【第5回】「障害者介助等助成金」を活用し、職場サポートをレベルアップ!<後編>

この連載コラムでは、障害者雇用を促す「国の助成金」について、
くわしく解説しています。
今回は、前回につづき、「障害者介助等助成金」の後編です。

 【1.障害者介助等助成金は、大まかに6種類】

   
前回も説明しましたが、
障害者介助等助成金は、14種類に細かく分けられています。
それらを整理し、利用する可能性が高い6種類に絞ってお伝えします。

6種類のうち、前回は、
①職場介助者の配置・委嘱助成金
②職場介助者の配置・委嘱継続助成金
③手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金

を取り上げました。

今回は、
④障害者相談窓口担当者の配置助成金
⑤職場支援員の配置・委嘱助成金
⑥職場復帰支援助成金

について説明します。

「配置」と「委嘱」の違いや、6種類に共通の手続き
については、前回の記事に書いてあるので
参照してくださいね。

【2.障害者相談窓口担当者の配置助成金】

まずはじめに、
④障害者相談窓口担当者の配置助成金について。
 
雇っている障害者が能力を発揮するには、
「こんな配慮をしてほしい」と
気軽に相談できる体制が欠かせません。
 
そこで、国が、企業に助成金を出して、
その相談体制を整えるよう後押ししています。
 
障害者相談窓口担当者の配置助成金をもらうには、
・身体
・知的
・精神
のいずれかの障害がある従業員に、
必要な「合理的配慮」が行われるように、
次の3つのことを行います。
※就労継続支援A型事業所の利用者は対象外です。


(1)障害者相談窓口担当者の増配置

 すでにある相談窓口や、新しく設けた相談窓口に、
「障害者相談窓口担当者」を新たに配置します。
 
「障害者相談窓口担当者」になれるのは、
その企業に雇われて、雇用保険の被保険者になっている人で、
以下の「要件」のいずれかにあてはまる人です。

    ・その企業で人事、労務管理の経験が1年以上あり、下記(2)の研修を
     受講した人
    ・精神保健福祉士、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、公認心理師、
     臨床心理士、産業カウンセラー、看護師、保健師
    ・障害者職業カウンセラー試験合格者で指定講習を修了した人
    ・特例子会社か重度障害者多数雇用事業所で障害者の指導・援助経験2年
     以上の人
    ・障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などで就業相談経験
     2年以上の人
    ・産業医以外の医師
    ・職場適応援助者養成研修の修了者
    ・障害者職業生活相談員資格認定講習の修了者
    ・障害者職業生活相談員の資格がある人で、一定の条件を満たす人
    ※法人の代表者や役員などは、障害者相談窓口担当者にはなれません。
    (2)研修の受講

    障害者相談窓口担当者に、以下の専門家や専門機関が行う研修を受けさせます。
     ・ 医師、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士、社会福祉士、
        作業療法士、理学療法士、社会保険労務士、看護師、保健師
     ・ 障害に関する専門的知識および技術を有する学識経験者
     ・ 障害者の就労支援の経験を3年以上有する者
     ・ 障害者の雇用管理の経験を3年以上有する者
     ・障害者専門員(※)
     ・都道府県労働局

    (※)障害者専門員とは、以下の人たちです 
      ・精神保健福祉士、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、公認心理師、
       臨床心理士、産業カウンセラー、看護師、保健師
      ・障害者職業カウンセラー試験合格者で指定講習を修了した人
      ・特例子会社か重度障害者多数雇用事業所で障害者の指導・援助経験
       2年以上の人
      ・障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などで就業相談
       経験2年以上の人
      ・産業医以外の医師
      ・職場適応援助者養成研修の修了者
      ・障害者職業生活相談員資格認定講習の修了者
      ・障害者職業生活相談員の資格がある人で、一定の条件を満たす人

      (3)専門機関などへの委嘱

      次のいずれかの業務を、専門機関に委嘱(委託)して行う必要があります。
      専門機関とは、障害者専門員がいる社会福祉法人、特定非営利活動法人などです。

      ・合理的配慮についての相談業務
      ・障害者差別や合理的配慮について、障害者から苦情があった場合の解決
      ・事業主への助言・援助
      ・合理的配慮について職場内での周知・啓発

      <助成額>
      助成金の支給対象期間は、1年間です。
      これまで説明してきた、企業が行うべき3つのことに応じて、
      細かく決まっているので、
      わかりやすいように表にまとめました。

      【3.職場支援員の配置・委嘱助成金】

      次は、⑤職場支援員の配置・委嘱助成金 です。
      職場支援員とは、障害者がその職場に定着できるよう支援する専門家です。
      職場支援員を配置し、6か月以上職場に定着させた場合に助成されます。

