一般財団法人啓成会
皆さん、こんにちは。
今回の訪問は、一般財団法人啓成会です。
啓成会は、義肢装具の製作や、製作者を育成する職業訓練を行っている法人で、同会の石坂進理事長は、行政の先輩でもあります。8月24日、JR大塚駅に近い同会を訪問し、石坂さんと中島由博さん(義肢装具士・職業訓練指導員)にご対応いただきました。
啓成会は、1924年、財団法人同潤会が政府から資金の交付を受けて、同潤啓成社を設置したのが始まりとのこと。同社は、その前年に起きた関東大震災の罹災者に対して、洋裁・洋服などの職業講習を行うとともに、義肢の研究製作事業を開始しました。
その後、財団法人として独立し、戦傷者向けにも事業を行うなどの変遷を経て、戦後に引き継がれ、1947年から、労働省委託施設として同様の事業を行うことに。
現在は、一般財団法人啓成会として、義肢装具の製作・修理や研究の事業、製作技能者の育成事業などを行っています。
義肢装具の世界をまったく知らなかった私は、今回の訪問でイチから勉強することができました。「そんなことを今頃知ったのか」という方は、読み飛ばしていただければ、幸いです。
啓成会のホームページによれば、
・「義肢」とは、「病気・怪我などで、手や足など身体の一部分を失った方が、その機能を補うために使用する義手や義足などのこと」
・「装具」とは、「病気・怪我・障害などにより、身体の機能が低下したり、失われたりした方が、その機能を補うためなどに使用するもの」で、「治療・リハビリ・日常生活の補助に使用するものや、予防や矯正を目的とするものもあり、使用する身体の部位・装具の形状も様々です。」
と説明されています。
義肢も装具も、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度の対象となるとともに、健康保険や労災保険(労働者災害補償保険)などの対象にもなっています。
啓成会では、年間約1,100件の義肢・装具を製作しているとのことで、そのうち装具が約8割を占めるとのことでした。
義肢の製作にはひと月程度を要し、耐用年数は3年ほどとのこと。一方、治療用の装具については、製作に迅速さが求められ、多くは受注から数日で納品するそうです。
作業場を案内していただき、靴のような形をした装具を分解して修理する作業も拝見して、義肢も装具も、様々な形や工夫があることを知りました。どの部分を失ったか、どの機能を補うのか、それによって作られる形状が違い、機能を重視することはもちろん、見た目に心を配る場合もあるようです。神経も使う細かい手作業で、失われた部分を補うというだけではなく、使う人の気持ちにも寄り添って、作業が進められていると感じました。
義肢装具の製作に携わる人たちには、「義肢装具士」と「義肢・装具製作技能士」がいます。
「義肢装具士」は国家資格であり、義肢装具士法に「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」と定められています。
一方、義肢・装具製作は、職業能力開発促進法に基づく技能検定制度の種目の一つとなっていて、検定に合格した者は「技能士」を名乗ることができます。
義肢装具士である中島さんのお話では、病院などで患者の身体に触れながら採型などを行うのは、義肢装具士の業務である一方、製作の現場には技能士が持つ技術・技能が欠かせないとのことで、両者が相まって義肢装具の製作を担っているとのことでした。
啓成会では、東京都からの委託を受けて、製作技術・技能の習得のための職業訓練(1年間)を実施しており、今期は16名が受講しているとのこと(定員20名)。訓練を修了すると、技能検定2級の受験資格を得ることができます。
ちなみに、「義肢」は、全国アビリンピック(全国障害者技能競技大会)の競技種目にもなっています。
啓成会の作業場の棚には、発泡プラスチックをはじめとする、様々な素材が保管されています。見学した修理中の装具には、本革が使われていました。啓成会のホームページには、「装具の仕上げはご希望の色、デザインで・・・ 使用する革・プラスチック・糸は豊富なカラーバリエーションをそろえています」とあります。
製作の依頼の多くは、病院などとの日常的な関係の中で行われているとのことですが、品質への信頼感から、個別の依頼を受けることもあるそうです。都内には、同業者が40社ほどあり、競争もあるとのこと。一方で、全国的にみると、東京に集中しているという側面もあるそうです。
今年は、関東大震災から100年。啓成会も、来年(2024年)、100周年を迎えます。
