【2025年3月12日更新】発達障害とは? 発達障害のある人の特徴、雇用管理のポイント

自社の障害者雇用を改善するヒントがあります!
精神・発達障害者雇用の成功事例レポート

FVPがご支援した企業の精神・発達障害者雇用事例(10社)をまとめてお読みいただけます


1.    導入

「発達障害のある社員の対応に悩んでいる」
障害者雇用の現場で、このような声を聞くことは少なくありません。

このページでは、発達障害者の雇用管理を円滑に進めていく参考にしていただけるよう、次のようなことを解説します。
◎ 発達障害のある人はどのような特徴を持っているのか
◎ 発達障害者を雇用する上でのポイント
◎ 参考となる事例

1.    障害者雇用における「発達障害者」の分類、障害者手帳の区分は?

『障害者雇用促進法』において、障害者は次のように規定されています。
「身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者(第2条)」
つまり、障害の種類や手帳の有無を問わず、職業生活上の困難を抱えている、すべての種類の障害者が、この法律の対象となります。

しかし、「障害者雇用促進法における実雇用率の対象」となる障害者は、「障害者手帳」を持っていることが条件となります。

障害者手帳には次の3種類があります。

○身体障害者手帳
○療育手帳
○精神障害者保健福祉手帳

発達障害は2000年以降に診断が増えてきた「第4の障害」です。
このため、発達障害者への障害者手帳はすでにある3障害-身体・知的(療育)・精神-の支援制度に後から組み込まれる形になったため、発達障害”専用”の障害者手帳はありません。知的発達に遅れがない場合は「精神障害者保健福祉手帳」を、知的発達に遅れのある場合は「療育手帳」を取得することになります。
出典:厚生労働省 障害者手帳について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html

3.    発達障害者の特徴

発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、行動面や情緒面に特徴が見られます。
発達障害があっても、本人や家族・周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。

・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠如・多動症(ADHD)
・学習障害(LD)

これらを総称して、発達障害と言います。
その他、チック症、吃音なども発達障害に含まれます。
生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています。同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害を併せ持ったりすることもあります。

次に、それぞれの診断名について、特徴的な特性を説明していきます。

(1)自閉スペクトラム症(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)
   Autism Spectrum Disorder 

以前は、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害という診断名もありましたが、2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症としてまとめて表現されるようになりました。

コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります。

【主な特性】
・相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い。
・見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている。
・大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある。


(2)注意欠如多動性障害(ADHD)

   Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder

発達年齢に比べて、落ち着きがない、待てない(多動性-衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)といった特性があります。多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります。

多動性-衝動性は、幼児期に、落ち着きがない、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込む、などで認められます。不注意の症状は、学校の勉強でミスが多い、課題や遊びなどに集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが苦手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。
大人になると、計画的に物事を進められない、そわそわとして落ち着かない、他のことを考えてしまう、感情のコントロールが難しいなど、症状の現れ方が偏しますが、一般に、落ち着きのなさなどの多動性-衝動性は軽減することが多いとされています。また、不安や気分の落ち込みや気分の波などの精神的な不調を伴うこともあります。

【主な特性】
・次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い。


(3)学習障害(LD)
   Learning Disabilities

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が認められる状態をいいます。

【主な特性】
・ 「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」「e-ヘルスネット」
「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」ウェブサイト

4.    複数の特性を併せ持つ場合もある

前項で3種類の障害の特性をご紹介しましたが、
「ADHDの診断を受けている、仕事を正確に進めるのは苦手」
「自閉スペクトラム症だから、繰り返しの作業が得意」

このように診断名だけで判断するのは、間違いのもとです。
発達障害のある人の特性の現れ方は多様です。中には、複数の特性を併せ持つ人も珍しくありません。
また、現段階においては、発達障害の診断基準が十分に確立されていないことも背景にあります。

5.    その他の特性(身体面の特性)

