行田特別支援学校の取組に学ぶ ~地域支援と「デュアルシステム」~

皆さん、こんにちは。
本年2月5日、埼玉県立行田特別支援学校において「学校運営協議会」が開催され、私も出席させていただきました。
行田市に立地するものつくり大学は、同校と教育連携協定を締結しています。このご縁から、昨年、同校の寺嶋毅校長から私に、学校運営協議会の委員就任のお話をいただきました。
行田特別支援学校は、知的障害を対象としている学校で、小学部・中学部・高等部があり、全校で約240名が在籍しています。高等部卒業時には、令和6年度(2024年度)の実績として企業に4名が就職し、このほかB型や生活介護など、多様な進路が選択されています。
今回の協議会では、令和7年度の活動報告が議題となりました。その中で特にふたつの取組から新たな学びを得ることができましたので、皆様にもご報告させていただきます。
ひとつは、地域における学校間の連携(地域支援)の取組です。
この取組では、特別支援学校から地域の小中学校への「巡回相談」を実施するとともに、小中学校と特別支援学校の先生方が参加してともに学び合う「インクルーシブ研修会」が開催されています。
この取組は、埼玉県教育委員会の方針のもとで、行田特別支援学校が令和4年度から始めたもの。コーディネーター2名が専任で配置され、行田市をはじめとする近隣の4市を対象地域として展開されています。
巡回相談は、就学前の保育園・幼稚園から高等学校まで、幅広く実施されており、活動報告には次のように記載されていました。
「本校のセンター的機能の周知がされてきたため、巡回相談の継続した活用が定着してきた」
「障害の有無にかかわらず、多様な児童生徒(精神疾患を抱えている、家庭環境に課題がある、人との関係性(愛着)に課題がある、外国籍等)が相談の対象にあがることもあり、多岐にわたる相談内容への対応が求められるようになってきている」
また、昨年7月に行田特別支援学校で開催されたインクルーシブ研修会には、小中学校から47名、同校から31名の先生方が参加。事例検討会やグループワークなど、実践的なプログラムが実施されています。活動報告には「情報共有やグループワークをとおして小中学校と特別支援学校の教員が共に学び合いながら、具体的な実践につなげていくための機会の必要性を実感した」との記載がありました。
協議会の場では、出席していた地元の中学校の校長先生から、いずれの取組についても「これからもぜひお願いしたい」との発言もあり、双方にとって意義ある取組となっていることを実感しました。
小中学校にも特別支援学級があり、通常学級でも個別支援のニーズが高まっている中、専門的なノウハウや経験を有する特別支援学校が、学校種や設置主体の違いを超えて、地域において各校と交流することは、たいへん意義深いことであると考えます。
私は、障害の有無やそれに伴う生きづらさというものは、どこかに明確な境界線があるわけではなく、グラデーションのように連続しているものではないかと考えています。この取組は、このような考え方にも沿ったものであるように感じました。
今後のさらなる展開を期待したいと思います。
もうひとつの取組は「デュアルシステム」です。
デュアルシステムという用語は、職業訓練の分野でも使われていますが(=企業実習付訓練コース)、ここでは、特別支援学校と企業の協力関係がポイントとなっています。
具体的には、授業の一環として教員が企業に同行し、複数の生徒が一緒に企業の現場で働くことを体験するというもの。行田特別支援学校では、令和4年度から実施しており、県内で取り組んでいる学校はまだ数校と伺いましたので、先駆的な存在です。
進路指導担当の先生の説明では、採用を念頭において企業が実施する「職場実習」は、実習先を1社に絞って、教員の同行なしに生徒が企業に赴くこととなるため、生徒にとってハードルが高く、進路選択の過程において一足飛びの感があるとのこと。この状況を解消するため、職場実習の前段階に位置づける取組として考え出されたのが、デュアルシステムです。