伝統ある啓成会が、これからも変わることなく、図らずも身体に障害を持つこととなった方々への力となって、社会に貢献し続けることを、心よりお祈りしたいと思います。
*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
今回の訪問は、一般財団法人啓成会です。
啓成会は、義肢装具の製作や、製作者を育成する職業訓練を行っている法人で、同会の石坂進理事長は、行政の先輩でもあります。8月24日、JR大塚駅に近い同会を訪問し、石坂さんと中島由博さん(義肢装具士・職業訓練指導員)にご対応いただきました。
《関東大震災への対応に始まる長い歴史が》
その後、財団法人として独立し、戦傷者向けにも事業を行うなどの変遷を経て、戦後に引き継がれ、1947年から、労働省委託施設として同様の事業を行うことに。
現在は、一般財団法人啓成会として、義肢装具の製作・修理や研究の事業、製作技能者の育成事業などを行っています。
《装具を中心に、細かい手作業で》
啓成会のホームページによれば、
・「義肢」とは、「病気・怪我などで、手や足など身体の一部分を失った方が、その機能を補うために使用する義手や義足などのこと」
・「装具」とは、「病気・怪我・障害などにより、身体の機能が低下したり、失われたりした方が、その機能を補うためなどに使用するもの」で、「治療・リハビリ・日常生活の補助に使用するものや、予防や矯正を目的とするものもあり、使用する身体の部位・装具の形状も様々です。」
と説明されています。
義肢も装具も、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度の対象となるとともに、健康保険や労災保険(労働者災害補償保険)などの対象にもなっています。
啓成会では、年間約1,100件の義肢・装具を製作しているとのことで、そのうち装具が約8割を占めるとのことでした。
義肢の製作にはひと月程度を要し、耐用年数は3年ほどとのこと。一方、治療用の装具については、製作に迅速さが求められ、多くは受注から数日で納品するそうです。
作業場を案内していただき、靴のような形をした装具を分解して修理する作業も拝見して、義肢も装具も、様々な形や工夫があることを知りました。どの部分を失ったか、どの機能を補うのか、それによって作られる形状が違い、機能を重視することはもちろん、見た目に心を配る場合もあるようです。神経も使う細かい手作業で、失われた部分を補うというだけではなく、使う人の気持ちにも寄り添って、作業が進められていると感じました。
《義肢装具の製作を支えているのは》
「義肢装具士」は国家資格であり、義肢装具士法に「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」と定められています。
一方、義肢・装具製作は、職業能力開発促進法に基づく技能検定制度の種目の一つとなっていて、検定に合格した者は「技能士」を名乗ることができます。
義肢装具士である中島さんのお話では、病院などで患者の身体に触れながら採型などを行うのは、義肢装具士の業務である一方、製作の現場には技能士が持つ技術・技能が欠かせないとのことで、両者が相まって義肢装具の製作を担っているとのことでした。
啓成会では、東京都からの委託を受けて、製作技術・技能の習得のための職業訓練(1年間)を実施しており、今期は16名が受講しているとのこと(定員20名)。訓練を修了すると、技能検定2級の受験資格を得ることができます。
ちなみに、「義肢」は、全国アビリンピック(全国障害者技能競技大会)の競技種目にもなっています。
《ご希望の色、デザインで》
製作の依頼の多くは、病院などとの日常的な関係の中で行われているとのことですが、品質への信頼感から、個別の依頼を受けることもあるそうです。都内には、同業者が40社ほどあり、競争もあるとのこと。一方で、全国的にみると、東京に集中しているという側面もあるそうです。
今年は、関東大震災から100年。啓成会も、来年(2024年)、100周年を迎えます。
伝統ある啓成会が、これからも変わることなく、図らずも身体に障害を持つこととなった方々への力となって、社会に貢献し続けることを、心よりお祈りしたいと思います。
《会社概要》
社名 | 一般財団法人 啓成会 |
主な業種 | 職業訓練事業・義肢装具製作事業 |
従業員数 | 12名 |
うち障害者社員の人数 | 0名 |
URL |
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。