発達障害の人の中には、感覚の過敏さまたは鈍麻、・手先や運動面での器用さまたは不器用さなど身体面の特性を持つ人も見られます。

〈感覚の過敏さ/鈍麻〉
たとえば聴覚に過敏さをもつ人の中には、パソコンのキーボードを打つ音、シュレッダーの音、電話の鳴る音などが特定の音が気になって集中できないことなどがあります。
また、視覚に過敏さをもつ人は、蛍光灯のちらつきが気になるなどの症状として現れることがあります。

〈手先の器用さ・運動〉
手先が極端に器用だったり、不器用だったりする人もいます。
身体全体を使って行う仕事が極端に苦手な人も見られます。

6.    発達障害者の雇用管理のポイント

発達障害はその特性そのものが「障害」ということではありません。特性によって環境とミスマッチが起こっている場合、その困難さが「障害」であると考えます。

そのため、雇用管理においては、その人の持つ特性が、業務遂行上の弱みや問題とならないよう、職場環境を調整していくことが望まれます。

企業が、まず発達障害のある社員を受け入れる段階では、次の3点を念頭に置くことをお勧めします。

(1)適性を生かす業務にアサインする
発達障害のある人の職務配置に当たっては、認知や行動の特性を理解したうえで検討する必要があります。発達障害のある人の中には、ある特定の事項に関して非常に優れた記憶力を示す人、高い計算能力を持っている人、非常に根気強く確実さがとても高い人などもいます。こうした秀でた能力を活かせる、特性に合った業務に就くことによって、一般の人以上に高い作業遂行能力を発揮する場合も少なくありません。

例:根気強く確実さがとても高い方であれば、データの照合や文章チェックなどは小さいミスもみのがさずに取り組めたり、
ルールに対してこだわりの強い方であれば、日々同じクオリティを求められる検査や組み立ての業務などで力を発揮します。


(2)障害特性に合わせた仕事の指示やコミュニケーションを心掛ける

少人数でのチーム編成、周囲の音などがあまり気にならない静かな場所を用意するといったことは、発達障害の人にとって安心して働きやすい環境と言えるでしょう。
仕事を依頼する場合は、マニュアルを用意するなどして視覚的に理解できるような配慮が望まれます。
伝える際は、端的で具体的であることを心がけます。

たとえば
・「きれいにしておいて」ではなく、「テーブルを拭いて、落ちているごみを拾って」
さらに「テーブルを拭くときは、1回水拭きして、そのあとから拭きを1回してください」
などです。

また、指示を出すときはひとつずつするように心がけましょう。

良くない例:
「このごみ袋がいっぱいになったら、ビニール袋を縛って、焼却炉の燃えるごみ置き場に出してください。ついでにB棟の清掃をしているA指導員に予備のごみ袋を10枚もらってきてください。」

良い例:
「やってほしいことが3つあります」
「1.ごみ袋の赤い線までごみを入れてください。」
「2.ごみ袋の上の開け口を図の形でしばってください。」
「3.ごみ袋を焼却ロの燃えるごみ置き場にもっていってください。」
※A指導員からごみ袋をもらうのは別の指示にする。

無理に環境へ合わせようとするのではなく、特性に応じた環境を作るようにします。

(3)不得意なことを克服するのでなく得意なことで会社に貢献してもらう

環境同様、不得意な仕事を無理にさせようと努力することはお勧めしません。できること、得意なことに注目して業務を割り当て、出てきたアウトプットを評価するようにします。

ご本人も自己効用感を高め、意欲の向上という好循環が期待できますし、結果的に周囲も過度なストレスにさらされずに済みます。

参考:厚生労働省 発達障害のある人の雇用管理マニュアル



7.    発達障害者への対応例

実際に、どのように業務管理やコミュニケーションを行っていけばよいのか、具体的なポイントをご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

