三菱UFJビジネスパートナー株式会社(神奈川県相模原市)

皆さん、こんにちは。
今回の訪問は、三菱UFJビジネスパートナー株式会社(神奈川県相模原市)です。
同社社長の小林純さんは、SACECの監事を務めておられ、制度検討委員会の会合で、毎月お目にかかっています。そこで、小林さんに見学をお願いし、2月19日、訪問しました。
当日は、小林さんとともに、岩村忠幸さん(取締役副社長/大阪支社長 兼 業務企画部長)、高橋隆さん(取締役/共生社会推進部長)、増田輝幸さん(人事部長)にご対応いただきました。
三菱UFJビジネスパートナー(MUBP)は、株式会社三菱UFJ銀行の特例子会社です。
その前身として、かつて2つの特例子会社が存在。その「エム・ユービジネスエイド株式会社」(1996年~※)と「エム・ユービジネスパートナー株式会社」(2010年~)が合併して誕生したのが、MUBPです(2020年~)。
※設立時の社名は「東海ビジネスエイド株式会社」。
相模原市には、三菱UFJ銀行の事務センターがあります。その隣接地(旧三和銀行所有地)に、エム・ユービジネスパートナーの本社を置くことを前提に、新しいビルを建設(2010年)。合併後もここがMUBPの本社とされ、JR横浜線の相模原駅から徒歩3分と、たいへん利便性の高い場所にあります。
本社のほかに、名古屋支社、大阪支社、東京業務部があるMUBPには、458名の社員が在籍し、障害のある社員は364名。その内訳は、身体障害者225名、知的障害者51名、精神障害者88名と、多様な構成となっています。
この日は、10分ほどのPR動画(社員が企画・制作)を拝見した後に、社内をご案内いただき、各セクションの社員の方々から、具体的な業務内容を詳しくご説明いただきました。
MUBPは、銀行関連事務の受託を業務の主軸としており、当日は、
① 公的調査
② 福祉関連調査(生活保護・介護保険関連)
③ 郵便戻り条件設定登録(返送されたDMなどの情報をシステムに登録)
④ 単身赴任者交通費精算
の4つの業務を拝見しました。
いずれも個人情報を取り扱う業務。特に①と②は、法令に基づく自治体や警察などからの照会に対し、照会の対象者が三菱UFJ銀行に口座を開設しているか否かや、必要に応じて出入金の状況などを回答する業務であり、極めて繊細な機微に触れる情報を扱っています。
いただいた資料によれば、MUBPにおいては、①と②の業務で全体の約7割を占め、2023年度における公的調査の処理件数は、約215万件とのこと。
法令に基づいて銀行が対応する義務がある業務を、グループの一社として担う。本業の展開に欠かせない存在です。

一方で、現場を拝見して感じたことは、これらの業務がもっぱら紙を主体として処理されているということです。
自治体などからは、封書で依頼書類が送付されてくるので、MUBPでは、これを開封する作業から始まります。その後の各段階においても、書類の保管場所を管理することで、作業の進捗状況を確認。最終的には、依頼元に郵送で回答書を送付しています。
このような業務処理は、それぞれの過程において多くの人手を要することとなり、MUBPの要員体制も、これを前提として組まれています。
しかしながら、時代の流れはペーパーレスへ。MUBPが行う公的調査においても、既にデジタル対応が始まっているとのことでした。
この新しい方法で処理する場合、自治体からの依頼や回答がメールによって行われるだけではなく、MUBPにおける処理も、RPAのような形で自動的に行われるとのこと。現時点では、この処理はまだ一部のみとなっているそうですが、これが増えてくると、要員の大幅な削減につながることになるとのお話でした。
MUBPの基幹業務においてこのような動きがあることは、今後のMUBPの運営に大きな影響を及ぼすこととなるものと感じました。
近年、法定雇用率の引上げが進む中にあって、特例子会社においては、親会社やグループ全体との関係において、自社の役割をどのように位置づけていくのかが、大きなテーマとなっていると感じます。
この点に関して、三菱UFJ銀行とMUBPの間では、特徴ある取組が行われていました。
