【第10回】ハローワーク等を通じて障害者を採用!「特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース」
まずは、「特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース」です。
「特定就職困難者」とは、高齢者、シングルマザー、障害者など、一般的に就職が特に難しいとされる求職者のことです。職を求めているのに、年齢や障害、家族の状況などにより、就職がとりわけ難しい状態にある人たちです。
この「特定就職困難者」を、ハローワーク等の紹介で雇い、その他の条件もクリアすると、その企業に助成金が支給されるのです。
助成金を出すことで、障害者の雇用を促す狙いがあります。
【1.復習】
障害者雇用の助成金全体の中で、「特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース」がどこに位置づけられているかを、再確認してくださいね。
障害者の雇用を促す国の助成金(令和4年度)
| 1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 今回取り上げます |
2.特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) | ||
3.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | ||
4.トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | ||
5.キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | ||
6.人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース) | ||
財源は | 7.障害者介助等助成金 | |
8.職場適応援助者助成金 | ||
9.障害者作業施設設置等助成金 | ||
10.障害者福祉施設設置等助成金 | ||
11.重度障害者等通勤対策助成金 | ||
12.重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 |
【2.対象となる企業】
このほかにも、細かい条件があるのですが、煩雑で、わかりにくくなるので省きます。まずは、以下の「基本5条件」を頭に入れてください。
①雇用保険適用事業所である(=雇用保険の被保険者がいる)企業が、 |
まず、②の「65歳未満の障害者」についてです。
「65歳未満の障害者」は、次の二つに分類されます。
<1> | 紹介を受けた日に、雇用保険の被保険者でない人= |
<2> | 週の所定労働時間30時間以上で雇う場合には、紹介を受けた日に、雇用保険の被保険者であってもOK |
ハローワーク等の紹介を受ける前から、雇用の内定(予約)があった場合 |
ハローワーク等から紹介された障害者が、雇い入れる企業との間に過去3年間に、次の関係があった場合 |
ハローワーク等から紹介された障害者が、事業主や取締役の3親等以内の親族 |
この「等」とは、厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者のことです。主に民間の有料職業紹介会社です。
厚生労働省が、職業紹介事業者の一覧を都道府県別に公表しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/joseijigyousya.html
④「継続して雇用する労働者」とは、次の条件をすべて満たす形で雇う労働者のことです。
▽雇用保険の被保険者 |
また、あらゆる助成金に共通する基本的な条件として、労働条件通知書(雇用契約書)、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、就業規則が整っていることが不可欠です。
また、賃金の不払いや残業代の未払いがある状態では、助成金はもらえません。
基本的な労務管理ができているか、必ず確認してください。できていなければ、改善してから、助成金を申請してください。
【3.助成額】
「中小企業」とは、次の表にあてはまる企業です。この表にあてはまらない企業は「中小企業以外」となります。
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下、または常時雇用労働者50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下、または常時雇用労働者100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下、または常時雇用労働者100人以下 |
その他 | 資本金3憶円以下、または常時雇用労働者300人以下 |
<中小企業>
1人あたり助成額 | 助成期間 | ||
短時間労働 | 80万円 | 2年(20万円×4期) | |
短時間労働 以外 | ・身体障害者 | 120万円 | 2年(30万円×4期) |
・重度身体障害者 | 240万円 | 3年(40万円×6期) | |
<中小企業以外>
1人あたり助成額 | 助成期間 | ||
短時間労働 | 30万円 | 1年(15万円×2期) | |
| ・身体障害者 | 50万円 | 1年(25万円×2期) |
・重度身体障害者 | 100万円 | 1年6ヶ月 |
助成金の申請は、1期(6か月)ごとに行います。各期の末日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局へ申請します。2か月以内に申請しないと、原則として助成金を受けられないので、注意してください。
【4.まとめ】
ここで書ききれなかった細かい点については、厚生労働省のサイトをご覧ください。
申請書類の様式も載っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
特定求職者雇用開発助成金については、ハローワーク等の紹介を受けて人材を採用すると、労働局から助成金の申請書類が企業へ送られてきます。「積極的に助成金を受給してください」と勧めてくれるのです。
わからないことがあれば、労働局に相談しやすい助成金と言えます。
また、「特定求職者雇用開発助成金」は、企業がハローワーク等へ、「求人票」を出す(求人の申し込みを行う)ところから始まります。
ハローワークでは現在、インターネット上で求人票を出せる「ハローワークインタネットサービス」も行っています。
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
しかし、求人情報を書き込むこと自体、かなりの時間と手間がかかります。過去にハローワーク等に求人票を出した経験がない企業だと、慣れていないために、めんどうになって助成金獲得ををあきらめてしまうケースがあります。零細企業の中には、「そんな時間がない」というところも少なくないです。
とてももったいないことです。ぜひ、ゆとりをもって早めに準備をスタートしてください。
また、「特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース」を使って障害者を無期雇用で雇い入れた後、正社員に転換すると、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」も狙うことができます。
では、また次回お会いしましょう!
この記事は、厚生労働省、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の2023年2月20日時点の情報をもとに執筆しています。助成金の内容は頻繁に見直されるので、必ず最新情報をご確認ください。 |
<プロフィル>
安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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