会社探訪 〜土屋喜久が訪ねた障害者雇用の最前線〜

「さいたま障害者就業サポート研究会」の定例会に参加しました。

埼玉で障害者雇用を進めている方々から、かねてよりお勧めいただいていた「さいたま障害者就業サポート研究会」に、このたび、私も入会させていただき、その総会・定例会に参加いたしました。

《「さいたま障害者就業サポート研究会」とは》

「さいたま障害者就業サポート研究会」は、2003年10月に発足。その会則には、「障害者を雇用する事業所、障害者の就業に関わる関係者が連携しながら、障害者雇用に関わる様々な事項について研究活動を行うことにより、障害者の就業をサポートすることを目的とする。」と定められています。
研究会には、上記の目的のもとに、行政、支援機関、教育機関、福祉施設、保護者会、障害者本人、企業など、多様な団体・個人が会員として集結。現在の会員数は、団体会員13、個人会員23人となっています。
年4回開催されている定例会(うち1回は企業見学会)では、障害者雇用を取り巻く幅広いテーマが用意され、これまで、厚生労働省や経団連(日本経済団体連合会)の担当者だけではなく、弁護士、医師なども講師として登壇しました。
研究会には、発足当初から朝日雅也・埼玉県立大学教授(現・名誉教授)が深く関わり、現在も研究会の代表をお務めになっています。

《今回の定例会は、除外率の引下げをテーマに》

この日の総会・定例会の参加者は、59名。いつもと違う会場という事情もあって、参加者は少なめだったそうですが、あちこちで参加者が親しく挨拶を交わす会場の様子からは、埼玉の関係者の交流の深さが感じられました。朝日先生もご参加で、久しぶりにお目にかかることができました。


総会に続いて開催された定例会では、講師による講演が行われました。
この日の講師は、「医療機関の障害者雇用ネットワーク」代表の依田晶男さん。テーマは、「除外率引き下げにどう向き合うか ~医療業と教育業を中心に~」です。依田さんは、私にとって行政の先輩でもあります。
依田さんのお話は体系的でわかりやすく、「医療機関における障害者雇用を働きかけるポイント」として次の4点を掲げて、病院における具体的な事例も、詳しく紹介がありました。
・医療機関の関心事を掴む(響く言葉を探る)
・専門職〈筆者補注:医師・看護師など〉のためになることを伝える(自分事にする)
・障害者が戦力になっている事例を紹介(イメージ)
・同じ専門職〈医師・看護師など〉からのメッセージを伝える(腹落ち)
講演を拝聴して、医療機関というやや独特な職場のお話ではあったものの、少し置き換えて考えれば、これらは、どの職場においても通用する攻略ポイントではないだろうかと感じました。会場の皆さんも、同じようにお感じになったのではないでしょうか。

1時間以上にわたる熱のこもった講演のあとは、朝日先生と依田さんがやり取りするトークの時間。朝日先生のポイントをつく投げかけによって、障害者雇用をめぐる課題が一層掘り下げられ、わかりやすくなったと感じました。
定例会は、私にとってたいへんいい勉強の機会となり、あらためて取組を進める視点をいただいた、充実した時間となりました。


《熱気あふれる懇親会》

18時からの総会・定例会が終了したのは、20時を少し過ぎた頃。この研究会がさらにすごいのは、このあと近くのお店に場所を変えて、懇親会があることです。
参加者は30名ほど。この時間から始める「情熱」というだけでなく、どのテーブルでも、現場の課題や取組を活発に語り合う姿があり、熱気にあふれています。22時を超えて、締めの挨拶があっても、なおまだ語り続ける人たちもいました。

今回参加して、あらためて、埼玉の障害者雇用をめぐるネットワークの素晴らしさを実感しました。
研究会がこれからも埼玉における推進力であり続けることを期待しつつ、私も会員として積極的に参加し、勉強を続けたいと思います。


*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)

株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長

1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。