それは「障がい者雇用推進委員会」。この委員会は、三菱UFJ銀行のCHRO(Chief Human Resource Officer)を委員長とし、同行の人事部長が事務局長に。委員には、銀行の主要役員が名を連ねるとともに、MUBP社長も委員外出席者として参加しています。
委員会は、年に一度開催しているそうで、本年1月に開催された委員会は、第19回となります。
委員会の審議事項としては、大きく4つのテーマが議論されています。
・法定雇用率の遵守
・採用強化
・業務開発
・グループ会社の連携・支援
このうち、「採用強化」に関しては、まず現状として、
・外部環境の変化(採用市場の過熱など)
・新たな内部課題(銀行の人員計画の見直しなど)
を確認。これを踏まえ、銀行・MUBPそれぞれにおける年間採用数(=分担)が具体的に決定されていました。
また、今後の法定雇用率アップを見通した場合、従来の取り組みでは採用や業務維持が困難であり、銀行のダイバーシティ推進室と抜本的な見直しを検討しているとのことでした。
「業務開発」では、「MUBP業容維持に必要な業務開発」が議論の対象に。
前述のようなMUBPの業務をめぐる動きからすれば、時宜を得たテーマであると思います。
そして、今後の業務開発の方針としては、銀行の事務企画部とMUBPが共同で取り組むことが決められていました。
実は、銀行の事務企画部長とダイバーシティ推進室長も、この会議に委員外出席者として参加しています。
小林さんによれば、「銀行の事務処理全体を統括している事務企画部長が、MUBPへの業務委託のあり方に直接関わっている効果は、非常に大きい」とのこと。委員会の決定に基づき、担当幹部から方針が打ち出されることによって、銀行内では、MUBPの取組に関心を持ち、業務の委託を積極的に進める動きが起きているとのお話でした。
銀行の主要役員が揃って出席する会議で、特例子会社を含めたグループ全体の障害者雇用の現状と課題を確認し、今後の対応方針を決める。その方針が組織の中に浸透して、具体的な動きが始まる。
「親子」関係の、ひとつの理想的なあり方ではないでしょうか。
前述のとおり、MUBPの相模原本社は、エム・ユービジネスパートナーの本社を置くことを前提に建設されたビルに入居しています。当時、同社には、既に多くの車いすユーザーをはじめとする身体障害のある社員が在籍していたことから、このビルは、バリアフリーを徹底した構造となっています。
ビルの中を案内していただいた時、廊下のつくりやトイレの配置、地下に設置された雨でも濡れずに済む駐車場などを拝見して、その10年後に完成したニッセイ・ニュークリエーション株式会社(大阪市)の本社ビルに、どことなく雰囲気が似ているなあと感じました。
小林さんからは、「障がい者の職場としてやるべきことが一緒だから。でもニッセイ・ニュークリエーション株式会社には及びません。」とのお話がありました。
私の知る限り、両社ともに、他社のお手本となる存在ではないかと思います。

ところで、この相模原のビルでこのようなバリアフリー構造を持つのは、地下と1階の部分。MUBPのオフィスは2階と3階にもありますが、これらのフロアは、多くのオフィスビルとあまり変わりのないつくりとなっています。
なぜか? それは、建設当時、特例子会社が入居するのは1階のみと想定していたから。その後の業務拡大と増員に伴い、他のグループ会社と入れ替わる形で、3階まで「進出」したのだそうです。
業務拡大と増員を続ける三菱UFJビジネスパートナーが、親会社とともに策定する方針のもと、今後ますます発展されることをお祈りしております。
*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
今回の訪問は、三菱UFJビジネスパートナー株式会社(神奈川県相模原市)です。
同社社長の小林純さんは、SACECの監事を務めておられ、制度検討委員会の会合で、毎月お目にかかっています。そこで、小林さんに見学をお願いし、2月19日、訪問しました。
当日は、小林さんとともに、岩村忠幸さん(取締役副社長/大阪支社長 兼 業務企画部長)、高橋隆さん(取締役/共生社会推進部長)、増田輝幸さん(人事部長)にご対応いただきました。
《多様な障害種別の社員が在籍》
