【第9回】助成額が最大5,000万円!「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」

「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」について、詳しく整理してお伝えします。

漢字が20文字も並んでいて、何だか難しそうな助成金ですが、目的はシンプルです。
重度の障害者を多く雇っている企業に助成金を出して、障害者が働き続けるのに必要な施設の整備を手助けする……。これが目的です。

【1.復習】

本題に入る前に、「復習用の一覧表」を載せておきます。
障害者雇用関係の助成金全体の中で、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」がどこに位置づけられているか、確認してください。

障害者の雇用を促す国の助成金(令和4年度)

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今回で、12種類の助成金のうち、「障害者雇用納付金」を財源とする助成金(6種類)について、ひと通り説明し終えることになります。

【2.どんな企業が対象になるの?】

「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」の対象となるには、次の条件をすべてをクリアしなければなりません。
軽度の身体障害者などは、仮に雇っていても、「10人以上」にはカウントできません。

上記1~4すべてをクリアした企業が、「障害者を雇い続けるために必要な施設・設備」を整えると、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」の対象となります。

就労継続支援A型事業所も、条件を満たせば対象となります。

【3.どんな施設・設備を整えるの?】

「障害者を雇い続けるために必要な施設・設備」について、具体的に説明します。
いずれも、事業主が自ら所有するものに限ります。

次のいずれかのケースにあてはまると、助成の対象にならないので、注意してください

【4.助成額】

ここまで説明したとおり、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」は、受給のハードルが高いといえます。
でも、多くの重度障害者がより働きやすい施設・設備を整えることになるので、その分、助成の上限額が高く、費用の2/3、上限5,000万円まで助成されます。

助成金の対象となる費用の算出方法について、【3】でお伝えした施設・設備の種類ごとに、次の表にまとめました。
「面積」や「1㎡あたりの建築等単価」については、とてもこまかいルールが定められています。ここでは書ききれないので、以下の資料の各ページを参照してください。

https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/book/html5.html#page=1

・42~46ページ 「5.支給対象費用」
・57~60ページ 「4⃣ 第1種作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の作業施設設置費用の算定及び標準建設費等」

また、施設整備の資金を借り入れる場合、毎年の利息についても、5年間助成されます。利息助成の支給限度額は、費用の7/30、または1,750万円のどちらか低い額です。
利息助成は、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から「受給資格あり」と認定された後に借り入れるものに限ります。

【5.事前審査など】

「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」では、受給資格認定の申請前に、「事業計画書」を「高齢・障害・求職者雇用支援機構」へ提出します。機構は、事業計画、経営状況、規範性(モデル性)、雇用管理の状況などを事前に審査します。
この事前審査で、「要件を満たしている」と判断されれば、受給資格認定の申請を行うことができます。

受給資格認定の申請を行い、機構から「受給資格あり」という認定を受けた後、工事の発注や契約、支払いを行わなくてはなりません。認定を受ける前に着手してしまうと、受給資格が「不認定」または「認定取消し」となり、助成金を受給できません。

事前に設計図の作成について発注・契約する場合には、受給資格の認定を受ける前でも、設計図の発注・契約を行うことができます。ただし、施設本体の工事契約と明確に区別されている必要があります。

【6.まとめ】

今回は、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」を取り上げました。

さらに細かい情報は、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイト
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html
にある、以下の資料などを参照してください。

「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/book/html5.html#page=1

また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれるので、積極的に活用することをオススメします。



今回の記事で、障害者雇用関係の助成金(全12種類)のうち、「障害者雇用納付金」を財源とする助成金(6種類)について、解説し終わりました。

次回からは、雇用保険を財源とする助成金(6種類)について、順番に取り上げていきます。

【補足~助成金の不正受給について】

本筋から外れる話ですが、助成金の不正受給について、少し触れさせてください。

報道でご存じの方も多いと思いますが、警視庁は2023年1月10日、「雇用調整助成金」約400万円をだまし取ったとして、中古車販売業の経営者と、女性社会保険労務士を詐欺容疑で逮捕しました。悪質な不正受給と断定されたのです。

「雇用調整助成金」は、障害者雇用の助成金ではありませんが、今回取り上げた「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」などと同じく、国の助成金です。企業の都合で従業員を休業させ、休業手当を支払った場合に、企業へ助成されるものです。

コロナウイルスの感染拡大で、日本中の多くの企業が「雇用調整助成金」を利用しました。政府も、雇用を守ることを優先したため、支給要件を緩めました。その結果、各地で不正受給が相次ぎ、たびたびニュースで取り上げられています。

国の助成金はどれも、受給するには数多くの条件を満たさなくてはなりません。中には、クリアするのが難しい条件もあります。そのような場合に、条件をクリアしたように偽って書類を作成し助成金をもらうと、不正受給となります。

そして、悪質なケースで「逮捕」に至るのです。このような事態になると、その企業の存続自体が危うくなります。

また、逮捕された女性社会保険労務士のように、不正受給を経営者に持ち掛ける悪徳専門家がいます。同業者として私も、恥ずかしく、また憤っています。

障害者雇用関係の助成金受給を検討している方は、ぜひ、自ら不正受給に手を染めないとともに、悪質な専門家と関わらぬよう、くれぐれも注意してください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
では、また1か月後にお会いしましょう!
<プロフィル>

安田武晴
特定社会保険労務士、労働時間適正管理者

1969年、東京生まれ。
大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
に力を入れている。
人事担当者にぜひ知っていただきたい
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