【2025年3月10日更新】精神障害とは? 精神障害のある人の特徴、雇用管理のポイントとは?

自社の障害者雇用を改善するヒントがあります!
精神・発達障害者雇用の成功事例レポート

FVPがご支援した企業の精神・発達障害者雇用事例(10社)をまとめてお読みいただけます


1.    導入

精神障害の場合、障害による特性が見えないため、対応や配慮の仕方、指示の出し方について、どこまでお願いしていいのか、迷うことがあります。
ここでは精神障害の特徴、雇用管理のポイントについてみていきます。

2.    精神障害者の求職者数は年々増え続けている

厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業(常用労働者数が40.0人以上の企業:法定雇用率2.5%)に雇用されている障害者の人数は677,461.5人で、前年より35,283.5人増加(対前年比5.5%増)し、21年連続で過去最高を更新しました。その中でも精神障害者は150,717.0人で対前年比15.7%増と大きな伸び率となりました。
厚生労働省 令和6年 障害者雇用状況の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf
また、同じく厚生労働省「令和5年度障害者紹介状況」によると、ハローワークを通じた新規求職申込件数が249,490件(対前年度日6.9%増)、就職件数は110,756件(対前年度比8.0%増)となり、就職件数が過去最高だった令和元年度実績(103,163件)を上回りました。
その中で就職件数では、身体障害者22,912件、知的障害者22,201件、精神障害者60,598件と精神障害者の件数が12.1%増、全体の54.7%が精神障害者となりました。
厚生労働省 令和5年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001236931.pdf

3.    障害者雇用における「精神障害者」とは?

まず、「障害者」とは、どのような人のことをいうのでしょうか?

現行の法律では、一口に「障害者」を定義したものはありません。 
「身体障害」、「知的障害」、「精神障害(発達障害を含む)」について、それぞれ「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」、「精神保健福祉法」で規定しています。  
 
障害者雇用に関しての「障害者」は「障害者雇用促進法」等で、次のように規定されています。  

身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者(第二条)
  
つまり、障害の種類や手帳の有無を問わず、職業生活上の困難を抱えている、すべての種類の障害者が、この法律の対象となります。  

しかし、注意したいのは、障害者雇用促進法における実雇用率の対象となる障害者は、基本的には「障害者手帳」を持っていることが条件となることです。

障害者手帳には次の3種類があります。
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳

実雇用率の対象となる精神障害者は、障害者雇用促進法の三十七条2項で、精神障害者保健福祉手帳を保持しているもの、と定義されています。

(略)「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。第三節及び第七十九条第一項を除き、以下同じ。)をいう。
厚生労働省 障害者手帳
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html

4.    精神障害の症状

主な精神疾患にはこのようなものがあります。

・気分障害(うつ病、双極性障害、躁病)
・統合失調症
・不安障害(パニック障害、社会不安障害、広場恐怖症、全般的不安障害等)
・強迫性障害
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・依存症(アルコール、薬物、ギャンブル等)
・てんかん
・高次脳機能障害
・発達障害(発達障害についてはこちらで紹介します



ここでは、精神障害の代表的な疾患と、その症状について説明します。

(1)統合失調症

統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。ほかの慢性の病気と同じように長い経過をたどりやすいですが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの方が長期的な回復を期待できるようになっています。

【特徴的な症状】
統合失調症の症状でよく知られているのが、「幻覚」と「妄想」です。
幻覚とは実際にはないものをあるように感じる知覚の異常で、中でも自分の悪口やうわさなどが聞こえてくる幻聴は、しばしば見られる症状です。
妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。
こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。

【原因】
発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。

【患者数】
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。また、世界各国の報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%と推計されます。100人に1人弱。決して少なくない数字です。それだけ、統合失調症は身近な病気といえます。

【経過】
治療によって急性期の激しい症状が治まると、その後は回復期となり、徐々に長期安定にいたるというのが一般的な経過です。なかにはまったく症状が出なくなる人もいますが、症状がなくなったからといって自分だけの判断で薬をやめてしまうと、しばらくして再発してしまうことも多いので注意が必要です。主治医と相談することが大切です。統合失調症も糖尿病や高血圧などの生活習慣病と同じで、症状が出ないように必要な薬を続けながら、気長に病気を管理していくことが大切です。

