【2022年8月18日公開】障害者雇用の何が変わるのか/改正障害者雇用促進法解説

【1.はじめに】
この法律は、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、精神保健福祉法など、障害関連を中心に約30の法律を一括して改正した法律です。障害関連のそれぞれの法律は、互いに密接に関連しているので、ばらばらでなく、まとめて見直すほうが現実的で、政策の一貫性も高まります。このような一括改正は、障害分野だけでなく、他の分野の制度改正でも使われる手法です。
法律の名称には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」、つまり「障害者総合支援法」だけが代表として掲げられています。でも、そのあとに「等」と書いてあることにお気づきでしょうか。この「等」の中に、障害者雇用促進法や精神保健福祉法など、そのほかの法律が含まれているのです。
この記事では、約30の法律のうち、民間企業にとって影響が大きい「障害者雇用促進法」の改正に焦点を絞ります。ポイントはズバリ、「雇用の質の向上」です。
昨今問題となっている「雇用代行ビジネス」や、今後の法定雇用率の引き上げなど、障害者雇用をめぐる最新の動向にも触れながら、解説していきます。
【2.事業主の責務を明確化】
政府の労働政策審議会・障害者雇用分科会でも重要視された観点であり、改正法にも同分科会の考えが色濃く反映されました。
まず、「事業主の責務」を定めた条文(第5条)が改められ、「職業能力を開発し、向上させるための措置」の実施が加わりました。2023(令和5)年4月から、すべての企業に適用されています。
第5条は努力義務ではありますが、単に障害者を雇うだけでなく、仕事をする能力を磨き、アップさせるよう、企業は努力しなければなりません。
【3.調整金・報奨金の見直し】
下の図で、「納付金」「調整金」「報奨金」のしくみを、簡単におさらいします。
※図は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページより一部抜粋。

一方、「助成金」は原則、雇っている障害者の数を評価するのではなく、企業の取り組み内容により、支給の判断がなされます。障害者が働きやすいように、能力を発揮できるように、ハードやソフトを充実させた企業に助成するので、「雇用の質の向上」が期待できます。
では、「調整金」「報奨金」「助成金」にはそれぞれ、どのくらいの金額が使われているのでしょうか。令和3年度の実績では、次のようになっています。
調整金 | 213億円 |
報奨金 | 53億円 |
助成金 | 4億円 |
「調整金」や「報奨金」についての変更点は以下のとおりです。
<調整金>
支給対象の障害者が10人までについては、これまでどおり1人あたり月27,000円とするが、10人を超える分については23,000円へ引き下げる。
<報奨金>
支給対象の障害者が35人までについては、これまでどおり1人あたり月21,000円とするが、35人を超える分については16,000円へ引き下げる。
【4.助成金の新設・拡充】
2024(令和6)年4月より新設された助成金は以下の通りです。
障害者雇用相談援助助成金(新設)
一定の要件を満たす事業者として労働局から認定を受けた事業者(認定事業者)が労働局等による雇用指導と一体となって障害者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業(障害者雇用相談援助事業)を利用事業主に実施した場合に支給します。※助成金は認定事業者に支給されます。
対象障害者 | 支給限度額 | 支給回数 |
・身体障害者・知的障害者・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの精神障害者 | ① 利用事業主に対して障害者雇用相談援助事業を行った場合・60万円(中小企業または除外率設定業種事業主(注釈1)は80万円) | 利用事業主1社につき1回 |
https://company.fvp.co.jp/news/news240603.html
障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金(拡充)
加齢による変化が生じることで、当該障害に起因する就労困難性の増加が認められる場合で、継続雇用のために当該障害者の障害特性から生じる業務遂行上の課題を克服するために必要な支援措置と認められる場合に支給します。支給対象となるのは、35歳以上で雇用後6か月を超える期間が経過している障害者ですが、対象となる障害者、助成率、支給限度額、支給期間等については各助成金によって異なります。
