発達障害者の雇用管理、3つのポイント

1.脳の働き方の違い

栗本:
実は、ある部署の担当者から、「発達障害のある社員の対応に悩んでいる」と聞いたんですが……。

福田課長:
どんな状況なのかな?

栗本:
発達障害のある社員が、業務の選り好みをして、1日が終わっても、予定されていた業務の半分も完了していない、というような状態だそうです。

福田課長:
よくあるケースだね。職場全体で、発達障害の特性を理解すれば、対応できる。

2.主な3つの障害

栗本:
詳しく教えてもらえますか?

福田課長:
発達障害は、生まれつきの脳の働き方が、発達障害のない人と違っているため、行動や情緒に特徴が生じる。具体的には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などの障害が現れるんだ。

栗本:
自閉スペクトラム症とは、何でしょうか?

福田課長:
自閉スペクトラム症は、コミュニケーションが苦手なことが特徴だよ。相手の気持ちを読み取るのが難しく、特定のことに強くこだわる傾向がある。例えば、文字や図形に強い関心を持つ一方で、人の表情や態度には興味を示さない、というようなことがあるね。

栗本:
注意欠如・多動症(ADHD)はどのような障害ですか?

福田課長:
これは、落ち着きがなく、注意が散漫であることが特徴なんだよ。多動性や不注意が特に顕著で、作業にミスが多かったりする。大人になっても、これらの特性が続くことがあるよ。

栗本:
学習障害(LD)は?

福田課長:
全般的な知的発達には問題ないが、読む、書く、計算するなど、特定の学習に困難や苦手意識がある障害だよ。自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)についてまとめた図を下に載せておくから、参考にしてほしい。国立障害者リハビリテーションセンターのホームページでも詳しく説明されているよ。
栗本:
よくわかりました。企業はどのような対応、雇用管理をすればいいんでしょうか?

福田課長:
まず、発達障害の特性は生まれつきのものであり、病気ではないので、「治る」という考えは適切ではないね。企業は、その特性を考慮しながら、職場環境を調整し、業務遂行に問題が生じないようにする必要があるんだ。大きく3つのポイントがあるよ。

3.指示を明確に

栗本:
その3つのポイントを、具体的に教えて下さい

福田課長:
発達障害のある人は、業務の優先順位が付けられなかったり、作業手順が間違っていたり、仕事に対する苦手意識があったりする。なので、まずは、障害の特性に合わせた指示やコミュニケーションを心掛けるべきだよ。業務の目的や全体イメージを明確に伝えることが大切だね。

栗本:
例えばどういうことですか?

福田課長:
発達障害のある人の特性に合わせて、デスクの場所やチームの人数などの物理的な環境を整えるだけでなく、指示の出し方報告・連絡・相談のルールなども、工夫するといいね。また、発達障害者の中には、暗黙のルールや職場の習慣を感じ取ることが苦手な人も多いから、抽象的、遠まわしな表現は避けて、具体的な言葉や数値ではっきりと伝えることが重要だよ。

栗本:
なるほど。具体的に、明確に指示するのですね。

福田課長:
1日のスケジュールを明示し、具体的な時間や量で、何を、いつまでに、どれだけやるかを伝える。指示を視覚的にすることも欠かせない。細かな指示は、口頭でなくメールなどで行うほうがいいね。また、業務に関するマニュアルを用意すれば、不明な点があっても業務を止めずにすむよ。

栗本:
これなら、理解が深まり、スケジュール管理もできそうですね。

福田課長:
これらの雇用管理を適切に行えば、業務の選り好みが格段に減る。発達障害のある人は、実際には業務の選り好みをしているわけではなく、優先順位付けや時間配分が苦手で、できる仕事から始めて、それに没頭してしまっていることが多いんだ。

4.「得意なこと」で貢献してもらう

栗本:
2つめのポイントは?

福田課長:
不得意なことを克服するのでなく、得意なことで会社に貢献してもらう、ということだよ。

栗本:
得意なことで貢献するって、どうやって実現するんですか?

福田課長:
発達障害のある社員にも、「得意なこと」や「強み」がある。そこに焦点を当て、その分野の業務を割り当てればいいんだよ。これにより、社員は自己効果感を高め、意欲も向上する。仕事をするうえで良い循環が生まれ、周囲も過度なストレスを感じなくて済むようになると思うよ。

栗本:
確かにそうですね!

福田課長:
それと、予定通りできたことは、きちんと評価してあげてほしい。「できましたね」と言うだけでいいんだ。

5.協調性や社風を押し付けない

栗本:
3つめのポイントは何でしょう。

福田課長:
協調性や社風を必要以上に押し付けない、ということだよ。

栗本:
協調性や社風って、仕事をする上ではとても重要なことだと思うのですが……。

福田課長:
そうだね。でも、発達障害のある人は、チームでのコミュニケーションや協調性を大切にするのが苦手な場合が多いんだ。その点を理解し、協調性や社風を強制するのではなく、業務を滞りなく行うことを優先してほしい。

栗本:
業務の差配や職場環境を工夫することで、実現できると思います。

福田課長:
周囲の社員に対しても、発達障害に対する理解を深める教育が必要だね。厚生労働省の「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」ウェブサイトでは、これについて具体的な指針が提供されているよ。日本発達障害学会のウェブサイトも参考にしてほしい。

国立精神・神経医療研究センター
こころの情報サイト
厚生労働省
e-ヘルスネット
精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」ウェブサイト

栗本:
わかりました!発達障害のある社員が、生き生きと働き、成果を上げられるよう、社内全体で理解を深め、サポートしていきます。
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