特例子会社とは?直接雇用との違いや、設立するメリット・デメリットを解説

特例子会社とは、障害者の雇用を目的として設立される子会社です。

障害のある方を雇用する方法は、特例子会社を設立する他に、「障害者雇用枠」として直接雇用する方法が一般的です。そうした状況の中、近年、特例子会社を設立する企業が増えていることをご存知でしょうか?

この記事では、特例子会社での障害者雇用と直接雇用の違いや、特例子会社を設立するメリットなどをわかりやすく紹介します。障害者雇用の正しい知識を身に付け、企業のさらなる成長を目指しましょう。


特例子会社とは

特例子会社とは、障害者の雇用の促進と安定のために設立される子会社で、厚生労働大臣から特別な認定を受けています。特例子会社の主な役割は、障害者を継続的に雇用し、障害者雇用義務という社会的責任を果たすことです。
障害者雇用促進法では、「事業主の責務」として障害者の雇用が義務付けられています。2024年4月現在の民間企業における法定雇用率は2.5%です。つまり、社員40人以上の企業は1人以上の障害者を雇用する義務があるということです。
なお、法定雇用率は今後も段階的に引き上げられ2026年からは2.7%になります。
特例子会社で雇用されている障害者は、親会社の雇用とみなされるので、親会社の法定雇用率を満たすことができます。グループ適用を受けたグループ会社についても同様で、法定雇用率を満たすことができます。

障害者が安定的に終業するためには障害に配慮された職場環境が必要になりますが、特例子会社は、障害特性・安全面・コミュニケーションなどに配慮されているため、障害者が就職・定着しやすい環境とされています。

参考:厚生労働省「特例子会社」制度の概要

特例子会社と特例子会社ではない障害者雇用の違いとは?

特例子会社と一般企業における障害者雇用の違いは、

●    職場環境
●    障害者の定着率
●    職能要件

などが該当します。

ここからは、特例子会社と、一般企業の障害者雇用について、違いを詳しく見ていきましょう。

職場環境の違い

特例子会社と一般企業での障害者雇用の違いは、職場環境における配慮や支援の程度です。特例子会社は、障害者の「働きやすさ」を重視した職場環境や労働条件を整えています。一方で一般企業の障害者雇用は、健常者中心の職場に障害者を雇用する形です。一般企業の場合、障害に対する理解や配慮にばらつきがあり、障害者が十分に力を発揮できるとは限りません。

マネジメントの側面から見ても、特例子会社は一般企業での障害者雇用より管理しやすく、コストの削減に繋がります。一般企業の障害者雇用は多くの場合、受け入れる部署ごとに環境を整える必要があり、予算や人的配置にコストがかかります。特例子会社ならば障害者をまとめて受け入れるため、設備や体制を整える上で効率的です。

職場定着率の違い

特例子会社は障害者の職場定着率が高いことが特徴の1つです。特例子会社は障害者雇用を前提とした会社であり、勤務時間・業務内容・サポート体制といった面で、障害を持っていても働きやすいよう配慮されています。

一概に障害と言っても、障害の種類は

●    身体
●    知的
●    精神

の3つにわけられます。


障害の種別だけでなく、特性や症状も人それぞれです。障害の特性や重さによって異なる配慮が必要なため、一般企業では設備を整えられなかったり、他の従業員との不調和が起きたりして、障害者が職場に定着できない恐れがあります。

特例子会社は、雇用される障害者の特性に合わせて体制や業務内容を考えるケースがほとんどです。例えば、車いすの従業員のためにバリアフリー化を進める、ASD(自閉スペクトラム症)傾向の人を雇用するために詳細なマニュアルを作成する、といった方法で働き続けられる環境を整え、障害者の定着率を上げています。

職能要件の違い

特例子会社は、障害の特性に合った職種や業務を担当するケースがほとんどです。求められる知識・技能は、障害を持っていることを前提にしています。また、人事評価についても、障害の特性に合わせた目標を設定するため、従業員のモチベーションや生産性を維持しやすい環境です。

一方で、一般企業での障害者雇用は、該当の業務で求められる職能要件を満たせる人が採用されます。一般企業で働く障害者は、一般採用の職員と協働して業務を進める形です。そのため、一般企業の障害者雇用で求められる知識・技能は、特例子会社よりも高い傾向にあります。高い知識・技能を求められた結果、障害特性と業務内容のミスマッチや、周囲の理解不足による軋轢が起きかねません。