その前身として、かつて2つの特例子会社が存在。その「エム・ユービジネスエイド株式会社」(1996年~※)と「エム・ユービジネスパートナー株式会社」(2010年~)が合併して誕生したのが、MUBPです(2020年~)。
※設立時の社名は「東海ビジネスエイド株式会社」。
相模原市には、三菱UFJ銀行の事務センターがあります。その隣接地(旧三和銀行所有地)に、エム・ユービジネスパートナーの本社を置くことを前提に、新しいビルを建設(2010年)。合併後もここがMUBPの本社とされ、JR横浜線の相模原駅から徒歩3分と、たいへん利便性の高い場所にあります。
本社のほかに、名古屋支社、大阪支社、東京業務部があるMUBPには、458名の社員が在籍し、障害のある社員は364名。その内訳は、身体障害者225名、知的障害者51名、精神障害者88名と、多様な構成となっています。
《法令に基づき、個人情報を扱う》
MUBPは、銀行関連事務の受託を業務の主軸としており、当日は、
① 公的調査
② 福祉関連調査(生活保護・介護保険関連)
③ 郵便戻り条件設定登録(返送されたDMなどの情報をシステムに登録)
④ 単身赴任者交通費精算
の4つの業務を拝見しました。
いずれも個人情報を取り扱う業務。特に①と②は、法令に基づく自治体や警察などからの照会に対し、照会の対象者が三菱UFJ銀行に口座を開設しているか否かや、必要に応じて出入金の状況などを回答する業務であり、極めて繊細な機微に触れる情報を扱っています。
いただいた資料によれば、MUBPにおいては、①と②の業務で全体の約7割を占め、2023年度における公的調査の処理件数は、約215万件とのこと。
法令に基づいて銀行が対応する義務がある業務を、グループの一社として担う。本業の展開に欠かせない存在です。

《ペーパーレスの流れの中で》
自治体などからは、封書で依頼書類が送付されてくるので、MUBPでは、これを開封する作業から始まります。その後の各段階においても、書類の保管場所を管理することで、作業の進捗状況を確認。最終的には、依頼元に郵送で回答書を送付しています。
このような業務処理は、それぞれの過程において多くの人手を要することとなり、MUBPの要員体制も、これを前提として組まれています。
しかしながら、時代の流れはペーパーレスへ。MUBPが行う公的調査においても、既にデジタル対応が始まっているとのことでした。
この新しい方法で処理する場合、自治体からの依頼や回答がメールによって行われるだけではなく、MUBPにおける処理も、RPAのような形で自動的に行われるとのこと。現時点では、この処理はまだ一部のみとなっているそうですが、これが増えてくると、要員の大幅な削減につながることになるとのお話でした。
MUBPの基幹業務においてこのような動きがあることは、今後のMUBPの運営に大きな影響を及ぼすこととなるものと感じました。
《銀行幹部で構成する委員会を定期的に開催》
この点に関して、三菱UFJ銀行とMUBPの間では、特徴ある取組が行われていました。
それは「障がい者雇用推進委員会」。この委員会は、三菱UFJ銀行のCHRO(Chief Human Resource Officer)を委員長とし、同行の人事部長が事務局長に。委員には、銀行の主要役員が名を連ねるとともに、MUBP社長も委員外出席者として参加しています。
委員会は、年に一度開催しているそうで、本年1月に開催された委員会は、第19回となります。
《現状と課題を確認し、方針を決める》
・法定雇用率の遵守
・採用強化
・業務開発
・グループ会社の連携・支援
このうち、「採用強化」に関しては、まず現状として、
・外部環境の変化(採用市場の過熱など)
・新たな内部課題(銀行の人員計画の見直しなど)
を確認。これを踏まえ、銀行・MUBPそれぞれにおける年間採用数(=分担)が具体的に決定されていました。
また、今後の法定雇用率アップを見通した場合、従来の取り組みでは採用や業務維持が困難であり、銀行のダイバーシティ推進室と抜本的な見直しを検討しているとのことでした。
「業務開発」では、「MUBP業容維持に必要な業務開発」が議論の対象に。
前述のようなMUBPの業務をめぐる動きからすれば、時宜を得たテーマであると思います。