障害者介助等助成金等(新たな項目を新設)
【障害者職場実習等支援事業】
障害者を雇用したことがない事業主等が職場実習または職場見学等を行った日数に日額5千円を乗じて得た額が支給されます。実習指導員謝金1日の支援時間に2千円を乗じて得た額・保険料実費
※同一年度内の支払い上限額はそれぞれ50万円まで支給されます。(もにす 認定事業主はそれぞれ100万円まで)
【健康相談医の委嘱助成金】
障害者の雇用管理のために必要な専門職(医師または職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱について、費用の4分の3まで、委嘱1人1回につき2万5千円まで年30万円まで10年間助成されます。
こちらの助成金を受給するためには、対象障害者が5人以上であることが必要になります 。
【職業生活相談支援専門員の配置又は委嘱助成金】
〔対象障害者が5人以上であることが必要になります〕
・職業生活相談支援専門員の配置1人につき月15万円まで・委嘱1人1回につき1万円まで、年150万円までが10年間支給されます。職業生活相談支援専門員の配置又は委嘱助成金を受給するためには、対象障害者が5人以上であることが必要になります。
【職業能力開発向上支援専門員の配置又は委嘱助成金】
障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置1人につき月15万円まで・委嘱1人1回につき1万円まで、年150万円までが10年間支給されます。
職業能力開発向上支援専門印の配置又は委嘱助成金を受給するためには、対象障害者が5人以上であ ることが必要になります。
【介助者等資質向上措置に係る助成金】
職場介助者、手話通訳、要約筆記等担当者、職場支援員、職業生活相談支援専門員、職業能力開発向上支援専門員などの資質向上に要した費用の4分の3、上限100万円までが支給されます。
【中途障害者等技能習得支援助成金】
身体障害者、精神障害者(発達障害のみ有する方は対象外)、高次脳機能障害者、難病等にかかっている方の中途障害者等の職場復帰後の職務転換後の業務に必要な知識・技能を習得させるための研修の実施に要する費用について、対象障害者1人につき20万円まで(助成率4分の3)が支給されます。
これら助成金を新設、拡充することで、「雇用の質の向上」に取り組む企業を評価し、経済的に支援するのです。
【5.短時間労働者の実雇用率算定】
対象になるのは、以下の人たちです。
一般的に、長時間働くのが難しいとされている人たちです。
企業に雇用義務が課されているのは、「週の所定労働時間が20時間以上」の障害者です。この点は法改正後も変わりません。
週の所定労働時間が「10時間以上20時間未満」の特定短時間労働者については、企業に雇用義務はないけれども、雇った場合には、その企業の実雇用率に反映できる、ということになります。
週の所定労働時間が20時間未満だと、雇用保険に加入できません。でも、「短時間なら働ける」「短時間でも働きたい」という人たちには、チャンスが広がりそうです。
また、実雇用率を高めたい企業にとっても、「プラスの改正」と言えます。
参考に、実雇用率へのカウント方法を、厚生労働省の資料を基に、下の表にまとめておきます。
障害者雇用率制度における実雇用率の算定方法
週所定労働時間 | 30H以上 | 20H以上30H未満 | 10H以上20H未満 |
身体障害者 | 1 | 0.5 | - |
重度身体障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
知的障害者 | 1 | 0.5 | - |
重度知的障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
精神障害者 | 1 | 1※ | 0.5 |
※0.5でなく1カウントとする措置について、当面の間延長する。
「特例給付金」は、週の所定労働時間が「10時間以上20時間未満」の障害者を雇う企業に、障害者数に応じて1人あたり月7,000円(常用労働者100人以下の企業は1人あたり月5,000円)を支給するものでした。
【6.その他の改正事項】
①「事業協同組合等算定特例」に「有限責任事業組合」(LLP)を追加
「事業協同組合等算定特例」は、事業協同組合のスキームを活用し、複数の中小企業の実雇用率を通算できる特例制度です。複数の中小企業が共同で雇用機会を確保することができます。
この制度の対象に、「有限責任事業組合」(LLP)を加えます。
