると、トライアル雇用後も約8割の障害者が継続して雇用されています。
複雑なしくみなので、厚生労働省が作った全体像の図をご覧ください。
障害者トライアルコース | 障害者短時間トライアルコース | |
トライアル期間 | 原則3か月 | 3~12か月 |
※身体障害者、知的障害者(いずれも重度を除く)は、1か月または2か月でも可 | ||
トライアル雇用中の週の所定労働時間 | 20時間以上 | 最初の1週間は10時間以上20時間未満 |
【3.対象となる障害者】
障害者短時間トライアルコース | |
トライアル雇用制度を理解した上で、トライアル雇用から継続雇用への移行を希望する次のいずれかの人 | |
①経験のない職業に就くことを希望している人 | ①精神障害者 |
上の表の条件にあてはまる人を、ハローワーク等の紹介により、面接を行って採用する必要があります。
ハローワーク等の「等」は、主に民間の有料職業紹介会社です。厚生労働省が、都道府県別の一覧表を公表しています。参考になさってください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/joseijigyousya.html
また、週の所定労働時間が20時間以上で、かつ、雇用見込み期間が31日以上ある場合には、雇用保険に加入させる必要があります。
<対象にならないケース>
上記の条件をクリアした人でも、対象外になってしまうケースがあります。主なケースを紹介するので、注意してください。
・ハローワーク等の紹介を受ける前に、採用に向けた選考を開始していた場合 |
・トライアル雇用前の過去3年間に、雇用関係、アルバイト、事前研修、出向、派遣、請負、委任により、その企業で働いていた場合 |
・トライアル雇用前の過去3年間に、その企業で職場適応訓練(短期の職場適応訓練を除く)を受けた場合 |
・トライアル雇用前の過去1年間に、その企業と資本・資金・人事・取引などの面で密接な関係にある企業に雇用されていた場合 |
・トライアル雇用される企業の代表者や取締役の3親等以内の親族である場合 |
【4.注意点】
(1) トライアル雇用開始の6か月前からトライアル雇用終了までに、
・雇用保険の被保険者を、会社都合で解雇(勧奨退職を含む)した場合
・トライアルによる雇い入れ日において、特定受給資格者となる離職理由により、雇用保険の被保険者数の6%を超え、かつ4人以上離職させていた場合
(2) 就労継続支援事業A型事業主で、障害者を利用者として雇う場合。ただし、利用者以外(職員など)で雇い入れる場合は、この助成金を利用できます。
【5.テレワークについて】
「障害者トライアルコース」の雇用期間は原則3か月間ですが、テレワーク勤務の場合には、6か月まで延長できます。障害のために通勤が難しい人や在宅勤務を希望する人が、能力を発揮できるように配慮されているのです。
テレワーク勤務とは、1週間の所定労働時間の半分以上について、情報通信機器を使って勤務する場合です。在宅か、サテライトオフィスで勤務する場合に限ります。
※精神障害者は、もともと最大12か月までトライアル雇用期間を延長できます。
【6.助成期間と助成額】
障害者トライアル雇用求人を事前にハローワーク等に提出し、これらの紹介によって、対象者を 原則3か月の有期雇用で雇い入れ、一定の要件を満たした場合、助成金を受けることができます。
精神障害者を初めて雇用する場合、月額最大8万円(最長3か月間) 精神障害者を初めて雇用する場合は、月額最大8万円の助成金を受けることができます。
また、 精神障害者は最大12か月トライアル雇用期間を設けることができます。ただし、助成金の支給対象 期間は3か月間に限ります。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000103771.pdf
【7.活用事例】
【8.まとめ】
ここで書ききれなかった細かい点については、厚生労働省のサイトをご覧ください。申請書類の様式も載っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html
この助成金は、企業がハローワーク等へ「求人票」を出す(求人の申し込みを行う)ところから始まります。
ハローワークでは、インターネット上で求人票を出せる「ハローワークインターネットサービス」を提供しています。企業情報や求人情報を、インターネット上でいつでも入力できます。基本的に、ハローワークへ足を運ぶ必要もありません。無料で全国に求人を出せるのも、大きなメリットです。
ハローワークインターネットサービスのURLを、下に貼っておきます。
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
では、また次回お会いしましょう。
この記事は、厚生労働省の2023年4月20日時点の情報をもとに執筆しています。助成金の内容は頻繁に見直されるので、必ず最新情報をご確認ください。 |
<プロフィル>
安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
メール info@fvp.co.jp障がい者雇用に関するご相談
電話 03-5577-6913
お問い合わせフォーム https://www.fvp.co.jp/contact/
ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。
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