【第3回】「障害者福祉施設設置等助成金」で、障害者が使いやすい食堂や休憩室を整備しよう
このコラムでは、毎回、障害者雇用を促す国の助成金について、くわしく解説しています。
今回取り上げるのは、「障害者福祉施設設置等助成金」です。本題に入る前に、復習用に以下の表を改めて載せておきます。
助成金の「全体像」を、再度、確認してくださいね。障害者福祉施設設置等助成金は、その名の通り「福祉施設」を設置等(=整備)するための助成金です。
う~ん、それにしても「福祉施設」という表現は、ちょっとわかりにくいですね。
具体的には、雇っている障害者が使いやすい、
・食堂
・休憩室
・保健室
・洗面所 など
です。
新設するだけでなく、今ある施設を改修して整備してもOKです。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などは、業務を直接行う場所ではありません。
でも、その会社で働くには、必要不可欠な施設です。
これらの施設が、障害者にとって利用しやすいものでなければ、業務を行うオフィスがいくらバリアフリーになっていても、働き続けることは難しいでしょう。
そこで、食堂、休憩室、保健室、洗面所などを、障害者の特性に合わせて使いやすくするために、障害者福祉施設設置等助成金があるのです。
※認定申請=「助成金の受給資格がある」と同機構に認定してもらうための申請
①について補足します。まず、「対象となる障害者」をはっきりさせなければなりません。
つまり、漠然と「バリアフリーの食堂や休憩室などを整備する」というのでは、ダメなのです。
同機構から③の「認定」を受ける前に着手すると、助成金をもらえない――という原則も覚えておいてください。
「着手」とは、工事や設備購入の発注・契約・支払いのことです。
「助成金の受給資格あり」と認定された後に着手しなければならない、ということです。
※例外的に、「事前着手申出書」を同機構に提出すると、認定前に着手できます。
対象となるのは、身体、知的、精神障害者。既に雇い入れていなければなりません。
「これから雇う予定」では、条件をクリアしません。
就労継続支援A型(雇用契約あり)の利用者は、対象外です。
また、たんに施設を整備すればよい、というわけではありません。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などをつくることで、障害者の「福祉の増進」につながる必要があるのです。
「福祉の増進」も、わかりにくい言葉ですね(-_-;)。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などを整備し、利用してもらった結果、その障害者の就労にもプラスになる――。
そういう条件が課されている、と考えてください。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などが次のケースにあてはまると、助成の対象外になるので、注意してください。この助成金の対象となる施設について、高齢・障害・求職者雇用支援機構の資料を基に、具体例を紹介します。
どのケースも、「障害者の福祉の増進を図るうえで、障害特性に配慮した措置」と認められ、助成金の対象となりました。
もちろん、対象となる障害者以外の人が使う部分は、助成の対象外です。
どのような施設なら、助成金の対象として認められるのか、イメージがわくと思います。
また、次のようなものは助成の対象外です。原則として、助成金対象に認定された費用の3分の1が助成されます。
ただし、次の支給限度が定められています。
①対象となる障害者につき1人225万円
②対象となる障害者が「短時間労働者」(※)の場合は①の半額
③同一年度あたり2,250万円
※「短時間労働者」
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を除く
助成金を受給した企業は、支給決定日から1年以上、対象の障害者を雇い続ける義務があります。
例えば、車いすを利用している労働者「Aさん」のために、この助成金を使って、Aさんの障害特性に合った「バリアフリーの休憩室」を整備したとします。
この場合、企業は、支給決定日から少なくとも1年間は、Aさんのためにバリアフリーの休憩室を使い、Aさんを雇い続けなければならないのです。
また、この1年間のAさんの「実労働時間」(実際に働いた時間)にも、ルールがあります。1年間の半分超の月は、実労働時間が「80時間以上」でなければならないのです。精神障害者の場合は「月60時間以上」です。
今回は、「障害者福祉施設設置等助成金」について解説しました。
さらにくわしい情報は、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイトにある資料をご覧ください。
「障害者雇用助成金のごあんない」
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/q2k4vk000001wqqn-att/q2k4vk000001zfan.pdf
また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれます。
助成金受給を検討中の企業は、早めに相談してみてください。
◆
今回も、長文を読んでいただき、ありがとうございました。
また1か月後に、お会いしましょう。
では、このへんで!
今回取り上げるのは、「障害者福祉施設設置等助成金」です。
【1】復習
助成金の「全体像」を、再度、確認してくださいね。
障害者の雇用を促す国の助成金(令和4年度)
【2】障害者福祉施設設置等助成金とは?