      この助成金の対象となるのは、次のいずれかの障害がある人です。
      ・身体障害
      ・知的障害
      ・精神障害
      ・発達障害
      ・難病
      ・高次脳機能障害
      ※就労継続支援A型事業所の利用者は対象になりません。

      そして、職場支援員を、次のいずれかの方法で配置します。

      ①雇用契約
      常用労働者として雇用し、障害者を継続して支援します。
      このため、職場支援員の週の所定労働時間は、
      障害者より長くなければなりません。
      また、職場支援員は、障害者と同じ事業所に勤務し、
      常に見守り、面談や相談に応じます。

      ②委嘱契約
      障害者ごとに、職場支援員と有償の委嘱契約を結びます。
      職場支援員は、少なくとも月1回、訪問して面談を行います。

      ③業務委託契約
      障害者ごとに、職場支援員と有償の業務委託契約を結びます。
      職場支援員は、少なくとも月1回、訪問して面談を行います。

      <助成額>

      ①雇用契約により職場支援員を配置する場合

      ②委嘱契約・業務委託契約により職場支援員を配置する場合

      支援(訪問面談)1回あたり最大1万円。
      ただし、かかった費用(月4万円まで)が上限となります。

      【4.職場復帰支援助成金】

      最後は、職場復帰支援助成金です。
      障害者が療養のため休職した後、
      職場復帰に必要な支援を行い、6か月以上職場に定着させた場合に、助成されます。

      対象となるのは、

      ・身体障害
      ・精神障害
      ・難病
      ・高次脳機能障害

      のいずれかの障害があり、
      医師の意見書により、療養のため1か月以上休職した人です。
      ※就労継続支援A型事業所の利用者は対象になりません。

      職場復帰にあたり、次の①または②を行います。
      ②を行う場合には、必要に応じて③も実施します。

      ① 時間的配慮
      次のいずれかを継続して行います。

      ・医師の意見書と障害者の同意により、労働時間を調整する
      ・通院や入院のための、特別な有給休暇を与える
      ・障害者の同意により、一人暮らしをやめ、親族などと同居するため勤務地を変える
        
      ② 職務開発
      次のどちらかを継続して行います。

      ・外部専門家の援助で職務開発を行う
       「外部専門家」とは、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、
       就労移行支援事業所など、障害者の就労支援機関の支援者です。
       また、「職務開発」とは、障害の種類や程度を考慮し、新しい仕事を作るほか、
       作業工程を変更するなど、職場復帰のための対策を行うことです。

      ・外部専門家の援助の結果、休職前に従事していた職務を行えない場合に、
       職務を変える

      ③講習

      新たな職務に従事することになった場合、
      その職務に必要な基本的な知識や技術を習得するため、講習を受けさせます。

      <助成額>

      ①時間的配慮、または②職務開発を行った場合

      ②職務開発の実施に伴い、③講習を行った場合には、上記の金額に以下を追加

      【5.まとめ】

      今回は、「障害者介助等助成金」のうち、
      ④障害者相談窓口担当者の配置助成金
      ⑤職場支援員の配置・委嘱助成金
      ⑥職場復帰支援助成金

      をとりあげました。

      さらに細かい情報や、申請書類の様式は、
      「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のウェブサイト
      https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html
      にある、以下の資料などを参照してください。

      「障害者雇用助成金のごあんない」(障害者相談窓口担当者の配置助成金)
      https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/kaijo_joseikin/book/html5.html#page=1

      「障害者雇用助成金のごあんない」
      (職場支援員の配置・委嘱助成金、職場復帰支援助成金)
      https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shien_joseikin/book/html5.html#page=1
      また、同機構の都道府県支部が、さまざまな相談にのってくれます。

      今回も、読んでいただき、ありがとうございました。
      また1か月後に、お会いしましょう!
      <プロフィル>

      安田武晴
      特定社会保険労務士、労働時間適正管理者

      1969年、東京生まれ。
      大学卒業後、読売新聞の記者として、高齢者介護、障害者支援、公的年金などを取材。2013年、「取材・執筆に必要な知識を増やそう」と勉強し、社会保険労務士の国家試験に合格。2020年4月に独立し、東京・西荻窪に「社会保険労務士事務所オフィスオメガ」を開業した。
      ▽介護・障害事業所の「処遇改善加算」サポート
      ▽「メリハリのある職場づくり」のための就業規則作成
      ▽労務リスクを減らす「労働時間管理」アドバイス
      に力を入れている。
      人事担当者にぜひ知っていただきたい
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