参考:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
(2)気分障害(うつ病・双極性障害)

うつ病は、気分障害の一つです。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。気分障害には、うつ病の他に、うつ病との鑑別が必要な双極性障害(躁うつ病)などがあります。うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なりますので専門家による判断が必要です。

【特徴的な症状】
うつ病では、自分が感じる気分の変化だけでなく、周囲からみてわかる変化もあります。

《周囲から見てわかるうつ病のサイン》
・表情が暗い
・自分を責めてばかりいる
・涙もろくなった
・反応が遅い
・落ち着かない
・飲酒量が増える

《身体に現れるうつ病のサイン》
・食欲がない
・性欲がない
・眠れない、過度に寝てしまう
・体がだるい、疲れやすい
・頭痛や肩こり
・動悸
・胃の不快感、便秘や下痢
・めまい
・口が渇く

《そう状態のサイン》
・睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
・寝なくても元気で活動を続けられる
・人の意見に耳を貸さない
・話し続ける
・次々にアイデアが出てくるがそれらを組み立てて最後までやり遂げることができない
・根拠のない自信に満ちあふれる
・買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
・初対面の人にやたらと声をかける
・性的に奔放になる

【原因】
うつ病発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。うつ病の背景には、精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いですが、辛い体験や悲しい出来事のみならず、結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい出来事の後にも発症することがあります。なお、体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあるので注意が必要です。

【患者数】
日本では、100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります。また、女性の方が男性よりも1.6倍くらい多いことが知られています。女性では、ライフステージに応じて、妊娠や出産、更年期と関連の深いうつ状態やうつ病などに注意が必要となります。
日本における双極性障害の患者さんの頻度は、重症・軽症の双極性障害をあわせても0.4~0.7%といわれています。1,000人に4~7人弱ということで、これはうつ病に比べると頻度は少ないといえます。

【経過】
うつ病の治療を考える前に、まず、心身の休養がしっかりとれるように環境を整えることが大事です。職場や学校から離れ自宅で過ごす、場合によっては、入院環境へ身を委ねることにより、大きく症状が軽減することもあります。精神的ストレスや身体的ストレスから離れた環境で過ごすことは、その後の再発予防にも重要です。うつ病の治療には、医薬品による治療(薬物療法)と、専門家との対話を通して進める治療(精神療法)があります。また、散歩などの軽い有酸素運動(運動療法)がうつ症状を軽減させることが知られています。
双極性障害の治療には薬による治療と心理社会的アプローチがあります。
「こころの悩み」とは異なり、カウンセリングだけで回復が期待できるものではありません。薬物療法を基本に治療法を組み立てていきます。
参考:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

(3)高次脳機能障害


交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害です。
身体的には障害が残っていないことも多く、外見からはわかりにくいため「見えない障害」とも呼ばれています。
次のような症状が現れますが、これらの症状は単一的に現れるのではなく、複合的に組み合わされて現れることが多く、症状の現れ方も人それぞれに異なります。
国立障害者リハビリテーションセンターHPより)

また、失語症(聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの障害)を伴ったり、片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害があったりする場合があります。
リハビリテーションによる治療が中心となります。

5.    精神障害のある人の特徴

精神障害のある人の、障害としての特徴とは何でしょうか?

・疲れやすさ  
・注意や集中力が途切れやすい  
・客観的な自己理解の不得手さ  
・臨機応変な判断の苦手さ  
・同時並行処理を行うことが苦手  
・不安を感じやすい  
・新しい環境に慣れるのに時間がかかる  
・自主性・自発性が見られにくい
・整容面の関心の希薄さ
・ものごとの取り組みが消極的になる

それでは、精神障害のある人に仕事をしてもらううえで、どのようなことに配慮すればよいでしょうか。

6.    精神障害者の雇用管理のポイント

上記のような特徴をふまえ、以下のような点に配慮するとよいでしょう。

・心身が疲れやすい
 ⇒本人と相談のうえ、短時間勤務からはじめ、疲労度、慣れをみながら徐々に延長する。

・不安になりやすい、自信がもてない
 ⇒就職したての頃は、仕事にも職場環境にも慣れておらず、不安感がいっそう強まっているため、できていることを見つけ、それを本人に伝え、ほめる。