なお、特例子会社の具体的な仕事内容は、親会社のサポートや軽作業など、企業によって異なります。マニュアルを完備した定型的な業務は特例子会社の業務として組み込みやすく、職能要件も整備しやすいでしょう。


特例子会社の設立に向いている企業とは

特例子会社の設立に向いている企業は、比較的規模が大きく、ある程度の定型業務を切り出せる企業です。特例子会社の設立に向いている企業の特徴について、以下にまとめています。

●    経営が安定している大・中規模の企業
●    傘下に複数のグループ企業のある企業
●    すでに障害者を雇用しており、今以上の受け入れが難しい企業
●    外部に発注している業務が多い企業
●    自社で行っている業務の一部についてアウトソースを考えている企業

特例子会社の設立を成功させ、設立後も継続的・安定的に子会社を経営するためには、親会社からの支援が必要です。ある程度の規模があり、定型業務の切り出しができる企業なら、経営状況や社会情勢が変化しても特例子会社へ委託する業務を確保できます。

なお、現在の法定雇用率は2.5%であり、会社の規模が大きくなるたびに雇用する障害者数も増えていきます。会社の規模や条件がそろっているならば、障害者が安定して働ける仕組み作りのため、特例子会社の設立を検討しましょう。


特例子会社設立のメリットとは

特例子会社を設立するメリットは、以下の2点が挙げられるでしょう。

●    障害者の活躍が会社の戦力になる
●    障害者の定着により法定雇用率が達成・維持されやすくなるる

特例子会社の設立によって、障害者の戦力化によるイノベーションの促進、生産性の維持・向上が期待できます環境が整った特例子会社ならば障害者の定着率が高いことで、障害のある社員の育成においても長期的な視点で取り組むことができるようになります。

ここからは、特例子会社を設立する具体的なメリットについて、組織設計と設備投資の面から紹介します。

障害者に合わせた独自の組織設計が可能

特例子会社を設立するメリットの1つが、障害に合わせた独自の組織設計ができることです。障害者雇用は、障害者が十分に力を発揮するために、人事評価・雇用体系・給与規定などを親会社と異なる視点で決めなければなりません。特例子会社は、障害者雇用を前提に設立されており、障害に配慮した組織を構築できます。

また、同じ障害者でも、就労意欲や能力の高い層と、配慮を必要としながら職場定着を目指す層に分けて目標や評価を行う必要があります。就労意欲の高い層は健常者と同じ程度の目標を掲げ、配慮を必要とする層には単純作業を任せるなど、それぞれの層にマッチした目標設定と評価ができると、生産性の向上と障害者の職場定着に繋がります。

特例子会社を設立すると障害者に合わせた管理体制・職場環境が醸成されます。障害者雇用のノウハウが蓄積されれば、障害者にとって他の職場よりも働きやすい場所になり、他社との差別化も図れます。

設備投資の効率化を図ることができる

設備投資を効率的に行えるのが、特例子会社のメリットです。特例子会社は、障害者を1か所に雇い、戦力として活躍してもらう場所です。特例子会社は、障害特性に合わせたファシリティマネジメントや人材マネジメントを1か所で行えるため、管理コストが抑えられます。

一般企業の障害者雇用では、障害者に特化した設備投資が困難です。障害者雇用は部署ごとに障害者を少人数採用するケースが多いため、それぞれの部署で設備や体制を整えた場合、膨大なコストがかかります。その結果、不十分な設備や組織体制になりやすく、障害者や他の職員が「働きにくい」と感じる原因になります。特例子会社なら、設備投資を1か所で行えるため、環境の維持・管理が容易です。

また、特例子会社の設立によって人的コストの削減にも繋がります。指導の効率性を考えたとき、障害者が配属された部署ごとに指導者を付けるより、障害者数名につき1人の指導者がいたほうが効率の良い配置です。特例子会社の設立は、多方面のコスト削減に役立ちます。


特例子会社設立のデメリット

特例子会社を設立するデメリットは、以下の2点です。

●    事業運営が親会社依存となりやすい
●    障害者社員の処遇は相対的に低めである

特例子会社の業務内容は、主に親会社から切り出した業務が中心となるため、新たな事業を開発したりといった形で、事業を発展させていくことが難しい傾向です。
特例子会社を安定的に運営していくためには、親会社の協力を得ながら、仕事の生産性を高めたり、さらに付加価値の高い業務に取り組むなどしていくことが求められます。
また、特例子会社の業務は、障害特性に配慮して定型的なものが多い傾向があります。メール処理やデータ入力、工場での仕分け、清掃、印刷関連などが多く見られます。
せっかく業務に習熟しても、その次の段階の業務が用意されていないことにより、仕事の物足りなさを感じたり、モチベーションの低下を感じてしまう恐れがあります。