そして、今後の業務開発の方針としては、銀行の事務企画部とMUBPが共同で取り組むことが決められていました。
実は、銀行の事務企画部長とダイバーシティ推進室長も、この会議に委員外出席者として参加しています。
小林さんによれば、「銀行の事務処理全体を統括している事務企画部長が、MUBPへの業務委託のあり方に直接関わっている効果は、非常に大きい」とのこと。委員会の決定に基づき、担当幹部から方針が打ち出されることによって、銀行内では、MUBPの取組に関心を持ち、業務の委託を積極的に進める動きが起きているとのお話でした。
銀行の主要役員が揃って出席する会議で、特例子会社を含めたグループ全体の障害者雇用の現状と課題を確認し、今後の対応方針を決める。その方針が組織の中に浸透して、具体的な動きが始まる。
「親子」関係の、ひとつの理想的なあり方ではないでしょうか。
《徹底したバリアフリーを活かして》
ビルの中を案内していただいた時、廊下のつくりやトイレの配置、地下に設置された雨でも濡れずに済む駐車場などを拝見して、その10年後に完成したニッセイ・ニュークリエーション株式会社(大阪市)の本社ビルに、どことなく雰囲気が似ているなあと感じました。
小林さんからは、「障がい者の職場としてやるべきことが一緒だから。でもニッセイ・ニュークリエーション株式会社には及びません。」とのお話がありました。
私の知る限り、両社ともに、他社のお手本となる存在ではないかと思います。

《地域に開かれた存在として》
なぜか? それは、建設当時、特例子会社が入居するのは1階のみと想定していたから。その後の業務拡大と増員に伴い、他のグループ会社と入れ替わる形で、3階まで「進出」したのだそうです。
業務拡大と増員を続ける三菱UFJビジネスパートナーが、親会社とともに策定する方針のもと、今後ますます発展されることをお祈りしております。
《自社PR》
弊社は、1996年設立以来、29年の歴史の中で、障がいのある方と共に生きがいを感じられる職場作りに取り組んでまいりました。現在は神奈川・東京・名古屋・大阪に拠点を置き、三菱UFJフィナンシャル・グループの一員として、働きがいを感じられる共生社会の実現を目指しています。
社員全員が会社経営に参加し、皆で成長し、誇りを持って働ける会社にしたいと考えています。そのためには社員一人ひとりの多様な価値観を尊重した上で、社員の成長機会の提供と能力発揮できる職場環境が必要です。わたしたちは、そうした職場環境づくりに日々取り組んでいます。
障がいの有無や内容に関わらず、誰もがその能力や適性を十分に活かせる「社員一人ひとりが主役の会社」、三菱UFJビジネスパートナーのこれからにご期待ください。
《会社概要》
社名 | 三菱UFJビジネスパートナー株式会社 |
主な業種 | 銀行関連事務の受託業務 |
従業員数 | 458名 |
うち障害者社員の人数 | 364名 |
障害の内訳 | 身体:225名、知的:51名、精神:88名 |
URL | |
親会社の社名 | 株式会社三菱UFJ銀行 |
主な業種 | 銀行業 |
親会社のHP |
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。

土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 障害者雇用アドバイザー
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
2023年10月、FVP・執行役員に就任。
2025年4月、同社の障害者雇用アドバイザーとなる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。
株式会社FVP 障害者雇用アドバイザー
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
2023年10月、FVP・執行役員に就任。
2025年4月、同社の障害者雇用アドバイザーとなる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。