精神障害とは? 精神障害のある人の特徴

1.    導入

「精神障害のある社員の対応に悩んでいる」

障害者雇用の現場で、このような声を聞くことは少なくありません。
なぜ、企業は、精神障害者の雇用に悩むのでしょうか。

ここでは、次のようなことを解説していきます
精神障害者を雇用する上でのヒントとなれば幸いです。

1.    障害者雇用における精神障害者とは、どのような人を指すのか
2.    精神障害のある人はどのような特徴を持っているのか
3.    精神障害者を雇用するにあたり知っておきたいポイント

2.    障害者雇用における「精神障害者」とは?

まず、「障害者」とは、どのような人のことをいうのでしょうか?

現行の法律では、一口に「障害者」を定義したものはありません。 
「身体障害」、「知的障害」、「精神障害(発達障害を含む)」について、それぞれ「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」、「精神保健福祉法」で規定しています。  
 
障害者雇用に関しての「障害者」は「障害者雇用促進法」等で、次のように規定されています。  

身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者(第二条)
  
つまり、障害の種類や手帳の有無を問わず、職業生活上の困難を抱えている、すべての種類の障害者が、この法律の対象となります。  

しかし、注意したいのは、障害者雇用促進法における実雇用率の対象となる障害者は、基本的には「障害者手帳」を持っていることが条件となることです。

障害者手帳には次の3種類があります。
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳

実雇用率の対象となる精神障害者は、障害者雇用促進法の三十七条2項で、精神障害者保健福祉手帳を保持しているもの、と定義されています。

(略)「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。第三節及び第七十九条第一項を除き、以下同じ。)をいう。

3.    精神障害の症状

ここでは、精神障害の代表的な疾患と、その症状について説明します。

①    統合失調症

統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。ほかの慢性の病気と同じように長い経過をたどりやすいですが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの方が長期的な回復を期待できるようになっています。

【特徴的な症状】
統合失調症の症状でよく知られているのが、「幻覚」と「妄想」です。
幻覚とは実際にはないものをあるように感じる知覚の異常で、中でも自分の悪口やうわさなどが聞こえてくる幻聴は、しばしば見られる症状です。
妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。
こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。

【原因】
発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。

【患者数】
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。また、世界各国の報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%と推計されます。100人に1人弱。決して少なくない数字です。それだけ、統合失調症は身近な病気といえます。

【経過】
治療によって急性期の激しい症状が治まると、その後は回復期となり、徐々に長期安定にいたるというのが一般的な経過です。なかにはまったく症状が出なくなる人もいますが、症状がなくなったからといって自分だけの判断で薬をやめてしまうと、しばらくして再発してしまうことも多いので注意が必要です。主治医と相談することが大切です。統合失調症も糖尿病や高血圧などの生活習慣病と同じで、症状が出ないように必要な薬を続けながら、気長に病気を管理していくことが大切です。

参考:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
②    気分障害(うつ病・双極性障害)

うつ病は、気分障害の一つです。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。気分障害には、うつ病の他に、うつ病との鑑別が必要な双極性障害(躁うつ病)などがあります。うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なりますので専門家による判断が必要です。

【特徴的な症状】
うつ病では、自分が感じる気分の変化だけでなく、周囲からみてわかる変化もあります。

《周囲から見てわかるうつ病のサイン》
・表情が暗い
・自分を責めてばかりいる
・涙もろくなった
・反応が遅い
・落ち着かない
・飲酒量が増える

《身体に現れるうつ病のサイン》
・食欲がない
・性欲がない
・眠れない、過度に寝てしまう
・体がだるい、疲れやすい
・頭痛や肩こり
・動悸
・胃の不快感、便秘や下痢
・めまい
・口が渇く

《そう状態のサイン》
・睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
・寝なくても元気で活動を続けられる
・人の意見に耳を貸さない
・話し続ける
・次々にアイデアが出てくるがそれらを組み立てて最後までやり遂げることができない
・根拠のない自信に満ちあふれる
・買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
・初対面の人にやたらと声をかける
・性的に奔放になる

【原因】
うつ病発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。うつ病の背景には、精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いですが、辛い体験や悲しい出来事のみならず、結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい出来事の後にも発症することがあります。なお、体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあるので注意が必要です。

