オリンパスサポートメイト株式会社
皆さん、こんにちは。
今回の訪問は、オリンパスサポートメイト株式会社です。
同社の龍田久美社長は、SACECの理事を務めておられ、これまでも総会などの場でお目にかかる機会がありました。そこで、龍田さんに見学をお願いし、9月29日、JR北八王子駅近くの同社を訪問。八王子市内の2つの拠点をご案内いただき、龍田さん、事業部長の仁科進さん、参与の渡辺修也さんに、ご対応いただきました。
また、今回の見学は、同じ多摩地区の特例子会社であるSOMPOチャレンジド株式会社の中川崇生社長にお声がけし、一緒に訪問しました。
オリンパスサポートメイト(OSM)は、2009年、オリンパス株式会社を親会社として設立。長野オリンパス株式会社、青森オリンパス株式会社など、グループ7社とともに、グループ適用の認定を受けています。
オリンパスグループの障害者雇用は、親会社を含むグループ会社における雇用と、特例子会社における雇用の「両輪」で進めるとの考え方の下、OSMでは、知的障害者を中心に「チーム員」の雇用を進め、現在では130名のチーム員が活躍しています。
OSMの本社は、オリンパスの技術開発センターの一角にあります。同センターは、オリンパスグループの最先端を行く研究開発拠点。OSMは、広い敷地を持つこのセンターの中で、建物内の清掃やメール業務を一手に引き受けています。
会社の概要についてご説明いただいたあと、さっそくチーム員が働く現場を見せていただきました。
清掃の作業は、二人一組で行い、日々の時間帯ごとに担当場所が決められています。社員食堂やラウンジも、トイレも玄関ロビーも、建物全体が仕事場です。
近年は、共用スペースだけでなく、オリンパス社員が働いている執務スペースにも入って、清掃を行っているとのこと。働き方改革の一環でフリーアドレスが一般的になったことや、コロナ禍で在宅勤務が進んだこと(現在の出社率は3割程度とのこと)などから、執務スペースでも、個人個人が自分のデスクの回りを日々整えるということが少なくなったことが、その背景にあるそうです。
龍田さんにご案内いただいて、広い建物の中を歩いていくと、そこかしこで、お揃いの青いポロシャツ姿のチーム員を見かけました。執務スペースを掃除する時には、仕事に集中している社員を気遣い、必要な時には「ちょっとお願いします」と声もかけながら、掃除を行っているとのこと。チーム員の皆さんの仕事が、このように社員の目に触れる形で、日々、自然に行われているのは、とてもいいことだと感じました。
次に見学したのは、メール室。技術開発センターのすべての郵便・荷物・社内便について、受取・発送の業務を行っています。
特徴的だったのは、グローバル企業であるがゆえの国際便の取扱。例えば、送出先の国にあわせて業者(UBS、フェデックスなど)を選び、レターパックや荷物を発出することもあれば、英語表記の宛名で届いた郵便物を仕分けをし、社内の該当部署に配達する。これらの作業が日常的にあり、現に私たちが見学している最中にも、海外向けの発送作業が行われていました。
もうひとつの特徴は、大きな荷物、しかも精密機器の発送を扱っていること。技術開発センターは、オリンパスの主力製品である内視鏡の量産拠点ではありませんが、研究開発拠点として完成品を発送することは、日常的にあるそうで、これもメール室で対応しています。「このカートと同じくらいなんですよ」と梱包の大きさを教えていただき、中身が内視鏡のユニットであることを考えると、慎重を要する難しい仕事だなと実感しました。
続いて見学したのは、チェアクリーニングです。
この業務は3年前に導入したもので、他社の取組を参考にして、コロナ禍の前から取り組んできたとのこと。結果として、コロナ禍後の就業環境整備の動きにマッチするとともに、以前は廃棄していた執務室や会議室の椅子を再利用することが可能に。そして、なにより、椅子を使う社員から、その座り心地(蘇りぶり)が大好評とのことですので、一石二鳥に止まらない成果です。
技術開発センターの中だけでも、執務スペースや会議室などで膨大な数の椅子が使われていますので、OSMでは、3年ですべての椅子のクリーニングが一巡できるよう、計画的に取り組んでいるとのことでした。
設立から14年が経過した今、OSMでは、2023年度を初年度とする中期経営計画において、「人づくり」を三本柱のひとつに掲げ、「OSMの中でキャリアを描ける、スキルアップを図れる環境」を整備するとしています。
具体的には、OSMが各拠点で取り組んでいる職域に沿って、その職域の中で、また、それらの職域の位置づけを階層化して、ステップアップやモチベーションの向上を図る取組を展開しています。
