会社探訪 〜土屋喜久が訪ねた障害者雇用の最前線〜

ヘラルボニーギャラリー

6月下旬に岩手県を旅行しました。JR東日本の会員制組織「大人の休日倶楽部」で、4日間全線乗り放題の「大人の休日倶楽部パス」が発売されたからです。

訪ねたのは、盛岡市と宮古市。盛岡市では、この機会にぜひと思い、6月28日、「ヘラルボニーギャラリー」を見学させていただきました。


《ヘラルボニーとは?》

株式会社ヘラルボニーは、2018年に設立。盛岡市に本社を置く「福祉実験ユニット」です。ホームページの「About Us」には、次のように書かれています。

“知的障害のある人が「できない」ことを「できる」ようにするのではなく、「できない」という前提を認め合う。社会のために彼らを順応させるのではなく、彼らの個性のために社会が順応していく。株式会社ヘラルボニーは、そんな社会を夢みて “異彩を、放つ” 福祉実験ユニットです。”

名前の由来や設立に至る経緯、展開している事業については、こちらをご覧ください。
https://www.heralbony.jp/about 


《「HERALBONY BLUE展」を観て》

ギャラリーでは、「HERALBONY BLUE展」を開催中。コンパクトな会場に、ヘラルボニーの歩み・考え・思いが凝縮されていました。

展示品の中には、創立当初、紳士洋品の老舗「銀座田屋」と提携して制作したネクタイが。田屋の工房で織られたこのネクタイ以来ずっと、商品の企画に当たっては、作品(原画)が持つ色合いを大切にし、使う素材や製造方法にこだわっているとのこと。この考えを提携先とどのように共有するか、交渉に力を尽くしていると教えていただきました。

また、作品のどの部分をデザインとして使い、商品に仕上げるかを考える際には、作家が作品にこめた思いを第一に尊重し、会社は作家に伴走する立場であるとのこと。時間をかけてコミュニケーションを尽くし、作家にとって納得のいくものに作り上げていくご苦労についても、お話がありました。

こうした姿勢を貫きつつもなお、ビジネスとして成立させているのは、素晴らしいことです。

そして、展示を説明していただいた社員の方も、我々のあとに訪ねてきた来場者も、みんな若い人たち。このような会社や事業に、若い皆さんが集う。頼もしい限りです。


《盛岡の街のあちこちに》

ギャラリーを見学した後、地元百貨店の1階にある「HERALBONY カワトク店」に立ち寄り、記念の小品を買うことができました。

また、盛岡を代表する重要文化財「岩手銀行赤レンガ館」では、偶然にも、るんびにい美術館(*)の開館15周年を記念した「ルンビニーアート展」を開催中。ヘラルボニーで使われたデザインの原画のいくつかも、観ることができました。
*社会福祉法人光林会が、花巻市に開設している美術館。
https://www.kourinkai.net/museum-lumbi/

そして、この日宿泊したのは、「ホテルマザリウム」(まざり、うむ)。ヘラルボニーがアートプロデュースを手掛けるこの新しいホテルでは、各部屋に作家の皆さんの作品が飾られています。
盛岡で、とても充実した一日を過ごすことができました。


*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)

株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長

1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。