【患者数】
日本では、100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります。また、女性の方が男性よりも1.6倍くらい多いことが知られています。女性では、ライフステージに応じて、妊娠や出産、更年期と関連の深いうつ状態やうつ病などに注意が必要となります。
日本における双極性障害の患者さんの頻度は、重症・軽症の双極性障害をあわせても0.4~0.7%といわれています。1,000人に4~7人弱ということで、これはうつ病に比べると頻度は少ないといえます。

【経過】
うつ病の治療を考える前に、まず、心身の休養がしっかりとれるように環境を整えることが大事です。職場や学校から離れ自宅で過ごす、場合によっては、入院環境へ身を委ねることにより、大きく症状が軽減することもあります。精神的ストレスや身体的ストレスから離れた環境で過ごすことは、その後の再発予防にも重要です。うつ病の治療には、医薬品による治療(薬物療法)と、専門家との対話を通して進める治療(精神療法)があります。また、散歩などの軽い有酸素運動(運動療法)がうつ症状を軽減させることが知られています。
双極性障害の治療には薬による治療と心理社会的アプローチがあります。
「こころの悩み」とは異なり、カウンセリングだけで回復が期待できるものではありません。薬物療法を基本に治療法を組み立てていきます。
参考:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

③    高次脳機能障害

交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害です。
身体的には障害が残っていないことも多く、外見からはわかりにくいため「見えない障害」とも呼ばれています。
次のような症状が現れますが、これらの症状は単一的に現れるのではなく、複合的に組み合わされて現れることが多く、症状の現れ方も人それぞれに異なります。
国立障害者リハビリテーションセンターHPより)

また、失語症(聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの障害)を伴ったり、片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害があったりする場合があります。
リハビリテーションによる治療が中心となります。

4.    精神障害のある人の特徴

ここまで、精神障害の代表的な疾患と症状についてご説明してきました。

では、精神障害のある人の、障害としての特徴とは何でしょうか?
精神障害のある人に仕事をしてもらう上で、どんなことに気をつければよいのでしょうか?

ポイントは次の3つです。

1.    病気と障害が併存している
2.    認知機能の低下が見られる場合もある
3.    中途障害である

1.    病気と障害が併存している
身体障害では、疾患が治療により終了すると、障害に移行し、固定化します。その障害のある「部分」で困難なこと、苦手なことがわかりやすく、配慮すべきことも比較的明確になります。
それに対して、精神障害は、病気と障害が相互に関わり、共存しています。疾患による障害を「部分」ではなく、社会生活全体で見ていかなくてはなりません。また、心理面や環境条件の影響を強く受けて症状が変化しやすいために症状の固定がされにくく、何年たっても疾病の状態が変化する可能性を残していることがあります。

2.    認知機能の低下が見られる場合もある
症状、薬の影響などによって、認知機能の低下がみられる場合があります。
認知機能とは、精神医学的には知能に類似した意味ですが、心理学では知覚を中心とした、判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれます。
職場においては、口頭による指示理解、状況判断と意思決定、新しい業務を覚える、同時並行で業務を行う、などに苦手さを生じることがあります。
発症前できていたことが、発症したことにより難しくなっていることも少なくありません。
言葉でのやり取りに問題がないように見えても、実際に仕事をやってもらうと、思うように遂行できないという場合もあります。

3.    中途障害である
精神障害は、先天的な障害ではありません。
大人になって、あるいは大人になる過程で精神疾患を発症されています。
病気になったこと、精神障害となったことによる偏見などで、落ち込んだり、自信をなくしたりしている方々も多くいらっしゃいます。
また、自分に精神障害があるということを受け入れるのに時間がかかる人もいます。

5.    まとめ

いかがでしょうか。
精神障害者とはどのような人を指すのか、どのような特徴があり、何に気をつければよいのか、下記にまとめました。

・障害者雇用における精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳を取得している人を指す。
・精神障害のある人は、病気を発症し、それが長引いて社会生活に困難さを生じたことで手帳を取得している。
・発達障害のある人は、生まれながらの脳発達の偏りにより社会生活に困難さがあり、手帳を取得されている。
・精神障害のある人の障害としての特徴、仕事をしてもらう上で気をつけたいポイントは次の3つである。
 1.    病気と障害が併存している
 2.    認知機能の低下が見られる場合もある
 3.    中途障害である

精神障害者を雇用する上でのヒントになれば幸いです。
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