会社探訪 〜土屋喜久が訪ねた障害者雇用の最前線〜

トヨタループス株式会社(東京事業所)

皆さん、こんにちは。
今回の訪問は、トヨタループス株式会社の東京事業所です。

2022年12月の本社(愛知県豊田市)への訪問に続き、有村秀一社長が上京された機会にあわせて、4月7日、トヨタ自動車株式会社・東京本社と同じビルにある東京事業所(東京都文京区)を訪問しました。

当日は、有村さんと中山明男所長にご対応いただきました。


《社内便業務では、東京地区のハブとして機能》

トヨタループスの東京事業所は、2014年に開設。総勢32名、うち障害を持つ社員は27名で、都内に3か所の拠点を持っています。

主力業務のひとつは、社内便の集配達業務。

18名の社員を配置し、愛知地区を集約している本社との間で社内便の授受を行うとともに、都内にあるトヨタ自動車の各拠点を結んで配達・収集を実施。東京地区におけるハブとして機能しています。

地下2階の車寄せに直結している作業室には、仕分け棚がずらりと並び、本社で拝見した作業室のミニ版とも言える光景でした。


社内便・郵便物の仕分け業務


各拠点への集配は、コロナ以降の状況の変化の中で、減便を余儀なくされたとはいえ、毎日定期的に7コースで計9便が運行されているとのこと。

同社が特定信書便事業と貨物自動車運送事業の許可を取得していることは、ここでも、安定した業務運営に強みを発揮していると感じました。


《職務の切り出しで、効率を追求》

東京事業所における業務は多彩で、特に印象に強く残ったのは、職務の切り出しの巧みさと明確な方針です。

例えば、トヨタ自動車の社員向けの事務用品のレンタル業務。会議室などで使用する大画面のモニターから、細々とした備品類まで、様々なものを貸し出しています。

ポイントは、社内システムから簡便に発注できるようにし、貸出品は使用する現場までトヨタループスの社員が届けること。

この業務は、外部委託を内製化したものとのことですが、トヨタループスによる集中管理とサービスの提供で、発注する側の負担を減らし、効率性や機動性を実現していると感じました。

また、不要となった物品の回収・リサイクルの業務。

働き方の変化やペーパーレスの進展などから、様々な物品が不要となるこの頃ですが、この業務では、社員が分別などに悩むことのないよう、「何でもそのまま持ってきてください」を基本としています。

持ち込まれた不要品は、再利用できないか判断し、捨てるしかないものは分別して廃棄処分へ。

ここでも、利用する側の負担の軽減を意識して業務が組み立てられ、また、資源の有効活用という社会課題への対応も織り込まれています。


リサイクル回収・配達の業務


このように、どの職場でも誰かがひと手間かけて処理している(しなければならない)仕事を集約して業務を立ち上げ、かつ、業務の運営にも工夫を凝らして、社員の利便性と全体の効率を追求する姿勢は、職務の切り出しの模範となるものと感じました。


ところで、ストックされていた不要品の中には、ちょっと懐かしい「既決」「未決」と墨書された立派な木箱もありました。「特別支援学校や就労移行支援事業で、模擬職場の訓練に使えないかな?」なんて思いました。


《コロナ以降の変化の中で》

広報などの本社機能を担うトヨタ自動車・東京本社では、コロナ以降の働き方の変化の中で、社員のほとんどが今でも在宅勤務をしているとのこと。前述のように、トヨタループスの社内便業務もその影響を強く受けており、マッサージ業務も利用が大きく減ってしまったそうです。

一方で、そういう事情に即して新たに始めたのが、郵送されてきた請求書をPDF化する業務(2021年~)。紙で送られてきた書類を、在宅勤務をしている経理担当の社員にすみやかに届けるため、PDF化してデータ送信する業務です。


PDF化する業務


また、在宅勤務とペーパーレスでコピー機の使用頻度が少なくなったことに着目し、各部署のひと手間を縮減すべく、巡回して用紙を補充したり、トナーを交換する業務も開始しています(2022年~)。


コピー用紙の配達・補充業務


これらの業務は、トヨタ自動車から一括して受託しているとのこと。ここでも、仕事を集約(集中化)して全体の効率を追求する姿勢が明確です。


数年後にはトヨタ自動車・東京本社の品川への移転も予定されている中で、これを見通した検討も始まっているようです。

状況の変化に機敏かつ柔軟に対応して発展するトヨタループスを、楽しみに見守りたいと思います。


《自社PR》

トヨタループス株式会社の東京事業所として10年目を迎えました。
当初は10名でスタートし、日本橋・大手町に分室を配置(2024年1月現在)。
業務内容は、親会社からの業務委託(印刷・メール便・清掃業務等)に加え、環境の変化の中、東京地区事務オフィスでの様々な業務を切り出し、親会社と連携しながら、障がい者「でも」出来る仕事から、障がい者「だから」出来る仕事を親会社とともに目指し、社員の成長と働きやすい職場づくりをトヨタループス全拠点と連携しながら目指しています。

《会社概要》

*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)

株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 顧問

1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。