そのひとつが「業務検定」。通常の目標設定と評価の仕組みとは別に、例えば、八王子の拠点では、年1回、清掃のスキルを測定する検定を行っています。この検定では、初級から上級まで6つのレベルを設定。検定の時期が近づいてくると、チーム員の皆さんは、目指すレベルを決めて頑張りを見せるとのことです。
そして、メール室とチェアクリーニングの業務は、清掃業務の検定で「上級」と認定されたチーム員のみが就くことができるとのこと。さらに、チェアクリーニングでは、スキルアップのステップを明示。その最上位には、国家資格であるクリーニング師の資格取得が掲げられていました。
職域が限られている中でも、ステップアップの道筋を明確にすることによって、チーム員のモチベーションを引き出し、活躍を促すことができていると感じました。
さらに、興味深く感じられたのは、「チャレンジアップ」の取組です。検定もクリアし、さらに意欲のあるチーム員が、リーダーシップを発揮したいコースを選択してチャレンジする取組で、2022年度から開始されました。
コースは、「チームサポート」「作業サポート」「コミュニケーションサポート」「オフィスサポート」の4つ。自分はどれが向いているか、自ら判断してエントリーし、会社の中でその役割を果たす。「自分はこれが不得意なので、トライしてみる」と言って、あえてそのコースを選ぶチーム員もいるそうです。
自らを振り返りながら、新しい可能性も発見する。この取組は、チーム員の意向を把握しつつ、指導員の中で議論して創り出したものとのこと。今後の成果が楽しみです。
OSMは、本社がある八王子市のほかに、東日本の各地に6つの拠点(事業グループ)を展開しています。いずれも、オリンパスのグループ各社の製造拠点に併設されたもの。長野事業グループは、チーム員が24名と一定の規模があるものの、他の事業グループは、5~8名と小規模です。
このような小規模でも、各地に拠点を設けたのはなぜか。
理由のひとつは、オリンパスの実雇用率がまだ低調だった時に、とにかく雇用数を確保する観点から、各拠点における雇用も半ば強制的に進めることにしたため。さらに、各社もグループ適用を受けるのだから、その拠点においても、しっかりと障害者雇用を進めることが大切と考えたから、とのお話がありました。
実際にチーム員を採用するに際しては、地元の特別支援学校から「そちらで働けそうな生徒は、まだいませんよ」と言われて、並々ならぬ苦労をした地域があったとのこと。一方で、既に障害者の雇用が進んでいて、地元の会社との競合に苦労した地域もあったそうです。
特例子会社が500社を超える状況となった現在、その立地は大都市圏に偏っているのが実情です。このような偏在は、地方における障害者の雇用機会の少なさにもつながっている面があると感じます。法定雇用率2.7%という時代を迎え、全国の各地に拠点を擁する企業(企業グループ)では、地域的な広がりも意識して障害者雇用を進めることが、重要ではないでしょうか。その際に、OSMの取組はよい参考例となると思います。
今回の訪問では、龍田さんにご配慮をいただき、「オリンパスミュージアム」も見学させていただきました。「身体の中を何らかの器具を使ってのぞいてみる」ことの起源は、古代ギリシャ・ローマの時代に遡るという展示に驚くとともに、戦後、東京大学の医師から依頼を受けて、開発に取り組んだ経緯や、内視鏡の細い管とその先端に込められた技術の進展を学び、内視鏡の模擬操作も体験させていただきました。OSMのチーム員の皆さんも、このミュージアムを見学し、自社グループの歴史を学んでいるそうです。
ミュージアムをご案内いただき、龍田さんがエンジニアのご出身であることを知りました。龍田さんは、OSMでは初めての同社専任の社長とのこと。そのリーダーシップは、社員の信頼も得て、様々な新しい試みの実現につながっていると拝察いたしました。
オリンパスサポートメイトが、社員とのコミュニケーションを一層深めつつ、その目指す姿として掲げる「医療事業に貢献する誇りをもって」「ずっとここで働きたいと思える会社」の実現に向かって、今後も新しいチャレンジを続けることを、ご期待申し上げたいと思います。
OSMさんは、雇用する障がい者が130名と当社とほぼ同じということもあり、当社と比べながら視察させていただきました。
最も驚いたのが、チーム員以外の従業員の皆さんの少なさです。指導員の方が忙しい中、ご自身の業務以外にも、会社施策に積極的にかかわっておられたことがとても印象に残りました。
会社主催のイベントもたくさん企画されており、チーム員の皆さんのモチベーション向上に繋がっているように感じました。
龍田社長のお考えに強く共感することが数多くありましたので、視察を機に、今後も交流をお願いさせていただきました。
*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
