【第4回】「障害者介助等助成金」を活用し、職場サポートをレベルアップ!<前編>
くわしく解説しています。
今回と次回の2回に分け、「障害者介助等助成金」をとりあげます。
【1.復習】
助成金制度の「全体像」をおさえ、そのうえで、各助成金がどこに位置づけられているか、再確認してください。
障害者の雇用を促す国の助成金(令和4年度)
<財源> | 1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | |
2.特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) | ||
3.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | ||
4.トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | ||
5.キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | ||
6.人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース) | ||
<財源> | 7.障害者介助等助成金 | 今回と次回の2回に分けてとりあげます |
8.職場適応援助者助成金 | ||
9.障害者作業施設設置等助成金 | ||
10.障害者福祉施設設置等助成金 | ||
11.重度障害者等通勤対策助成金 | ||
12.重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 |
【2.障害者介助等助成金の全体像】
障害者介助等助成金は、企業が「障害者をサポートする人」を置くことで、
障害者を雇い入れたり、雇い続けたりすることが目的です。
「サポートする人がなければ、障害者の雇い入れや雇用継続が難しい」
と認められなければ、この助成金はもらえません。
必要性が低いのにサポートする人を置いても、助成されないのです。
<大まかに6つに細分化>
障害者介助等助成金は、14種類に細かく分けられています。
14種類を整理したうえで、利用可能性が高い6つに絞って、
今回と次回の記事で紹介します。
その6つは、以下の通りです。
職場介助者の配置・委嘱助成金
職場介助者の配置・委嘱継続助成金
手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金
障害者相談窓口担当者の配置助成金
職場支援員の配置・委嘱助成金
職場復帰支援助成金
<配置と委嘱の違い>
各助成金の説明に入る前に、「配置」と「委嘱」の違いをお伝えします。
「配置」=社員を「職場介助者」などに任命すること
「委嘱」=社員以外の人に「職場介助者」などをまかせること
大雑把な説明ですが、「配置」と「委嘱」の違いがイメージできれば、OKです。
<共通の手続き>
助成金をもらうまでの大まかな手続きは、6つの助成金すべて共通で、
以下の手順で行います。
(1)高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部に、受給資格認定申請を行う
⬇
(2)「受給資格あり」と認定されたら、職場介助者の配置・委嘱などを行う
⬇
(3)高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部に、助成金の支給請求を行う
【3.職場介助者に関する助成金】
①職場介助者の配置・委嘱助成金
②職場介助者の配置・委嘱継続助成金 をとりあげます。
①は、職場介助者を配置or委嘱するための助成金です。支給期間は10年です。
②は、職場介助者の配置or委嘱を続けるため、「①職場介助者の配置・委嘱助成金」の支給期間(10年)が終わった後にもらう助成金です。
<対象となる障害者>
①②の助成金の対象となる障害者は、以下のようになっています。
視覚障害 | 2級以上 |
四肢機能障害 | 両上肢・両下肢ともに2級以上 |
以下を重複 |
★注意
職場介助者の配置・委嘱助成金では、対象となる障害者が雇用開始から1年を超え、
「介助などの必要性が十分でない」と判断された場合、助成対象になりません。
<助成率や限度額など>
助成率や限度額、支給期間などについては、下の一覧表に整理しました。
仕事 | 対象となる障害者(詳細は上記) | 助成率 | 限度額 | 支給期間 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
職場介助者配置1人 | 職場介助者 | |||||
①職場介助者の配置・委嘱助成金 | 事務 | 視覚障害者 | 3/4 | 月15万円 | 1回1万円、 | 10年 |
事務以外 | 視覚障害者 | ー | 1回1万円、 | |||
②職場介助者の配置・委嘱継続助成金 | 事務 | 視覚障害者 | 2/3 | 月13万円 | 1回9,000円、年135万円まで | ①職場介助者の配置・委嘱助成金の支給期間終了後5年 |
事務以外 | 視覚障害者 | ー | 1回9,000円、年22万円まで |
<職場介助者がやるべきこと>