令和7年度においては、地元のホームセンター、病院、介護施設などの協力を得て、17名の生徒が多様な職種の仕事を体験することができたとのこと。これまでの取組では、この経験が契機となって、一般就労(就職)を実現させた生徒もいるとのお話でした。
私はこの取組を知って、職場実習は、あくまでも企業の視点から実施されているものなのだと、認識を新たにしました。これに対して、デュアルシステムは。一般就労へのステップを着実なものとするために、教育の立場から発案されたものであり、生徒の進路選択にとって大きな意義を有するものであると感じます。
デュアルシステムを運用するには、企業の理解と協力が欠かせません。行田特別支援学校では、企業に協力を要請するに当たっては、次の項目を基準としてその対象を考えているとのことでした。
・地域の企業であること
・作業実習の際、デュアルシステムの経験が繋がる(生きる)業種や職種であること
・障害者雇用枠にて採用意欲(計画)のある企業であること
ごくわずかの日数とはいえ、生徒を現場に受け入れる企業を探すのは、並大抵のことではないと思います。
今後、より多くの企業において理解が進み、その協力を得ることによって、この取組が一層大きな成果を上げることを心よりお祈りしたいと思います。
本年2月5日、埼玉県立行田特別支援学校において「学校運営協議会」が開催され、私も出席させていただきました。
行田市に立地するものつくり大学は、同校と教育連携協定を締結しています。このご縁から、昨年、同校の寺嶋毅校長から私に、学校運営協議会の委員就任のお話をいただきました。
行田特別支援学校は、知的障害を対象としている学校で、小学部・中学部・高等部があり、全校で約240名が在籍しています。高等部卒業時には、令和6年度(2024年度)の実績として企業に4名が就職し、このほかB型や生活介護など、多様な進路が選択されています。
今回の協議会では、令和7年度の活動報告が議題となりました。その中で特にふたつの取組から新たな学びを得ることができましたので、皆様にもご報告させていただきます。
《地域におけるセンター的な機能を発揮》
この取組では、特別支援学校から地域の小中学校への「巡回相談」を実施するとともに、小中学校と特別支援学校の先生方が参加してともに学び合う「インクルーシブ研修会」が開催されています。
この取組は、埼玉県教育委員会の方針のもとで、行田特別支援学校が令和4年度から始めたもの。コーディネーター2名が専任で配置され、行田市をはじめとする近隣の4市を対象地域として展開されています。
巡回相談は、就学前の保育園・幼稚園から高等学校まで、幅広く実施されており、活動報告には次のように記載されていました。
「本校のセンター的機能の周知がされてきたため、巡回相談の継続した活用が定着してきた」
「障害の有無にかかわらず、多様な児童生徒(精神疾患を抱えている、家庭環境に課題がある、人との関係性(愛着)に課題がある、外国籍等)が相談の対象にあがることもあり、多岐にわたる相談内容への対応が求められるようになってきている」
また、昨年7月に行田特別支援学校で開催されたインクルーシブ研修会には、小中学校から47名、同校から31名の先生方が参加。事例検討会やグループワークなど、実践的なプログラムが実施されています。活動報告には「情報共有やグループワークをとおして小中学校と特別支援学校の教員が共に学び合いながら、具体的な実践につなげていくための機会の必要性を実感した」との記載がありました。
協議会の場では、出席していた地元の中学校の校長先生から、いずれの取組についても「これからもぜひお願いしたい」との発言もあり、双方にとって意義ある取組となっていることを実感しました。
小中学校にも特別支援学級があり、通常学級でも個別支援のニーズが高まっている中、専門的なノウハウや経験を有する特別支援学校が、学校種や設置主体の違いを超えて、地域において各校と交流することは、たいへん意義深いことであると考えます。
私は、障害の有無やそれに伴う生きづらさというものは、どこかに明確な境界線があるわけではなく、グラデーションのように連続しているものではないかと考えています。この取組は、このような考え方にも沿ったものであるように感じました。
今後のさらなる展開を期待したいと思います。
《「デュアルシステム」で一般就労につなぐ》
デュアルシステムという用語は、職業訓練の分野でも使われていますが(=企業実習付訓練コース)、ここでは、特別支援学校と企業の協力関係がポイントとなっています。
具体的には、授業の一環として教員が企業に同行し、複数の生徒が一緒に企業の現場で働くことを体験するというもの。行田特別支援学校では、令和4年度から実施しており、県内で取り組んでいる学校はまだ数校と伺いましたので、先駆的な存在です。
進路指導担当の先生の説明では、採用を念頭において企業が実施する「職場実習」は、実習先を1社に絞って、教員の同行なしに生徒が企業に赴くこととなるため、生徒にとってハードルが高く、進路選択の過程において一足飛びの感があるとのこと。この状況を解消するため、職場実習の前段階に位置づける取組として考え出されたのが、デュアルシステムです。

私はこの取組を知って、職場実習は、あくまでも企業の視点から実施されているものなのだと、認識を新たにしました。これに対して、デュアルシステムは。一般就労へのステップを着実なものとするために、教育の立場から発案されたものであり、生徒の進路選択にとって大きな意義を有するものであると感じます。
デュアルシステムを運用するには、企業の理解と協力が欠かせません。行田特別支援学校では、企業に協力を要請するに当たっては、次の項目を基準としてその対象を考えているとのことでした。
・地域の企業であること
・作業実習の際、デュアルシステムの経験が繋がる(生きる)業種や職種であること
・障害者雇用枠にて採用意欲(計画)のある企業であること
ごくわずかの日数とはいえ、生徒を現場に受け入れる企業を探すのは、並大抵のことではないと思います。
今後、より多くの企業において理解が進み、その協力を得ることによって、この取組が一層大きな成果を上げることを心よりお祈りしたいと思います。

土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 障害者雇用アドバイザー
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
2023年10月、FVP・執行役員に就任。
2025年4月、同社の障害者雇用アドバイザーとなる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。
株式会社FVP 障害者雇用アドバイザー
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
2023年10月、FVP・執行役員に就任。
2025年4月、同社の障害者雇用アドバイザーとなる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。
