発達障害とは? 発達障害のある人の特徴
1.導入
障害者雇用の現場で、このような声を聞くことは少なくありません。
なぜ、企業は、発達障害者の雇用に悩むのでしょうか。
ここでは、次のようなことを解説していきます。
◎障害者雇用における発達障害者とは、どのような人を指すのか
◎発達障害のある人はどのような特徴を持っているのか
発達障害者を雇用する上でのヒントとなれば幸いです。
2. 障害者雇用における「発達障害者」の分類、障害者手帳の区分は?
『障害者雇用促進法』において、障害者は次のように規定されています。
「身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者(第2条)」
しかし、「障害者雇用促進法における実雇用率の対象」となる障害者は、「障害者手帳」を持っていることが条件となります。
障害者手帳には次の3種類があります。
○身体障害者手帳
○療育手帳
○精神障害者保健福祉手帳
発達障害は2000年以降に診断が増えてきた「第4の障害」です。
このため、発達障害者への障害者手帳はすでにある3障害-身体・知的(療育)・精神-の支援制度に後から組み込まれる形になったため、発達障害”専用”の障害者手帳はありません。知的発達に遅れがない場合は「精神障害者保健福祉手帳」を、知的発達に遅れのある場合は「療育手帳」を取得することになります。
3. 発達障害の種類と特性
発達障害があっても、本人や家族、周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。
発達障害には、次のような種類があります。
◎自閉スペクトラム症(ASD)
◎注意欠如・多動症(ADHD)
◎学習障害(LD)
図1 発達障害の種類と特性
(国立障害者リハビリテーションセンターホームページを参照して作図)
これらは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています。同じ障害名でも人によって特性の現れ方が違ったり、場合によっては複数の発達障害を併せ持ったりすることもあります。
次に、それぞれの診断名について、特徴的な特性を説明していきます。
◎自閉スペクトラム症(ASD-Autism Spectrum Disorder-)
以前は、「自閉症」、「アスペルガー症候群」、「広汎性発達障害」という診断名もありましたが、2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症(ASD)としてまとめて表現されるようになりました。
コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります。
幼少児期に見られる特性
目を合わせない、指さしをしない、微笑みかえさない、後追いがみられない、ほかの子どもに関心をしめさない、言葉の発達が遅い、こだわりが強い、一人遊びが多く集団活動が苦手、かんしゃくを起こすことが多い、
自分の興味のあることばかりを話す、相互的に言葉をやりとりすることが難しい、自分の興味のあることには、毎日何時間でも熱中できる、初めてのことや決まっていたことが変更されることは苦手、環境になじむのに時間がかかる、偏食が強い、などが上げられます。
思春期や青年期以降に見られる特性
人間関係において「空気を読む」といった対人スキルを求められることも増え、学習課題においても多様な能力を総合的に求められる機会が増えます、仕事が臨機応変にこなせないことや対人関係などに悩んだり、家庭生活や子育ての悩みを抱え、診察にいたる人もいます。
また、不安やうつなどの精神的不調を伴うこともあります。成人期になってから日常生活、家庭、職場などで困難を抱え、精神的な不調を伴い支援を必要とすることもあります。
【主な特性】
・相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い
・見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている
・大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある
・グループでの業務・活動が苦手
・やり取りがうまくかみ合わない
・伝えたいことを言葉にまとめることが難しい
・人の話に関心を持てない。
・ 自己流で物事を進めたがる
◎注意欠如・多動症(ADHD-Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)
発達年齢に比べて、落ち着きがない、待てない(多動性-衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)といった特性があります。多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります。
多動性-衝動性は、幼児期に、落ち着きがない、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込む、などで認められます。不注意の症状は、学校の勉強でミスが多い、課題や遊びなどに集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが苦手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。
大人になると、計画的に物事を進められない、そわそわとして落ち着かない、他のことを考えてしまう、感情のコントロールが難しいなど、症状の現れ方が偏しますが、一般に、落ち着きのなさなどの多動性-衝動性は軽減することが多いとされています。また、不安や気分の落ち込みや気分の波などの精神的な不調を伴うこともあります。