①ルールを明確に決める
暗黙のルールや職場習慣を自然に感じ取ることは難しい人が多いため、業務の進め方はもちろん、明文化されていない職場の慣例・慣行なども、言語化、視覚化して「ルール」とし、はっきり認識してもらうことが重要です。

報告も、誰に、いつ(完了時、定時など)、どのような方法で(メール、口頭など)報告するかをあらかじめ「ルール」として決めておきます。報告後は確認・チェックして、早い段階でフィードバックするとよいでしょう。

②遠まわしな言い方・抽象的な言い方をしない
注意やフィードバックは、直接的に明確に(一般的にはキツイ言い方と思えるほどに)、はっきり伝えます。ただし、感情的な叱責は避けます。遠まわしに伝える、態度で示すなどでは、ほとんど通じません。

(例)×「もう少し、言葉を選んで欲しいなあ」
   ○「その言い方は相手を不快にしています。そのような場合は、…と言います」

③指示は視覚的に
口頭での指示(聴覚情報)を苦手とする人は多くいます。指示は、文書・メール・ホワイトボードなど、書いて(視覚情報にして)説明するとよいでしょう。また、マニュアル化・図式化すると本人も理解しやすく、指示を出す人も進めやすくなります。

④「障害者」ではなく、通常の社員マネジメントの考え方で
発達障害の特性の大部分が当てはまる人もいれば、一部だけが該当する人もいます。「発達障害者」として接するより、考え方は一般の社員と同様にして、「特に、弱み・強みを意識して接することが不可欠な社員」と考えてのマネジメントを心がけます。

⑤業務の目的・全体イメージを明確に伝える
作業・仕事の全体像がわかることで安心して仕事に取り組みやすくなるので、業務目的なゴールのイメージを伝えます。抽象的な表現は理解しにくいので、この場合も、明確な言葉にして、数値で表現したり構造的に伝えたりします。

⑥一日のスケジュールを明示する
何を、いつまでに、どれだけやっておけばいいのか、明確にした一日のスケジュールを作ります。時間、量など、できるだけ数値を用いることで、一日のイメージが明確となり、理解しやすくなります。

⑦マニュアルを提供する
依頼する業務に関するマニュアルをできるだけ用意し、不明な点があった場合にも、それを確認することで業務を止めずに済むようにします。

7.    まとめ

発達障害者の特徴や特性、雇用する上でのポイントを下記にまとめます。

①発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)がある他、チック症、吃音なども含まれます。

②発達障害は生まれつきの脳機能の発達に偏りがあり、得意・不得意の特性と、環境や周囲との人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害です。

③自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります。

④注意欠如・多動性障害(ADHD)は、落ち着きがない、待てない(多動性-衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)といった特性があります。多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります。

⑤学習障害(LD)は知的発達には概ね問題がないのに「読み、書き、算数」のいずれか(重なることもあり)を極端に苦手とします。

⑥発達障害を併せ持つ場合もあるため、診断名だけで特性を判断しないようにした方がよいでしょう。

⑦その他の特性として、感覚の過敏さ/鈍麻、手先の器用さ/不器用さ、運動機能の特異性なども挙げられます。

⑧発達障害のある社員にあたって
 1)適性を活かす業務にアサインする
 2)障害特性に合わせた仕事の指示やコミュニケーションを心がける
 3)不得意なことを克服するのではなく、得意なことで会社に貢献してもらう

⑨発達障害のある人への対応
 1)ルールを明確に決める
 2)遠回しな言い方・抽象的な言い方をしない
 3)指示は視覚的に
 4)「障害者」ではなく、通常の社員マネジメントの考え方で
 5)業務の目的・全体イメージを明確に伝える
 6)1日のスケジュールを明示する
 7)マニュアルを提供する

いかがでしょうか。
発達障害者の特性を理解し、その特性にあわせた雇用管理を行うことは、障害のある社員も周りの社員も、お互いに気持ちよく仕事ができる環境を整える助けになるでしょう。

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