【第11回】ハローワーク等を通じて採用 「特定求職者雇用開発助成金 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」

「特定求職者雇用開発助成金」は、雇用保険を財源とする助成金です。就職が特に難しい人を、ハローワーク等の紹介で雇った企業に助成金を出します。令和5年度は5コースが設けられ、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」はそのうちの1コースです。

発達障害者と難治性疾患(難病)患者は、他の障害に比べ、民間企業への就職がよりいっそう難しいです。そこで、厚生労働省がひとつのコースを設けて、企業へ雇用を促しているのです。

また、今回の記事では、特定求職者雇用開発助成金が1.5倍になる「上乗せコース」についても案内します。「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」と、前回紹介した「特定就職困難者コース」の対象者も、「上乗せコース」の対象になっています。

【1.復習】

本題に入る前に、今回も、「復習用の一覧表」を掲載します。
障害者雇用の助成金全体の中で、「特定求職者雇用開発助成金 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」がどこに位置づけられているか、確認してください。

障害者の雇用を促す国の助成金 令和5年度

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【2.対象となる企業】

企業が、「特定求職者雇用開発助成金 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の助成金を受け取るには、次の4つの条件をすべてクリアしなければなりません。ほかにも細かい条件がありますが、まずは、この「基本4条件」をおさえてください。
補足的に説明します。

まず、①の「発達障害者」と「難病患者」ですが、次のように決まっています。

<発達障害者>
発達障害者支援法に定められた発達障害者のことです。
具体的には、障害者手帳を持っていない次の発達障害がある人です。

・自閉症
・アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害
・学習障害
・注意欠陥多動性障害
・そのほか類似の脳機能障害

<難病患者>
障害者総合支援法の対象疾病にかかっていて、障害者手帳を持っていない人です。
現在(令和3年11月~)、366種類の疾病が対象になっています。
ここには書ききれないので、厚生労働省のサイト(下記URL)を参照してください。
また、時々、対象疾病が見直されるので、注意してください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html

②の「ハローワーク等」の「等」についても、説明します。
この「等」とは、主に民間の有料職業紹介会社です。
厚生労働省が、職業紹介事業者の一覧を都道府県別に公表しています。
参考になさってください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/joseijigyousya.html

③の「継続して雇用する労働者」とは、次の条件をすべて満たす形で雇う労働者のことです。
④の「雇用状況」の労働局への報告は、雇い入れた発達障害者や難病患者の状況を報告することです。規定の「雇用管理事項報告書」を使って、1回目の助成金支給申請の際に、労働局へ報告します。

報告書には、「職務遂行」「コミュニケーション・対人関係」「健康管理」などについて、次の3点を記入します
この報告書をもとに、ハローワーク職員が職場を訪問し、現状を確認します。

また、助成金の対象とならないケースもあります。主なケースを以下に紹介するので、注意してくださいね。原則として、「自社と関係のない」発達障害者や難病患者を新たに雇い入れなければなりません。

<助成金の対象とならない主なケース>

【3.助成額】

助成金の額は、「中小企業」と「中小企業以外」で異なります。

「中小企業」とは、次の表にあてはまる企業です。この表にあてはまらない企業は「中小企業以外」となります。
助成額を「中小企業」と「中小企業以外」に分けて、下の表で説明します。

<中小企業>

対象となる障害者

<中小企業以外>

対象となる障害者

「中小企業」も「中小企業以外」も、助成額は、実際に支払った賃金額が上限となります。

助成金の申請は、1期(6か月)ごとに行います。各期の末日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局へ申請します。2か月以内に申請しないと、原則として助成金を受けられないので、注意してください。

【4.助成額1.5倍コース】

ハローワーク等の紹介で雇い入れた障害者に、職業訓練を実施し、かつ賃金を引き上げた場合には、助成額が1.5倍になる「上乗せコース」を利用できます。

この「上乗せコース」は、「特定求職者雇用開発助成金 成長分野等人材確保・育成コース」と言います。「特定求職者雇用開発助成金」の各コースで「就職困難者」となっている人(シングルマザー、高齢者、生活保護受給者、障害者、就職氷河期世代など)が対象です。

障害者関連では、今回紹介した「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」と、前回解説した「特定就職困難者コース」が、「上乗せコース」の対象となり得ます。

とても複雑なしくみなので、ポイントを絞って説明しますね。

上乗せコースの対象となるには、次の条件をクリアする必要があります。ほかにも細かい条件がありますが、まず、これらの基本条件を把握しておいてください。
④の「賃金」は、就業規則や賃金規程に定められた「毎月決まって支払われる賃金」のことです。賞与、時間外手当、住宅手当、家族手当、通勤手当などは除きます。

①~④の条件をクリアすると、次の表のとおり、助成額が1.5倍になります。
表の中の「短時間労働」とは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満のことです。

<中小企業>

対象となる障害者

<中小企業以外>

対象となる障害者

「上乗せコース」(成長分野等人材確保・育成コース)は、受給条件のハードルがやや高い印象がありますが、チャレンジしてみる価値はありそうです。詳細は、厚生労働省のウェブサイトを参照してください。URLは次の通りです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_seichou_00008.html

【5.まとめ】

今回は、「特定求職者雇用開発助成金 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」
を紹介しました。
ここで書ききれなかった細かい点については、厚生労働省のサイトをご覧ください。
申請書類の様式も載っています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/hattatsu_nanchi.html


「特定求職者雇用開発助成金」は、企業がハローワーク等へ「求人票」を出す(求人の申し込みを行う)ところから始まります。

ハローワークでは、インターネット上で求人票を出せる「ハローワークインターネットサービス」を提供しています。アカウントの登録など、利用を開始するまでに少し手間がかかりますが、企業の情報や求人情報を、インターネット上でいつでも入力できます。基本的に、ハローワークへ足を運ぶ必要もありません。なんといっても、無料で全国に求人を出せるのが、大きなメリットです。

下に、ハローワークインターネットサービスのURLを貼っておきます。

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
今回も最後まで読んでいただき、感謝申し上げます。
では、また次回お会いしましょう!
<プロフィル>

安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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