今回の訪問は、オリンパスサポートメイト株式会社です。
同社の龍田久美社長は、SACECの理事を務めておられ、これまでも総会などの場でお目にかかる機会がありました。そこで、龍田さんに見学をお願いし、9月29日、JR北八王子駅近くの同社を訪問。八王子市内の2つの拠点をご案内いただき、龍田さん、事業部長の仁科進さん、参与の渡辺修也さんに、ご対応いただきました。
また、今回の見学は、同じ多摩地区の特例子会社であるSOMPOチャレンジド株式会社の中川崇生社長にお声がけし、一緒に訪問しました。
《障害者雇用は、グループ各社・特例子会社の「両輪」で》
オリンパスグループの障害者雇用は、親会社を含むグループ会社における雇用と、特例子会社における雇用の「両輪」で進めるとの考え方の下、OSMでは、知的障害者を中心に「チーム員」の雇用を進め、現在では130名のチーム員が活躍しています。
OSMの本社は、オリンパスの技術開発センターの一角にあります。同センターは、オリンパスグループの最先端を行く研究開発拠点。OSMは、広い敷地を持つこのセンターの中で、建物内の清掃やメール業務を一手に引き受けています。
会社の概要についてご説明いただいたあと、さっそくチーム員が働く現場を見せていただきました。
《青いポロシャツ姿が、そこかしこに》
近年は、共用スペースだけでなく、オリンパス社員が働いている執務スペースにも入って、清掃を行っているとのこと。働き方改革の一環でフリーアドレスが一般的になったことや、コロナ禍で在宅勤務が進んだこと(現在の出社率は3割程度とのこと)などから、執務スペースでも、個人個人が自分のデスクの回りを日々整えるということが少なくなったことが、その背景にあるそうです。
龍田さんにご案内いただいて、広い建物の中を歩いていくと、そこかしこで、お揃いの青いポロシャツ姿のチーム員を見かけました。執務スペースを掃除する時には、仕事に集中している社員を気遣い、必要な時には「ちょっとお願いします」と声もかけながら、掃除を行っているとのこと。チーム員の皆さんの仕事が、このように社員の目に触れる形で、日々、自然に行われているのは、とてもいいことだと感じました。
《国際便も、精密機器も》
特徴的だったのは、グローバル企業であるがゆえの国際便の取扱。例えば、送出先の国にあわせて業者(UBS、フェデックスなど)を選び、レターパックや荷物を発出することもあれば、英語表記の宛名で届いた郵便物を仕分けをし、社内の該当部署に配達する。これらの作業が日常的にあり、現に私たちが見学している最中にも、海外向けの発送作業が行われていました。
もうひとつの特徴は、大きな荷物、しかも精密機器の発送を扱っていること。技術開発センターは、オリンパスの主力製品である内視鏡の量産拠点ではありませんが、研究開発拠点として完成品を発送することは、日常的にあるそうで、これもメール室で対応しています。「このカートと同じくらいなんですよ」と梱包の大きさを教えていただき、中身が内視鏡のユニットであることを考えると、慎重を要する難しい仕事だなと実感しました。
《見事な蘇りぶりが大好評》
この業務は3年前に導入したもので、他社の取組を参考にして、コロナ禍の前から取り組んできたとのこと。結果として、コロナ禍後の就業環境整備の動きにマッチするとともに、以前は廃棄していた執務室や会議室の椅子を再利用することが可能に。そして、なにより、椅子を使う社員から、その座り心地(蘇りぶり)が大好評とのことですので、一石二鳥に止まらない成果です。
技術開発センターの中だけでも、執務スペースや会議室などで膨大な数の椅子が使われていますので、OSMでは、3年ですべての椅子のクリーニングが一巡できるよう、計画的に取り組んでいるとのことでした。
《「人づくり」を中期経営計画の柱に掲げて》
具体的には、OSMが各拠点で取り組んでいる職域に沿って、その職域の中で、また、それらの職域の位置づけを階層化して、ステップアップやモチベーションの向上を図る取組を展開しています。
そのひとつが「業務検定」。通常の目標設定と評価の仕組みとは別に、例えば、八王子の拠点では、年1回、清掃のスキルを測定する検定を行っています。この検定では、初級から上級まで6つのレベルを設定。検定の時期が近づいてくると、チーム員の皆さんは、目指すレベルを決めて頑張りを見せるとのことです。
そして、メール室とチェアクリーニングの業務は、清掃業務の検定で「上級」と認定されたチーム員のみが就くことができるとのこと。さらに、チェアクリーニングでは、スキルアップのステップを明示。その最上位には、国家資格であるクリーニング師の資格取得が掲げられていました。