LLPは、さまざまな業種の企業が参画できるほか、行政の許認可が不要で設立手続きがシンプルなので、中小企業の障害者雇用を促す効果が期待されています。
②「在宅就業障害者支援制度」の要件緩和
「在宅就業障害者支援制度」は、企業が、在宅で働く障害者に仕事を発注した場合、その企業に、納付金制度からお金を支給する制度です。次の2タイプがあります。
・企業が直接、在宅障害者へ仕事を発注する。
・企業が「在宅就業支援団体」に仕事を発注し、「在宅就業支援団体」が在宅障害者へ仕事 の提供や対価の支払い、支援を行う。
「在宅就業支援団体」になるには、「常時10人以上の在宅障害者に継続的に支援を行う」などの登録要件を満たす必要があります。法改正で、「10人」を「5人」へ引き下げるなど、要件緩和が行われます。
【7.多数の附帯決議】
附帯決議には、法的な効力はありません。しかし、政府が改正法を実行するにあたって、国会から「たくさんの注文」がついたことになります。課題山積の状態と言えるでしょう。
附帯決議の中で、障害者の雇用にかかわるものは、以下の項目です。
<重度障害者関係>
・職場での介護や通勤の介護について、福祉と雇用の連携を改善する
・職場における支援のための助成金について、利用が低調な理由を分析し改善する
<難病患者関係>
・難病患者など障害者手帳を取得できない人の就労支援について対策を行う
・難病患者の就労状況を把握し、治療しながら就労できる環境を創出する
・病気休暇等の普及を促進する
・障害者雇用率制度における取扱いを検討し、事業主へ啓発する
<その他>
・除外率制度の廃止に向け取り組む
・障害者雇用代行ビジネスを利用しないよう、事業主に周知、指導する
【8.障害者雇用代行ビジネスの急増】
附帯決議では、障害者雇用代行ビジネスについて、以下のように定義しています。
「事業主が、単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネス」
この障害者雇用代行ビジネスは、「雇用の質」の観点から、近年、問題視されています。2023(令和5)年1月には、新聞などメディアが批判的に報道し、厚生労働省も対策を検討中です。
障害者雇用代行ビジネスは、おおまかに次の図のようなイメージです。

・働きたい障害者を見つける
・その障害者に適した仕事を提供する
・仕事の指導や支援を行う
が企業に求められます。
これらのノウハウがない企業も多いです。しかし、企業は、法定雇用数を満たさなければ、「納付金」を国に納めなければなりません。企業イメージも悪化します。
そこで、自社では難しい障害者雇用を、代行業者に料金を支払ってまかせる企業が出てくるのです。
雇用代行業者は、企業に農園を貸し出し、そこで障害者が農作業を行います。
障害者を雇って賃金を支払うのは、あくまでも企業であり、代行業者ではありません。
共同通信の報道によると、十数の代行業者が、首都圏、愛知県、大阪府、九州などの85か所で代行ビジネスを展開し、利用している企業は約800社、約5,000人の障害者が働いています。複数の有名大手企業も利用しているということです。
しかし、障害者雇用とは本来、企業が自社の業務に必要な障害者を採用し、自社の戦力として働き続けられるよう、その能力を育てていくことです。まさに、「雇用の質」が肝要なのです。
雇用代行ビジネスは、「雇用の質」を重視する障害者雇用の理念からずれている……。国会もそう考えたからこそ、附帯決議に盛り込んだのでしょう。
【9.法定雇用率の引き上げ】
障害者雇用促進法では、少なくとも5年ごとに、法定雇用率を見直すよう定められているからです。
今後の法定雇用率の引き上げは、次のような予定となっています。
2024(令和6)年4月~2026(令和8)年6月 | 2.5% |
2026(令和8)年7月~ | 2.7% |
【10.まとめ】
障害者雇用の「質」について、社会の関心がいっそう高まっていくにちがいありません。
障害者雇用に関して、企業は以下のように分類されると思います。
①法定雇用率を満たしていない
②法定雇用率を満たしている
③法定雇用率を満たし、雇用の質も高い
そして、①は「論外」、②は「当然」、③こそが「真の優良企業」……と社会は評価するようになるでしょう。「法定雇用率を満たせばよい」という発想からは、一刻も早く脱却しなければなりません。
そして、雇った障害者を、他の従業員と同じ「働く仲間」として、そして「貴重な戦力」として育てていく必要があるのです。
障害者雇用の質を高めることは、貴社の社会的存在価値を高めることにつながります。ぜひ、積極的にチャレンジしてください。
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