【主な特性】
・次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い
・細かい注意を払うことができない
・注意を持続しつづけることが難しい
・忘れる・抜け漏れることがある
・順序立てて課題を進めることが難しい
・ソワソワと手足を動かしたり、座っていてもモジモジ動いてしまう
◎学習障害(LD-Learning Disability)
全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が認められる状態をいいます。
【主な特性】
・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手
・文字や単語、文章を読むときに正確でなかったり速度が遅かったりする
・読んで意味を理解することが難しい
・発音が正確ではない
・文字や文章を書くことが難しい
・数の概念、数値、計算を学ぶことが難しい
※参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」「e-ヘルスネット」「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」ウェブサイト
4. 複数の特性を併せ持つ場合もある
「あの人はADHDの診断名をもっているから、ミスが多いのね」
「あの人は自閉スペクトラム症だから、人よりモノの方に関心が高いのか」
このように診断名だけで判断するのは、間違いのもとです。
なぜなら、前述もしましたが、複数の特性を併せ持つ場合も珍しくないからです。
先の3種類の発達障害の図(図1)で、それぞれが重なり合うように描かれていたように、発達障害のある方の中には、ADHDの診断名をもつ人でも、ASDの特性を併せもつ人もいますし、ASDの診断を受けている人がADHDの特性を併せ持っていることもあります。
そのため、発達障害を診断名だけで判断せず、一人ひとりの特性をよく把握することが大切です。
5.その他の特性
・感覚の過敏さまたは鈍麻
・手先や運動面での器用さまたは不器用さ
〈感覚の過敏さ/鈍麻〉
視覚・聴覚・触覚・味覚など、感覚の過敏さ、もしくは鈍麻(鈍さ)のある人もいます。
たとえば聴覚に過敏さをもつ人の中には、パソコンのキーボードを打つ音、シュレッダーの音、電話の鳴る音などが気になって集中できないことなどがあります。
また、視覚に過敏さをもつ人は、蛍光灯のちらつきが気になるなどの症状として現れることがあります。
〈手先の器用さ・運動〉
手先が極端に器用だったり、不器用だったりする人もいます。
6.二次障害
7.まとめ
・発達障害は生まれつきの脳機能の発達に偏りがあり、得意・不得意の特性と、環境や周囲との人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害です
・知的に遅れがない場合は「精神障害者保健福祉手帳」を、知的に遅れのある発達障害の人は「療育手帳」を取得することができます
・発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)等があります
・自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。また、特定のことに強い関心をもっていたり、こだわりが強かったりします。また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合もあります
・注意欠如・多動症(ADHD)は、落ち着きがない、待てない(多動性-衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)といった特性があります。多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合も、いずれか一方が認められる場合もあります
・学習障害(LD)は知的発達には概ね問題がないのに「読み、書き、算数」のいずれか(あるいは重なることもある)を極端に苦手とします
・発達障害の特性を併せ持つ場合もあるため、診断名だけで判断しないようにした方がよいでしょう
・その他の特性として、感覚の過敏さ/鈍麻、手先の器用さ/不器用さ、運動機能の特異性なども挙げられます
・一次障害である発達障害そのものに加えて、不安症やうつ病など、二次障害を併せもつ人もいます
発達障害の特性や症状は、目に見えづらく、一人ひとりでその特性が異なります。
そのため、どんなことができて、どんなことに困難さを感じるのか、職場で一緒に働く人々が理解しづらく、ミスやトラブルにつながるケースもあります。
発達障害の基本的な特徴を理解し、さらに一人ひとりの得意なこと、不得手なことを理解していくことは、障害のある人にとっても、周りの人にとっても、心地よく働ける環境づくりの一歩となります。
障害者雇用Q&A■精神障害者に「頑張れ」は禁句?
■障害のことについて、一般社員にどこまで開示できるのか?
■発達障害者への指示出しのポイント
■ジョブコーチはどこまでやってくれるの? …など
障害者雇用の現場で弊社にお寄せいただいだ実際のご相談をQ&A形式でご紹介しています。
障害者雇用のご担当者が抱える「誰に訊けばいいのかわからない」 疑問やお悩みの答えが、きっとここにあります。
障害者雇用に関するご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。
メール info@fvp.co.jp
電話 03-5577-6913
お問い合わせフォーム https://www.fvp.co.jp/contact/