株式会社エフピコ エフピコダックス株式会社・エフピコ愛パック株式会社(広島県福山市)
皆さん、こんにちは。
今回の訪問記は、株式会社エフピコです。
同社は、障害者雇用に大きな実績を持ち、同社の西村公子常務取締役は、私にとって行政の先輩であり、ともに障害者雇用施策に取り組んできた仲間です。
西村常務にアレンジをお願いし、7月28日、同社の創業の地であり、本社がある広島県福山市を訪ねました。
エフピコは、我々の日常生活でもなじみの深い、食品トレーのトップメーカー。国内で約4割のシェアを占めているそうです。
そして、その製品のうちの約3割は、使用済みのトレーを回収してリサイクルした「エコトレー」とのこと。
これを可能にしているのは、エフピコが全国各地に展開しているトレーの製造及びリサイクルの拠点と、そこから各地に張り巡らされている独自の物流網。
スーパーでよく見かけるトレーの回収ボックスは、エフピコがスーパーと連携して設置しているとのことで、製品を配達した自社のトラックが、その帰りに(他社製品の使用済みを含めて)回収して持ち帰る流れが確立されています。
エフピコグループには、特例子会社の「エフピコダックス株式会社」、就労継続支援A型事業所の「エフピコ愛パック株式会社」の2社があり、エフピコの各拠点に併設された事業所で知的障害者を中心に雇用を進めていて、グループ全体の実雇用率は12.6%(2022年3月現在)となっています。
今回の福山訪問では、回収した使用済みトレーの選別を行う工場と、弁当などに使われる折り箱を製造する工場の2箇所を見学させていただきました。
現地では、西村さんとエフピコダックスの岩井久美社長、エフピコ愛パックの且田久雄社長にご案内いただきました。
選別の工場には、発泡性の白色トレーを選別するラインと、透明な容器を扱うラインの2系統がありました。
回収されたトレーが次々と流れるコンベアに、数名の障害を持つ社員が配置され、素材や色の有無、汚れなどを見分けてラインから外すものを瞬時にはじき、リサイクルに適したものに絞る作業をしています。外したものも、その場で同時にいくつかの分類に仕分け、その多くはそれぞれ別のリサイクル工程に回るそうです。
立ったままの作業で、休憩・休息はお昼と午前・午後に1回ずつ。皆さんたいへん手際よく的確に処理していますが、習熟を要し、体力と根気が必要な作業と感じました。
先般の労働基準法改正による年次有給休暇の義務的付与(5日分)への対応に際しては、「なんで休まなくてはいけないのか?」との声があがって、説得(?)に苦労したとのことでした。
また、透明容器のラインには、試行的にAIを活用した選別ロボットが導入されていましたが、「社員のほうが正確だし、断然早い人が多い」そうで、研究開発中とのことです。
折り箱作りの現場では、愛パックの社員が関係会社の健常者の社員と一緒に、ほぼ同じ作業をしています。
また、選別工場では、透明容器の選別ラインはダックスの社員が、発泡容器の選別ラインは主に愛パックの社員が作業をしていました。
厚生労働省OBの私としては、「ダックスと愛パックの違いは?」「A型なのだから、より障害の重たい人が・・・」と聞いてしまったのですが、皆さんからは「それは机上のお話」という声が一斉に。
A型といっても、愛パックはフルタイム勤務で、それを希望する人を採用しているとのこと。
6月にまとめられた社会保障審議会と労働政策審議会の意見書では、A型事業所の在り方をめぐる議論は引き続きの検討に委ねられています。
一般就労が難しい障害者に就労や訓練の機会を確保するというA型の理念がある中で、短時間雇用や軽作業なども多くみられる一方、特例と変わらない働き方があるという面もあり、様々な視点から議論を深めていく必要があると感じました。
工場を見学したあと、福山市内に設置されたグループホーム「ホーム・COパール」と地域活動支援センター「HARUKURU」も見せていただきました。
エフピコが土地を提供し、同社の独身寮の隣に建てた地域密着の施設で、ダックス・愛パックの社員も入居しているそうです。
エフピコは「大家」という立場ですが、岩井さんのお話を聞くと、その運営に強い関心を持って関わっていることがわかります。地域との関係も良好とのことで、雇用から派生する課題にも取り組む様子に、次なる展開を意識したエフピコの姿勢を見ることができました。
家で使用済みの食品トレーを見るクセがつきました。
確かにエフピコのマークが入った製品が多く、なかにはエコマーク付きの「エコトレー」も。
皆さん、食品トレーはきれいに洗って、回収ボックスに戻しましょう!
