【第2回】「障害者作業施設設置等助成金」で働ける環境を整えよう

前回、「障害者雇用を促す国の支援制度」について、全体像をお伝えしました。
今回から、助成金についてひとつずつ、くわしく紹介していきます。
まずは、「障害者作業施設設置等助成金」をとりあげます。

【1】    復習

その前に、復習の意味も込めて、助成金の「全体像」がひと目でわかる表を、改めて載せます。
特定求職者雇用開発助成金 (特定就職困難者コース),特定求職者雇用開発助成金 (発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) ,トライアル雇用助成金 (障害者トライアルコース) ,トライアル雇用助成金 (障害者短時間トライアルコース) ,キャリアアップ助成金 (障害者正社員化コース), 人材開発支援助成金 (障害者職業能力開発コース) ,障害者介助等助成金 ,職場適応援助者助成金, 障害者作業施設設置等助成金 ,障害者福祉施設設置等助成金 ,重度障害者等通勤対策助成金 ,重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金
ポイントは、
①支援制度の財源は2種類(雇用保険と障害者雇用納付金)ある
②助成金は12種類(令和4年度)
です。

今回の記事で紹介するのは、表中の助成金「9 障害者作業施設設置等助成金」です。

12種類の助成金を番号順に説明していってもよいのですが、「障害者作業施設設置等助成金」の内容を知ると、「障害者を雇うには、どんな配慮が必要なのか」という基本的なことがイメージできるので、最初にとりあげることにしました。

【2】どんな助成金?

障害者作業施設設置等助成金は、障害のある従業員が働けるように、「作業施設等」を導入するための助成金です。身体、知的、精神障害者が対象です。

助成額は、原則として、「作業施設等」の導入にかかった費用の3分の2。
助成の上限が細かく設定されていますが、「原則3分の2」と覚えておいてください。

また、この助成金は、第1種と第2種に分かれています。
おおまかに説明します。
どちらも原則、かかった費用の3分の2を助成してもらえます。

しかし、「作業施設等」を導入すれば、何でも助成の対象になるわけではありません。
ポイントは、

その「作業施設等」を導入しなければ、障害者を雇うことが難しく、かつ「必要最低限」

――という点です。

助成金を申請する企業は、

・働くうえで、障害の特性によりどんな課題があるのか?
・「作業施設等」の導入により、その課題がどう解消されるのか?

について、事業計画書などで具体的に説明しなければなりません。
申請先の「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」も、その点を厳格に審査します。

ところで、「作業施設等」とは、どういったものでしょうか?
一覧表に整理しました。
作業施設等
そこで、助成金が認められたケース、認められなかったケースについて、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の資料を参考に、具体的に紹介します。
これを読むと、「なるほど!」という感じがするのではないでしょうか。

実際には、同機構が個別の状況などを総合的に審査するので、以下の事例に似ているケースでも、同じ判断になるとは限りません。
申請された施設などの一部だけが助成対象となる場合もあります。
助成対象となったケース
助成対象にならなかったケース
また、「作業施設等」が以下に該当する場合は、助成の対象外です。
注意してください。

<第1種>
・作業施設等を事業主自らが所有しない
・中古品や自社製品を導入
・関係会社、関連会社に工事などを発注
・関係会社、関連会社から購入
・助成金を申請する事業主が自ら工事などを実施
・対象となる障害者が所有するものを導入

<第2種>
・中古品や自社製品を賃借
・転賃借(「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が認める場合をのぞく)
・関係会社、関連会社が所有するものを賃借
・対象となる障害者や申請する事業主(代表者、役員)が所有するものを賃借

【3】対象となる障害者

障害者作業施設設置等助成金の対象となる障害者について、くわしく説明します。
以下のすべてを満たす人が対象になります。
①身体、知的、精神障害のいずれかがある②無期雇用、または1年超の有期雇用(1年超の有期雇用見込みを含む)③週所定労働時間が20時間以上(精神障害者は15時間以上)④「作業施設等」を導入しなければ、雇い入れや雇用継続が困難
また、①~④を満たせば、以下の人も対象になります。

・助成金の申請日以前「6か月以内」に雇い入れた人
・申請日以後でも、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が認めた人

助成金の受給資格認定日時点で、雇い入れから6か月超たっている場合、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から、「助成金により作業施設等を導入する十分な必要性がない」と判断されると、助成金の対象になりません。

また、就労継続支援A型事業所の利用者は対象外です。

【4】手続きの流れ

手続きの流れは、おおまかに以下のようになっています。①    「高齢・障害・求職者雇用支援機構」へ申請(認定申請)する。
        認定申請とは、「助成金の受給資格がある」ことを、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に認定してもらうための申請です。
②    「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から、「受給資格あり」の認定を受ける。
③   作業施設等の導入に着手する。
   着手とは、発注や契約のことです。
原則として、受給資格の認定を受けた後でなければ、着手はできません。
認定前に着手してしまうと、受給資格が「不認定」や「取り消し」となり、助成金をもらえないので、注意が必要です。
⑤    「高齢・障害・求職者雇用支援機構」へ、助成金を請求(支給請求)する。
⑥    「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が審査し、助成金の支給/不支給を決定

【5】まとめ

ここまで、障害者作業施設設置等助成金について、できる限り丁寧に説明してきました。それでも、十分に書ききれていません。
そのくらいルールや手続きが複雑なのです。

助成金の受給を検討している場合、早めに「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の都道府県支部に相談することを勧めます。
都道府県支部が窓口となって、企業からの相談にのり、提出書類の受理・点検をしてくれるからです。

このコラムを読んで、さらにくわしく知りたい場合には、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイトにある資料が役に立ちます。

「障害者雇用助成金のごあんない」
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/q2k4vk000001wr2n-att/q2k4vk000001wsnv.pdf

提出する書類についての説明、記入のしかたも書かれています。

                        ◆

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
約1か月後に、次回のコラムを載せるので、また読んでくだされば幸いです。

では、このへんで!
<プロフィル>

安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者

1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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