【第6回】「職場適応援助者助成金」を活用し、ジョブコーチを配置

この連載では、毎回、障害者の雇用を応援する「国の助成金」について、
くわしく解説しています。
今回は、ジョブコーチを配置するための「職場適応援助者助成金」をとりあげます。

【1.復習】

本題に入る前に、今回も、「復習用の一覧表」を載せておきます。
助成金制度の「全体像」をおさえ、そのうえで、「職場適応援助者助成金」が
どこに位置づけられているか、再確認してください。

障害者の雇用を促す国の助成金(令和4年度)

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【2.職場適応援助者助成金の全体像】

この助成金は、「ジョブコーチ(職場適応援助者)」を配置するためのものです。

ジョブコーチは、障害者がスムーズに職場になじんで、良い仕事ができるよう、
きめ細かくサポートをする専門職。
障害者本人、家族へ助言・指導するだけでなく、
企業へも、雇用管理面のアドバイスを行います。

職場適応援助者助成金は、次の2種類にわかれています。

【3.訪問型職場適応援助者の助成金】

<助成金の対象>

訪問型職場適応援助者の助成金が支給されるのは、
ジョブコーチを企業へ無料で派遣し、職場適応援助を行う法人です。

障害者を雇っている企業へ支給されるわけではないので、
注意してください。

法人とは、例えば、

障害者就業・生活支援センターの指定法人
障害者総合支援法の就労移行支援事業を行う法人
障害者総合支援法の就労定着支援事業を行う法人

などです。

職場適応援助は、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」
地域障害者職業センターの「支援計画」に基づいて行う必要があります。
<支援の対象となる障害者>訪問支援の対象となるのは、

常用雇用されている、 
または、
支援計画の開始日から2か月以内に常用雇用されることが確実な、
次のいずれかの人です。
①身体障害者
②知的障害者
③精神障害者(週の所定労働時間が15時間以上)
④発達障害者
⑤難病患者
⑥高次脳機能障害のある人
⑦ ①~⑥以外で、地域障害者職業センターが作る職業リハビリテーション計画で、ジョブコーチによる支援が必要と認められる人
<実施する支援>対象となる障害者に、支援計画に基づき、訪問による次の支援を行います。
支援期間は、最長1年8か月(精神障害者は2年8か月)です。
①支援計画書の策定
②支援総合記録票の策定
③障害のある労働者への支援
④事業主に対する支援
⑤家族に対する支援
⑥精神障害者の状況確認
⑦地域センターが開催するケース会議への出席
⑧その他(地域障害者職業センターが、職業リハビリテーション計画に基づき必要と認めた支援)
<助成額>助成額は、次の①と②の合計です。

①支援計画に基づいて支援を行った日数 × 以下の単価

②受講料

<訪問型職場適応援助者の条件>訪問型職場適応援助者になるには、

・養成研修を修了した
・障害者の就労支援の業務経験が1年以上ある

などの条件を満たさなくてはなりません

【4.企業在籍型職場適応援助者の助成金】

<助成金の対象>社内に、ジョブコーチによる支援体制をつくる事業主が、
自社で雇う障害者に、企業在籍型のジョブコーチによる職場適応援助を行う場合に
助成されます。

職場適応援助は、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」
地域障害者職業センターの「支援計画」に基づいて行う必要があります。
<支援の対象となる障害者>対象となるのは、常用雇用されている以下の人です。
①身体障害者
②知的障害者
③精神障害者(週の所定労働時間が15時間以上)
④発達障害者
⑤難病患者
⑥高次脳機能障害のある人
⑦ ①~⑥以外で、地域障害者職業センターが作る職業リハビリテーション計画で、ジョブコーチによる支援が必要と認められる人
※就労継続支援A型事業所の利用者は対象外です。<実施する支援>対象となる障害者に、支援計画に基づき次の支援を行います。
支援期間は、最長6か月です。
①本人と家族への支援
②社内に職場適応体制をつくるための調整
③関係機関との調整
④その他の支援(地域障害者職業センターが必要と認め、支援計画に盛り込んだ支援)
<助成額>助成額は、次の①と②の合計です。

①次の表の金額 × 支援を行った月数

<中小企業>障害者1人あたり月額

<大企業>障害者1人あたり月額

②受講料

※参考
 短時間労働者・・・週の所定労働時間が、正社員より短く、かつ
          20時間以上30時間未満(精神障害者は15時間以上20時間未満)の人
<企業在籍型職場適応援助者の条件>訪問型職場適応援助者になるには、

・その企業に常用雇用されている
・養成研修を修了した
・養成研修を修了後はじめて支援を行う際には、地域障害者職業センターに配置されている職場適応援助者とともに支援を行う

などの条件を満たさなくてはなりません。

【5.助成された例】

職場適応援助者助成金は、どのようなケースでもらえるのでしょうか。
高齢・障害・求職者雇用支援機構の資料を参考に、実例を挙げます。

知的障害のあるAさんは、B社にトライアル雇用で採用されました。
はじめての職業生活で、
社会人としてのマナー、健康状態、作業手順を覚えることに不安がありました。


そこで、B社は「企業在籍型職場適応援助者」の助成金を活用し、
資格を持っている社員のCさんをジョブコーチとして配置。
支援計画をつくり、Aさんを援助できる体制を整えました。

ジョブコーチのCさんは、
ビジネスマナーや健康管理についてアドバイスしたり、
具体的な作業手順をわかりやすく教えたりしながら、
Aさんが働くうえでの課題を解消。
その結果、Aさんはトライアル雇用が終わった後、
社員として雇用され、働き続けることになりました。

【6.まとめ】

今回は、「職場適応援助者助成金」
をとりあげました。

さらに細かい情報や、申請書類の様式は、
「高齢・障害・求職者雇用者雇用支援機構」のウェブサイト
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html
にある、以下の資料などを参照してください。

訪問型職場適応援助者の助成金
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/sub04_houmongata_shokubatekiou.html

企業在籍型職場適応援助者の助成金
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/sub04_kigyouzaisekigata_shokubatekiou.html

また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれます。



今回も、読んでいただき、ありがとうございました。
寒くなってきたので、体に気をつけてお仕事なさってください。

<プロフィル>

安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者

1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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