単に「職場介助者」を配置or委嘱するだけでは、助成金はもらえません。
対象となる障害者の判断・指示に基づく以下の直接介助を行う必要があります。
視覚障害者 | ・事務処理に必要な文書の朗読、録音テープの作成 | ・文書作成とその補助 |
四肢機能障害者 | ・機械操作、コンピュータ入力とその補助 |
企業の代表や役員などが職場介助者になっても、助成金の対象にはなりません。
【4.手話通訳・要約筆記に関する助成金】
③手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金 です。
聴覚障害のある従業員の業務をサポートするには、
手話や、話の内容を要約して書き示す「要約筆記」が必要です。
そこで、企業が「手話通訳」や「要約筆記担当者」を委嘱する際に、
この助成金を利用することができます。
この助成金は、「委嘱」だけが対象で、「配置」は対象になりません。
<対象となる障害者、助成率、限度額など>
この助成金は、さほど複雑ではありません。
一覧表にまとめたので、ご覧ください。
対象となる障害者 | 助成率 | 限度額(委嘱1人) | 支給期間 | |
③手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金 | 6級以上の聴覚障害者 | 3/4 | 1回6,000円、 | 10年 |
対象となる聴覚障害者が雇用開始から1年を超え、「介助などの必要性が十分でない」
と判断された場合、助成対象になりません。
<手話通訳・要約筆記担当者がやるべきこと>
手話通訳や要約筆記の担当者は、聴覚障害者がスムーズに仕事をできるよう、
以下のいずれかのサポートを行わなくてはなりません。
・業務で必要な手話通訳、要約筆記など
・研修時に必要な手話通訳、要約筆記など
・他の従業員への手話研修など
【5.活用の具体例】
「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の資料をもとに、いくつか紹介します。
<社会福祉法人>
障害 | 全盲 |
課題 | 施設長としての業務遂行 |
サポート | 助成金で職場介助者を委嘱し |
<企業>
障害 | 聴覚 |
課題 | 研修時に手話通訳者を付けていたが、コロナウイルス対策のため、自宅でのテレビリモート研修に変更。画面越しの手話通訳では、内容の理解が困難に |
サポート | 助成金で要約筆記担当者を委嘱し、テレビ画面に字幕を付ける |
<企業>
障害 | 四肢機能 |
課題 | 経理事務の遂行。以下の行為にサポートが必要 |
サポート | 助成金で職場介助者を配置し、直接サポート |
<病院>
障害 | 両感音性難聴 |
課題 | 外来診療の医師としての業務遂行 |
サポート | 助成金で要約筆記担当者を委嘱し、パソコンを使い患者の話を文字で要約 |
<企業>
障害 | 聴覚障害者を多数雇用 |
課題 | 業務上のやりとりを筆談、口話、初歩的な手話で行っていたが、コミュニケーションがスムーズに進まず、担当業務も限られがちに |
サポート | 助成金で手話通訳者を委嘱し、 |
<企業>
障害 | 視覚 |
課題 | 営業担当者を電話で統括指導する業務の遂行 |
サポート | 助成金で職場介助者を配置し、 |
<企業>
障害 | 視覚 |
課題 | 課題 |
サポート | 助成金で職場介助者を配置し、 |
【6.まとめ】
①職場介助者の配置・委嘱助成金
②職場介助者の配置・委嘱継続助成金
③手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金
を紹介しました。
次回は、
④障害者相談窓口担当者の配置助成金
⑤職場支援員の配置・委嘱助成金
⑥職場復帰支援助成金
についてお伝えします。
申請書類の様式や、さらに細かい情報は、
「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイト
https://www.jeed.go.jp/index.html
にある、以下の資料などをご覧ください。
「障害者雇用助成金のごあんない」
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/kaijo_joseikin/book/html5.html#page=1
また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれます。
助成金の受給をお考えの企業は、早めに相談することをオススメします。
◆
今回も、読んでいただき、ありがとうございました。
また1か月後に、お会いしましょう!
この記事は、厚生労働省、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の2022年8月20日時点の情報をもとに執筆しています。助成金の内容は頻繁に見直されるので、必ず最新情報をご確認ください。 |
<プロフィル>
安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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