う~ん、それにしても「福祉施設」という表現は、ちょっとわかりにくいですね。
具体的には、雇っている障害者が使いやすい、
・食堂
・休憩室
・保健室
・洗面所 など
です。
新設するだけでなく、今ある施設を改修して整備してもOKです。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などは、業務を直接行う場所ではありません。
でも、その会社で働くには、必要不可欠な施設です。
これらの施設が、障害者にとって利用しやすいものでなければ、業務を行うオフィスがいくらバリアフリーになっていても、働き続けることは難しいでしょう。
そこで、食堂、休憩室、保健室、洗面所などを、障害者の特性に合わせて使いやすくするために、障害者福祉施設設置等助成金があるのです。
【3】助成金をもらうまでの流れ
初めに、この助成金をもらうまでの大まかな「流れ」を説明します。
① 対象となる障害者を決め、食堂や休憩室などの整備計画を立てる② 高齢・障害・求職者雇用支援機構に認定申請する
※認定申請=「助成金の受給資格がある」と同機構に認定してもらうための申請
③ 同機構が「助成金の受給資格あり」と認定
④ 認定から1年以内に、食堂や休憩室などを整備し、費用を支払う
⑤ 同機構へ助成金を請求(支給請求)
⑥助成金の支給決定「認定」というワードが、この後も出てくるので、憶えておいてくださいね。
①について補足します。まず、「対象となる障害者」をはっきりさせなければなりません。
つまり、漠然と「バリアフリーの食堂や休憩室などを整備する」というのでは、ダメなのです。
同機構から③の「認定」を受ける前に着手すると、助成金をもらえない――という原則も覚えておいてください。
「着手」とは、工事や設備購入の発注・契約・支払いのことです。
「助成金の受給資格あり」と認定された後に着手しなければならない、ということです。
※例外的に、「事前着手申出書」を同機構に提出すると、認定前に着手できます。
【4】助成金をもらう条件
この助成金をもらう主な「条件」は、次のようになっています。
障害者を現在雇っている(「これから雇う予定」は対象外)
の障害者の福祉の増進に役立つ食堂、休憩室、保健室、洗面所などを整備する
認定申請以前の1年間に、障害者を会社の都合で解雇していない
「これから雇う予定」では、条件をクリアしません。
就労継続支援A型(雇用契約あり)の利用者は、対象外です。
また、たんに施設を整備すればよい、というわけではありません。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などをつくることで、障害者の「福祉の増進」につながる必要があるのです。
「福祉の増進」も、わかりにくい言葉ですね(-_-;)。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などを整備し、利用してもらった結果、その障害者の就労にもプラスになる――。
そういう条件が課されている、と考えてください。
食堂、休憩室、保健室、洗面所などが次のケースにあてはまると、助成の対象外になるので、注意してください。
事業主等が所有していない
中古品や自社製品で整備
関係会社、関連会社に工事等を発注
関係会社、関係会社から設備等を購入
事業主が自ら工事を行う
障害者が所有するものを使って整備
【5】どんな施設が対象になるの?
どのケースも、「障害者の福祉の増進を図るうえで、障害特性に配慮した措置」と認められ、助成金の対象となりました。
もちろん、対象となる障害者以外の人が使う部分は、助成の対象外です。
どのような施設なら、助成金の対象として認められるのか、イメージがわくと思います。
助成金を申請する企業の状況は千差万別なので、同じような申請内容であっても、助成金の対象にならないケースもあります。
また、次のようなものは助成の対象外です。
会議室を休憩室にも使うなど、他の用途と兼用の施設
施設の設置・整備に伴う、既存の建物・設備の解体、撤去、廃棄費用
自治体への建築確認申請の費用
【6】助成額は?
ただし、次の支給限度が定められています。
①対象となる障害者につき1人225万円
②対象となる障害者が「短時間労働者」(※)の場合は①の半額
③同一年度あたり2,250万円
※「短時間労働者」
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を除く
【7】1年以上雇用する義務
例えば、車いすを利用している労働者「Aさん」のために、この助成金を使って、Aさんの障害特性に合った「バリアフリーの休憩室」を整備したとします。
この場合、企業は、支給決定日から少なくとも1年間は、Aさんのためにバリアフリーの休憩室を使い、Aさんを雇い続けなければならないのです。
また、この1年間のAさんの「実労働時間」(実際に働いた時間)にも、ルールがあります。1年間の半分超の月は、実労働時間が「80時間以上」でなければならないのです。精神障害者の場合は「月60時間以上」です。
【8】まとめ
さらにくわしい情報は、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイトにある資料をご覧ください。
「障害者雇用助成金のごあんない」
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/q2k4vk000001wqqn-att/q2k4vk000001zfan.pdf
また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれます。
助成金受給を検討中の企業は、早めに相談してみてください。
◆
今回も、長文を読んでいただき、ありがとうございました。
また1か月後に、お会いしましょう。
では、このへんで!
この記事は、厚生労働省、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の2022年7月20日時点の情報をもとに執筆しています。助成金の内容は頻繁に見直されるので、必ず最新情報をご確認ください。 |
<プロフィル>
安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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