*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
今回の訪問記は、株式会社エフピコです。
同社は、障害者雇用に大きな実績を持ち、同社の西村公子常務取締役は、私にとって行政の先輩であり、ともに障害者雇用施策に取り組んできた仲間です。
西村常務にアレンジをお願いし、7月28日、同社の創業の地であり、本社がある広島県福山市を訪ねました。
食品トレーをしっかりリサイクル
そして、その製品のうちの約3割は、使用済みのトレーを回収してリサイクルした「エコトレー」とのこと。
これを可能にしているのは、エフピコが全国各地に展開しているトレーの製造及びリサイクルの拠点と、そこから各地に張り巡らされている独自の物流網。
スーパーでよく見かけるトレーの回収ボックスは、エフピコがスーパーと連携して設置しているとのことで、製品を配達した自社のトラックが、その帰りに(他社製品の使用済みを含めて)回収して持ち帰る流れが確立されています。
特例とA型の2タイプで、雇用を推進
今回の福山訪問では、回収した使用済みトレーの選別を行う工場と、弁当などに使われる折り箱を製造する工場の2箇所を見学させていただきました。
現地では、西村さんとエフピコダックスの岩井久美社長、エフピコ愛パックの且田久雄社長にご案内いただきました。
営業の現場に直結した業務を担う
回収されたトレーが次々と流れるコンベアに、数名の障害を持つ社員が配置され、素材や色の有無、汚れなどを見分けてラインから外すものを瞬時にはじき、リサイクルに適したものに絞る作業をしています。外したものも、その場で同時にいくつかの分類に仕分け、その多くはそれぞれ別のリサイクル工程に回るそうです。
立ったままの作業で、休憩・休息はお昼と午前・午後に1回ずつ。皆さんたいへん手際よく的確に処理していますが、習熟を要し、体力と根気が必要な作業と感じました。
作業から感じられる「迫力」に「これはたいへんそうだ」と思っていると、岩井さんからは「社員はみんな、ここで働くのを楽しみにしている」とのお話。
先般の労働基準法改正による年次有給休暇の義務的付与(5日分)への対応に際しては、「なんで休まなくてはいけないのか?」との声があがって、説得(?)に苦労したとのことでした。
また、透明容器のラインには、試行的にAIを活用した選別ロボットが導入されていましたが、「社員のほうが正確だし、断然早い人が多い」そうで、研究開発中とのことです。
特例もA型も、大きな違いはない
また、選別工場では、透明容器の選別ラインはダックスの社員が、発泡容器の選別ラインは主に愛パックの社員が作業をしていました。
厚生労働省OBの私としては、「ダックスと愛パックの違いは?」「A型なのだから、より障害の重たい人が・・・」と聞いてしまったのですが、皆さんからは「それは机上のお話」という声が一斉に。
A型といっても、愛パックはフルタイム勤務で、それを希望する人を採用しているとのこと。
6月にまとめられた社会保障審議会と労働政策審議会の意見書では、A型事業所の在り方をめぐる議論は引き続きの検討に委ねられています。
一般就労が難しい障害者に就労や訓練の機会を確保するというA型の理念がある中で、短時間雇用や軽作業なども多くみられる一方、特例と変わらない働き方があるという面もあり、様々な視点から議論を深めていく必要があると感じました。
地域に密着した生活支援も展開
エフピコが土地を提供し、同社の独身寮の隣に建てた地域密着の施設で、ダックス・愛パックの社員も入居しているそうです。
エフピコは「大家」という立場ですが、岩井さんのお話を聞くと、その運営に強い関心を持って関わっていることがわかります。地域との関係も良好とのことで、雇用から派生する課題にも取り組む様子に、次なる展開を意識したエフピコの姿勢を見ることができました。
おわりに一言
確かにエフピコのマークが入った製品が多く、なかにはエコマーク付きの「エコトレー」も。
皆さん、食品トレーはきれいに洗って、回収ボックスに戻しましょう!
《自社PR》
エフピコグループは、食品トレー・容器のリーディングカンパニーとして、「もっとも高品質で環境に配慮した製品を」「どこよりも競争力のある価格で」「必要な時に確実にお届けする」するというグループ運営に係る3本柱の下、豊かな食生活の創造と地上資源の循環による持続可能な社会の構築を目指しています。
当グループにおいて障がいのある人材は、製品の組立製造、使用済食品トレー・容器の選別という基幹業務において、必要不可欠な人材として活躍しています。
《会社概要》
社名 | 株式会社エフピコ |
主な業種 | 食品容器メーカー |
従業員数 | 4,876名 |
うち障害者社員の人数 | 365名 |
障害の内訳 | 身体:34名、知的:321名、精神:10人 |
URL |
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 顧問
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。