【第14回】障害者の職業訓練に活用 「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」
この連載では、企業の障害者雇用を促す「国の助成金」について、わかりやすく説明しています。今回で14回目。これで、現行の助成金をひと通り紹介し終わることになります。
今回は、「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」です。希望する仕事に就けない障害者に、企業や社会福祉法人などが、職業訓練を行うなどした場合に、費用の一部を助成します。障害者の雇用や職場定着を促す狙いがあります。
「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」は、受給のハードルがとても高いです。
ハローワークから「職業訓練が必要」と認められた障害者しか、訓練対象にできませんし、訓練の定義も厳格です。そのことに留意していただき、以下を読み進めてください。
【1.復習】
障害者雇用にかかわる助成金制度全体の中で、「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」がどこに位置づけられているか、確認してください。
障害者の雇用を促す国の助成金 令和5年度
財源は雇用保険 | 1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | |
2.特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) | ||
3.トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | ||
4.トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | ||
5.キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | ||
6.人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース) | 今回取り上げます | |
財源は障害者雇用納付金 | 7.障害者介助等助成金 | |
8.職場適応援助者助成金 | ||
9.障害者作業施設設置等助成金 | ||
10.障害者福祉施設設置等助成金 | ||
11.重度障害者等通勤対策助成金 | ||
12.重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 | ||
【2.全体像】
②は、施設や設備を整備したうえで職業能力開発訓練を行うケースです。
次の章から順番にくわしく説明していきます。
【3.対象となる企業・法人】
(1)次のいずれかに該当する |
(2)障害者の職業能力開発訓練にあたり、「就職支援責任者」を配置する |
(3)受講者への相談体制を確保する |
(4)障害者の個人情報を取り扱う際に、権利利益を侵害しないよう管理運営する |
(5)労働局の調査に協力し、就職状況を報告する |
(6)労働局と連携し、訓練の内容について障害者に周知する |
【4.対象となる障害者】
(1)次の①~⑥のいずれか |
(2)ハローワークに求職を申し込んでいて、ハローワークから「職業訓練が必要」と認められた人(ハローワークから企業に「職業訓練受講通知書」が届く) |
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html
【5.職業能力開発訓練とは】
ただし、次の事業は除きます。
・障害者総合支援法の就労移行支援事業と就労継続支援事業
・職業能力開発促進法第15条の7第3項に基づき公共職業能力開発施設以外で行われる教育訓練のうち、国が費用を負担する事業
(1)訓練施設の運営管理者 | ・障害者の職業能力開発訓練について必要な知識を持ち、 |
(2)訓練期間 | ・原則として6か月以上2年以内で、訓練の目標、カリキュラムの内容などに整合性がある |
(3)訓練時間 | ・6か月間で700時間を基準とする |
(4)訓練科目 | ・労働市場等の状況から判断して雇用機会の大きいもので、 |
(5)訓練施設以外の実習 | 訓練施設以外で実習を行う場合は、次の要件をすべて満たす |
(6)訓練人員 | 訓練を行う1単位の受講者数は、訓練科目ごとにおおむね10人。なお、身体障害者(重度身体障害者を除く。)以外の障害者は、おおむね5~10人 |
(7)訓練担当者 | 訓練科目ごとに、受講者おおむね5人につき専任訓練担当者1人を置く。受講者が5人を超えるときは2人以上(助手を含む)を配置 |
(8)訓練施設等 | 障害の種類などに十分配慮し、訓練の目的を実現するために必要な施設・設備を備えている |
(9)安全衛生 | ・訓練の実施にあたり、受講者の安全衛生に十分に配慮する |
(10)費用 | 教科書やその他教材の費用は、あらかじめ明示したものを除き、無料とする |
【6.訓練施設などハード整備】
(1)人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)の受給資格の認定を受けて、能力開発訓練施設・設備の新設やリニューアルを行った後、職業能力開発訓練を5年以上継続して行う |
(2)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による障害者能力開発助成金または身体障害者等能力開発助成金の受給資格の認定を受けて、訓練施設・設備の新設やリニューアルを行った後、職業能力開発訓練を5年以上継続して行う |
さらに、新設またはリニューアルする施設・設備は、次の(1)~(3)のすべての条件をクリアする必要があります。「賃貸」の施設・設備は対象外なので、注意して下さい。
(1)次のいずれかの施設・設備であること |
(2)事業主などが自らが所有する施設・設備であること(賃借によるものは含まない) |
(3)施設・設備の新設やリニューアルが、助成金の受給資格認定日の翌日から1 年以内に完了すること |
・中古または自社製品の施設・設備を購入する場合
・親会社、子会社、関係会社から施設・設備を購入する場合
・親会社、子会社、関係会社に施設・設備の工事を発注する場合
・事業主などがが自ら施設・設備の施工を行う場合
・事業主や役員が代表を務める別の法人から施設・設備を購入したり、同法人へ工事などを発注する場合
【7.職業能力開発訓練の費用の助成額】
原則、四半期ごとに労働局に申請します。
訓練の対象者 | ||
【1】 | 訓練時間の8割以上を受講した人 | 1人あたり運営費 × 4/5(上限=月額17万円) |
訓練時間の8割以上を受講しなった人 | 1人あたり運営費 × 4/5(上限=月額17万円) | |
【1】以外の障害者 | 訓練時間の8割以上を受講した人 | 1人あたり運営費 × 3/4(上限=月額16万円) |
訓練時間の8割以上を受講しなった人 | 1人あたり運営費 × 3/4(上限=月額16万円) | |
【1】の人が就職した場合の加算 | 1人あたり10万円 |
職員給与、福利厚生費、一般管理費(謝金、旅費など)、教材費、実習経費、消耗品費、光熱水費、土地建物借料(訓練施設・設備を借りている場合)など |
【8.ハード整備への助成額】
新設またはリニューアルにかかった費用 × 3/4 |
【9.まとめ】
とても複雑な助成金なので、ここで書ききれなかった細かい部分については、厚生労働省のサイトをご覧ください。申請書類の様式も載っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial_00002.html
この記事は、厚生労働省の2023年6月18日時点の情報をもとに執筆しています。助成金の内容はひんぱんに見直されるので、必ず最新情報をご確認ください。 |
<プロフィル>
安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者
1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
障がい者雇用に関するご相談メール info@fvp.co.jp
電話 03-5577-6913
お問い合わせフォーム https://www.fvp.co.jp/contact/ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。
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