・いろいろな人から指示を出されるととまどう、人によって指示の出し方が異なり混乱する
 ⇒職場で日常的に関わることができ、信頼関係を築くことのできる担当者を決めておく。
 ⇒まずは指導者が説明しながら実際にやってみせる。わかったかどうか確認してから実際にやらせる。
 ⇒指示は具体的に、誤解の余地なく、一度にたくさん言わない。メモを活用する。

・判断・責任等の精神的プレッシャーに弱い
 ⇒まずはできるだけストレスのかからない、判断の必要のない業務から始める。
 ⇒ミスに対してはその場で注意する。個人の責任を追及するのではなく、ミスの原因を明確にし、どうすれば同じ失敗を繰り返さないようにできるかをいっしょに考える。

・必要な通院・服薬を守れるよう配慮する。必要に応じて医療機関や支援機関と連携してサポートする。

・指導する担当者をフォローする
多くの場合、指導をする立場にいる人は、自分の仕事を抱えながら指導を行うことが求められ、ともすると多くのストレスを抱え込むことになりかねません。指導する担当者の悩みを上長が聞ける、フォローする体制を整えることが重要です。

7.    事例

(1)Aさん男性36歳、うつ病。

①状況
順調に就業できていたが、気分の落ち込みがみられるようになる。
他の障がい者社員に対して劣等感やイライラを感じてしまう。
気分の落ち込みによって生活が乱れ、さらに落ち込む。
仕事の意欲、作業スピードも落ちている。

体調(メンタル)不良 
・気分の落ち込み
・周囲の社員への劣等感
・周囲の社員へのイライラ
・生活リズムの乱れ

その結果、業務パフォーマンスの低下が見られた
・業務意欲の低下
・業務スピードの低下

②上司の悩み
いったん休ませるべきか、仕事を調整するのか・・・
その他やれることがあるのか?

③対応策
<Aさん>
・出勤時のコンディションを報告する
・終業時に、気持ち、業務のセルフチェックを行う
・体調が悪くて仕事を続けられないときはなるべく自分から相談する

<上司>
・口頭と業務日報での受容的な声掛けをする
(例)今日は〇〇でした→今日は〇〇だったんですね、といったん本人の言っていることを受け止める
・本人の体調報告と実際の業務の様子を観察して、どの程度の体調ならどこまで仕事をすることができるかを見極める
・本人から訴えがあったときは、仕事ができるかどうかを確認して判断する
(例)すぐに「休め」と言うのではなく、どこまでできそうか本人と相談して判断する

<FVP>
・Aさんへの受容的な声掛けをした
・Aさんの状況に対する見立てを上司に共有した
・上司へ関わり方への助言をした

(2)その他の事例
①仕事の指示の出し方で注意する点
・原則指示は一つずつ、本人の理解を確認しながら
・複数の仕事を指示する時は、優先順位もいっしょに伝える
・一般に口頭指示を受けることは苦手、メモにして渡すほうがよい
・自己肯定感が低い人が多いため、自信を持たせる声かけが重要

②仕事を休んでしまった時の対応
・連絡がない場合は、こちらから電話をかけて話を聞く(放置はしない)
・「体調が悪い」と言われたら、具体的にどのような状態なのかを訊く。
 体調が悪い=休み、ではなく、どこまでならできるか、例えば、会社まで来られるか、
 時間を短くしたら仕事ができそうか、と可能なラインを双方で確認し、実践する 
・病状悪化の兆候がありそうなら、かかりつけ医師への通院を促す

③注意の仕方で注意する点
・注意をする時は大声や感情的にならず、具体的な対処方法を助言する
例)× 廊下は走るな 
  〇 廊下は歩きましょう
  
  × なんで△■さんに確認せずに進めるの!?
  〇 次からは、先に△■さんに確認してから進めてください

8.    まとめ

精神障害は目に見えないものです。
そのため、受け入れる会社側や現場で一緒に働く社員の方々が不安に感じることはあって当然かもしれません。

だからといって過剰な対応をしたり、逆になにもしないでは、障害のある社員本人のためにもなりませんし、周囲の社員にも負担感が残るばかりです。

個々の特性や状態を見極めたうえで、本人とも相談しながら判断することが重要です。
そのような過程で「やってみたらできた」と本人が自信をもつことはよくあることで、会社も「こうすればいいのだ」と精神障害者の雇用管理に自信を深めていくことができます。

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