職域が限られている中でも、ステップアップの道筋を明確にすることによって、チーム員のモチベーションを引き出し、活躍を促すことができていると感じました。
さらに、興味深く感じられたのは、「チャレンジアップ」の取組です。検定もクリアし、さらに意欲のあるチーム員が、リーダーシップを発揮したいコースを選択してチャレンジする取組で、2022年度から開始されました。
コースは、「チームサポート」「作業サポート」「コミュニケーションサポート」「オフィスサポート」の4つ。自分はどれが向いているか、自ら判断してエントリーし、会社の中でその役割を果たす。「自分はこれが不得意なので、トライしてみる」と言って、あえてそのコースを選ぶチーム員もいるそうです。
自らを振り返りながら、新しい可能性も発見する。この取組は、チーム員の意向を把握しつつ、指導員の中で議論して創り出したものとのこと。今後の成果が楽しみです。
《東日本の各地に、拠点を展開》
このような小規模でも、各地に拠点を設けたのはなぜか。
理由のひとつは、オリンパスの実雇用率がまだ低調だった時に、とにかく雇用数を確保する観点から、各拠点における雇用も半ば強制的に進めることにしたため。さらに、各社もグループ適用を受けるのだから、その拠点においても、しっかりと障害者雇用を進めることが大切と考えたから、とのお話がありました。
実際にチーム員を採用するに際しては、地元の特別支援学校から「そちらで働けそうな生徒は、まだいませんよ」と言われて、並々ならぬ苦労をした地域があったとのこと。一方で、既に障害者の雇用が進んでいて、地元の会社との競合に苦労した地域もあったそうです。
特例子会社が500社を超える状況となった現在、その立地は大都市圏に偏っているのが実情です。このような偏在は、地方における障害者の雇用機会の少なさにもつながっている面があると感じます。法定雇用率2.7%という時代を迎え、全国の各地に拠点を擁する企業(企業グループ)では、地域的な広がりも意識して障害者雇用を進めることが、重要ではないでしょうか。その際に、OSMの取組はよい参考例となると思います。
《「ずっとここで働きたい」を目指して》
ミュージアムをご案内いただき、龍田さんがエンジニアのご出身であることを知りました。龍田さんは、OSMでは初めての同社専任の社長とのこと。そのリーダーシップは、社員の信頼も得て、様々な新しい試みの実現につながっていると拝察いたしました。
オリンパスサポートメイトが、社員とのコミュニケーションを一層深めつつ、その目指す姿として掲げる「医療事業に貢献する誇りをもって」「ずっとここで働きたいと思える会社」の実現に向かって、今後も新しいチャレンジを続けることを、ご期待申し上げたいと思います。
~ 一緒に見学したSOMPOチャレンジドの中川崇生社長から、一言~
最も驚いたのが、チーム員以外の従業員の皆さんの少なさです。指導員の方が忙しい中、ご自身の業務以外にも、会社施策に積極的にかかわっておられたことがとても印象に残りました。
会社主催のイベントもたくさん企画されており、チーム員の皆さんのモチベーション向上に繋がっているように感じました。
龍田社長のお考えに強く共感することが数多くありましたので、視察を機に、今後も交流をお願いさせていただきました。
《自社PR》
「サポートメイト」という名前は、オリンパスグループの一員として、互いに支え・助け合うことをポリシーに、また障がい者・健常者・高齢者・若者と分け隔てなく、皆一丸となって質の高いサービス提供を目指していくことに由来します。障がいをもつ方々に就業機会を提供し、彼らに主役になっていただく。そして、彼らの業務指導を行う社員は、グループ会社の障がい者雇用促進の専門家集団として、より高いレベルでサービスを提供し、社会的責任を果たすことを理念としています。社員が「ずっとここで働きたいと思える会社」、すなわち、「働く喜び」と「成長機会」にあふれた会社を目指して、業務の品質と雇用の質の向上に取り組んでいます。
《会社概要》
社名 | オリンパスサポートメイト株式会社 |
主な業種 | 清掃、郵便物集配、事務補助、開発補助、チェアクリーニング、観葉植物のメンテナンスなど |
従業員数 | 178名 |
うち障害者社員の人数 | 133名 |
障害の内訳 | 身体:1名、知的:114名、精神:18人 |
URL | |
親会社の社名 | オリンパス株式会社 |
主な業種 | 精密機器、医療機器の製造販売 |
親会社のHPに障害者雇用に関する記述がある場合には、その箇所のURL |
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 理事長
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。