そういったことを踏まえて、今後特例子会社を設立していく場合は、将来的なビジョンの中で業務の幅を広く持つ、運営の専門家に相談するといった方法でデメリットを補うことが成功の鍵です。


特例子会社設立のデメリットをカバーする方法

特例子会社を設立する際は、支援サービスの利用をおすすめします。特例子会社を成功させるためには、継続運営を目指したシステムと障害者のキャリアアップに繋がる支援が重要です。

企業のご担当者様のみで設立を検討する場合、障害者雇用のための方針やプランが定まらず、実現が難しい状況になりかねません。特例子会社設立支援サービスには障害者雇用の実績とノウハウがあります。サービスを利用すれば、自社で実現可能なプランや特例子会社設立のサポートを受けられます。

FVPは、特例子会社の設立準備から管理体制の構築支援まで行う障害者雇用のエキスパートです。FVPでは、特例子会社の設立やその後のアフターフォローをサポートし、企業様の障害者雇用における課題解決に取り組みます。

FVPの特例子会社設立支援を実際にご利用されたお客様の実例

ここからは、FVPのサービスを実際にご利用されたお客様の事例を紹介します。

株式会社ヴァティービジネスサポートの親会社である株式会社ヴァティー様は、関東を中心に介護施設を展開する企業です。
現場の多忙さやコロナ禍による負担から、計画的な障害者採用に課題感を感じられていました。

今後も増え続ける従業員。どのような障害者雇用の仕組みを持つべきか、そのようなご相談をいただくなかで、FVPの特例子会社設立支援サービスを利用いただきました。
新たに設立した株式会社ヴァティ―ビジネスサポート様では8名の障害者を採用し、2022年12月には特例子会社の認可を受けました。

FVPを選ばれたのは、企業の成長に合わせた障害者雇用の安定化を目指せる点と、FVPの豊富な実績による特例子会社設立手続きの一貫したサポート体制が理由とのこと。

ヴァティービジネスサポート様は、特例子会社によって障害者雇用をスムーズに進め、法定雇用率の維持だけでなく、障害者が会社の戦力として活躍できる環境を整えました。親会社様でも障害者雇用への前向きな意識変革が進んでいるとのことです。

株式会社ヴァティービジネスサポート様のインタビューについて、詳細はこちらをご覧ください。
障害者雇用支援の事例紹介|株式会社ヴァティービジネスサポート様


まとめ

特例子会社は、

●    障害の特性
●    安全面
●    コミュニケーション

などに配慮した職場です。障害のある方にとって働きやすい特例子会社なら、障害者の定着率の向上が期待できます。

特例子会社を設立すると、織運営や設備面でメリットを実感できるでしょう。特例子会社において障害者をサポートできれば、一般企業での障害者雇用よりも、戦力の拡大やコスト削減が見込まれます。

一方で特例子会社は、経営において親会社に依存しがちであること、、障害者のキャリアアップが図りにくいといったデメリットがあります。
デメリットについては、事業の選択や、設立段階の事業計画を策定する段階において、対策を講じておくことが求められます。


特例子会社 事業計画書テンプレート

特例子会社制度や設立要件など記載されている項目について
自社の考えや状況をふまえ、検討していくことで、
社内に説明する事業計画書をつくることができます。

特例子会社の設立についてお気軽にご相談ください

特例子会社の設立には、会社設立のための申請業務と障害者の採用業務を同時に進める必要があります。申請業務は、情報収集、事業計画の立案と検討、各種届出の準備というフェーズに分かれ、プロジェクト発足から実際の認定を受けるまでに半年以上の期間がかかる見込みです。さらに特例子会社の設立はゴールではなく、障害者雇用のスタート地点にすぎません。特例子会社の目的は、安定した運営と障害者の定着です。特例子会社の設立・運営を障害者雇用のご担当者様のみで行うには負担が大きく、行き詰まりを感じる場合があるでしょう。

FVPは、特例子会社の設立に関して、豊富な経験と知識を持っています。FVPの障害者雇用支援サポートは、企業様の課題や目標を確認しながら進めていく伴走型のサービスです。障害者雇用の課題解決と安定的な運営体制を構築したいときは、以下から無料相談をお申し込みください。