特例子会社認定申請に向けた手続きとは?
1.はじめに
さらに特例子会社を作ることのメリット、デメリットをご紹介してきました。
この第3回は、特例子会社の認定申請に向けての検討内容、諸手続きをご紹介します。
2.特例子会社認定までの全体フロー
特例子会社の認定を受けるためには、子会社を設立し、特例子会社の要件を整え、必要書類を整えてハローワークへ申請していくわけですが、その場合、基本的には設立された子会社において、新たに障害者社員の採用を進めていくことが求められます。
認定に向けたフローは、「情報収集フェイズ」、「事業計画の立案・検討フェイズ」「法人設立・申請書類準備フェイズ」の3つのフェイズに分かれます。
次の3~5では、それぞれのフェイズについて見ていきます。
また、6では子会社での採用業務について紹介します。
3.情報収集フェイズ
また、既存の特例子会社や障害者雇用に取り組んでいる企業を見学するなどして、自社で設立する特例子会社の運営イメージ、目指していくビジョンを固めることも大切です。
4.事業計画の立案・検討フェイズ
事業計画には、
・自社またはグループ内企業の障害者雇用の状況と課題
・特例子会社設立の必要性
・経営理念
・社名
・所在地
・資本金
・事業計画
・グループ適用をする企業
・採用計画
・投資計画
・収支計画、概算収支・役員、出向者
・労働条件
・設立までのスケジュール
などの項目を盛り込んでいくことが求められますが、以下から「特例子会社事業計画書テンプレート」をダウンロードしていただけますのでぜひご活用ください。
チェック! 特例子会社事業計画書テンプレート
この段階では、決定できない項目も数多く存在していますが、検討課題として検討を進めていくこともできますので、
事業計画は早い段階から作成し、段階ごとに加筆・修正して、より実効性の高い計画にしていくことをおすすめしています。
【確認しましょう】 特例子会社の認定要件
◎親会社の要件
・親事業主が特例子会社の意思決定期間(株主総会等)を支配していること
・親会社から子会社への役員派遣、従業員の出向等人的交流が密であること
◎子会社の要件
・特例子会社が株式会社であること(新設でも既存のものでも可)
・雇用される障害者が5人以上で、かつ、全従業員中に占める割合が20%であること
・雇用される障害者中に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること
・障害者のための施設・設備の改善、専任の指導員の配置等を行い、
障害者の雇用管理を適正障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること
・障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること
5.法人設立・申請書類準備フェイズ
株式会社において、子会社の設立は、取締役会での承認が必要です。
そのため、事業計画の立案・検討フェイズで作成した事業計画書などをもとに特例子会社の設立を取締役会に上申し、正式承認を受けることが子会社設立の第一歩となります。
(2)法人登記の準備、法務局への届出
登記をするため、定款を作成します。
定款に必要な項目は、「商号」、「目的」、「本店の位置」、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」、「登記人の氏名又は名称及び住所」です。
定款ができたら交渉人の認証をもらって法務局へ登記申請書を提出します。
ちなみに、申請届出をした日が会社設立日となります。
(3)子会社事業開始に関する各種届出
申請自体には関係ありませんが、子会社が事業を開始するためには各種手続きが必要です。
①税務関係
以下の書類を税務署に届け出る必要があります。
・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払 事務所等の開設届出書
・源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
・棚卸資産の評価方法の届出書
・減価償却資産の償却方法の届出書
また、地方税関連の手続きを、都道府県及び市町村に対して行います。
②社会保険関係
・健康保険と厚生年金の加入手続きは、会社所在地を所轄する年金事務所に届け出ます。
・労災保険は、従業員を雇った場合に加入します。
会社がある地域を管轄する労働基準監督署に提出します。
・雇用保険適用事業所設置届は、子会社の所在する地域の管轄ハローワーク
(公共職業安定書)に提出します。
(4)管理責任者、現場責任者の人選
特例子会社の経営というと、障害者についての経験や専門知識をもっていることが必要と考えがちですが、経営と運営をしっかり分けることが大事です。
経営は組織や制度をしっかり考えられ、親会社、グループ会社の経営層ともやりとりできる人をアサインしたほうがよいでしょう。
【確認しましょう】 経営層と運営層の役割と求められるスキル
経営層
運営層
役割
・特例子会社の役割をふまえ、仕組みや制度を組み立てること
・特例子会社の貢献を親会社・グループ会社に理解、浸透させること
・特例子会社で行う業務を親会社・グループ会社から集めてくること(業務開発)・障害者の採用、教育・指導
・障害者のマネジメント
・特例子会社で行う業務の品質の担保求められるスキル
○提案力
○企画力
○実行力○採用する障害者社員、障害者雇用管理に関する一定の知識(障害者雇用の経験があることは望ましいが条件ではない)
○自社内の業務を知っている
○各部署と調整ができる
以上の手順特例子会社の認定に必要な要件が整うと特例子会社の認定申請が可能となります。
申請内容は、ハローワークによる書類審査、実地調査を経て、認定されます。
6.子会社での障害者社員の採用
(1)業務の選定
・特例子会社の業務として検討できる業務の候補
・仕事量、今後の見通し
・リスク
・課題
・採用スケジュール
(2)採用する障害者の明確化
・(1)で選定した業務を担える障害者の人材要件
(障害種別、障害程度、保有スキル等)
・雇用形式、処遇の検討
・採用する人数と労働市場との適合性
(3)採用活動
・就労支援機関、特別支援学校との関係構築
・職場見学会
・雇用前実習
・求人
・面接
・内定
(4)雇用管理体制構築
・体調管理
・業務管理
・面談
・教育訓練
・評価
・支援者との連携
7.終わりに
特例子会社は認定がゴールではありません。
むしろスタートラインに立ったといえるでしょう。
入社した障害者社員の定着、育成に積極的に取り組み、障害者雇用の管理体制を構築していくことが求められます。
また、障害者雇用をしっかりと「見える化」し、社内はもとより各種ステークホルダーに対して、
障害者雇用の姿勢や特例子会社らしい社会貢献の形を打ち出していくことも望まれます。
ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。