【2024年版】人事担当者が最初に読むべき障害者採用の基本ガイド

1. 導入

企業が障害者雇用を行う上で、「まとまった情報を得るのが難しい」という声がよく聞かれます。
はじめて障害者雇用の担当になった、これから障害者採用を始めようとしている、という人事担当者の方からはとくにそんなお声があります。

ここでは、障害者雇用の基礎知識から、実際に障害者採用を行う際の流れと定着のポイント、利用できる助成金や制度などについてまとめました。

障害者採用の全体像をつかみ、自社の障害者雇用推進の参考としていただければと思います。

2. 企業はなぜ障害者雇用を行わなくてはならないのか

そもそも、企業はなぜ、障害者を雇用しなくてはならないのでしょうか。

障害者雇用促進法」には、民間企業の事業主が障害者を雇用する責務について、次のように定められています。

(一般事業主の雇用義務等)
第四十三条 事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。次章及び第八十一条の二を除き、以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。

この「障害者雇用率」を軸とした、障害者雇用に関する一連の制度を「障害者雇用率制度」といいます。詳しくは、次項以降でお話しします。

なお、「常時雇用する労働者」とは、次のように定められています。

■常時雇用している労働者の定義
・期間の定めのない労働者
・期間の定めのある労働者のうち、事実上1年を超えて雇用されている労働者
・期間の定めのある労働者のうち、1年を超えて雇用されることが見込まれる労働者
・上記に該当する20時間以上30時間未満の労働時間のパートタイマー(短時間労働者)

1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は、障害者雇用率制度上の常用雇用労働者の範囲には含まれません。

3. 「障害者雇用率制度」とは?

障害者雇用に関する以下のような項目によって、障害者雇用率制度は構成されています。

・雇用義務(法定雇用率)
・障害者雇用納付金制度
・行政指導・企業名公表
・除外率制度

まず、雇用義務(法定雇用率)について見ていきましょう。

民間企業、国、地方公共団体は、「常時雇用する労働者数」の一定の割合に相当する人数以上、障害者雇用をすることが義務付けられています。
この割合を「法定雇用率」といいます。

企業、国、地方公共団体の法定雇用率は、次のように定められています。

■企業・団体別の法定雇用率(民間企業)
令和5年1月1日現在 2.3%(対象労働者数43.5人以上の規模)
令和5年4月1日以降 2.5%(対象労働者数40人以上の規模)
令和7年7月1日以降 2.7%(対象労働者数37.5人以上の規模)

また、法定雇用率は原則5年ごとに算定し、見直すことになっています。
算定のされ方は、次のようになります。

■法定雇用率の定め方

4. 自社で雇用しなければならない障害者数の計算方法

自社が法定雇用率を満たせているのか、満たせていない場合は、あと何人採用を行わなければならないのか。
それを調べるには、法定雇用障害者数や実雇用率を算出します。

自社の法定雇用障害者数は以下の計算方法で求めます
実雇用率は以下の計算方法で求めます
障害種別と労働時間別のカウント方法を表にしました。

《障害種別と労働時間別カウント表》
※当面の間、特例措置として短時間労働者の精神障害者を1カウントと数えられます。

・原則として、常用労働者が算定の対象となります。
・重度身体障害者、重度知的障害者については、1名を2名として計算(ダブルカウント制)します。精神障害者にはダブルカウント制は適用しません。
・短時間労働者の重度身体障害者、重度知的障害者は、1名として計算されます。
・1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である短時間労働者については、1人をもって0.5人の労働者とみなされます。
・短時間労働者の精神障害者については、新規雇い入れから3年以内または精神障害者保健福祉手帳を取得してから3年以内であり、かつ令和5年3月31日までに雇い入れられていて令和5年3月31日までに精神障害者保健福祉手帳を取得している場合は、1名として計算します。
・実雇用率の算定は企業単位です。複数の事業所(本店、支店、工場等)を有する企業は全社分を合計します。

5. 法定雇用率制度の一連にある制度や仕組み

次に、法定雇用率と一連にある、次のような制度や仕組みについて解説します。
・障害者雇用納付金制度
・行政指導・企業名公表
・除外率制度

1. 障害者雇用納付金制度
 
法定雇用率を満たせなかった企業は、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて1人につき月額5万円を「障害者雇用納付金」を支払わなければなりません。

「罰金」「ペナルティ」などと言われることがありますが、罰金ではありません。
罰金というのは、その金銭を納めることで「罪を免除してもらえる」わけですが、障害者雇用納付金は、あくまでも、障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業の経済的な負担を調整することを目的としたものです。したがって、障害者雇用納付金を支払っても、障害者雇用義務が免除されるわけではありません。

一方、常時雇用する労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率(2.3%)を超えて障害者を雇用している場合は、超えて雇用している人数に応じて、1人につき月額2万7,000円の「障害者雇用調整金」が支給されます。

また、常時雇用する労働者が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用する労働者数の4%の年度間合計数、または72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している人数に2万1,000円を乗じた額の「報奨金」が支給されます。

障害者納付金制度は、事業主による自主申告・納付、自主申請を基本としています。
申告・納付先は独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構です。

制度の適正運営、経済的負担の平等性の確保といった観点から、「障害者の雇用の促進等に関する法律」第52条の規定に基づき、訪問による調査が行われます。

障害者雇用をせず納付金で済ませようという考え方は、コンプライアンス上問題があることを認識しましょう。

2. 行政指導・企業名公表

毎年6月1日時点の雇用状況をハローワークに報告する「障害者雇用状況報告(通称:ロクイチ報告)」の内容から、障害者雇用の状況が特に悪い企業に対しては行政指導が実施されます。その後も改善の見られない企業については「企業名の公表」という社会的制裁を受けることとなります。

行政指導は、管轄の公共職業安定所長および雇用指導官が指導に入ります。
求人情報提供や面接会参加の勧奨などの実務指導、採用活動報告の要請が都度行われることに加え、必要に応じて労働局幹部による訪問指導も実施されます。
障害者採用の取り組みが遅れている企業に対しては、厚生労働省への来省が求められ企業幹部および担当責任者への直接指導が行われます。

このように、行政指導は相当の厳しさがありますので、企業は計画的に障害者採用を行っていくことが求められます。
3. 除外率制度

以前は、一般的に障害者の就業が困難であると認められる職種を、かなりの割合が占める業種に対して、算定する常用労働者数から控除する「除外率」が定められていましたが、ノーマライゼーションの観点から、平成16年4月、廃止が決定されました。

現在は経過措置として、業種ごとの除外率を設定し、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています。平成22年7月には一律10ポイントの引き下げが行われました。

現在は除外率の設定された業種であっても、除外率は縮小されていくということを前提に、障害者雇用を進めることをお勧めします。

6. 障害者雇用率制度の対象となる「障害者」とは?

現行の法律では、一口に「障害者」を定義したものはありません。
「身体障害」、「知的障害」、「精神障害(発達障害を含む)」について、それぞれ「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」、「精神保健福祉法」で規定しています。 

障害者雇用に関しての「障害者」は「障害者雇用促進法」等で、次のように規定されています。 

 ●障害者 
「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされています。 
障害の種類や手帳の有無を問わず、職業生活上の困難を抱えている、すべての種類の障害者が、この法律の対象となります。 

 ●身体障害者 
視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害がある人をいいます。
具体的には、次のような人を言います。
・身体障害者障害程度等級表の1~6級までの人、および7級に掲げる障害が2以上重複している人

そのうち「重度身体障害者」とされる人は、次のような人です。
・1~2級に該当する人、または3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人

重度身体障害者の雇用率の算定にあたっては、1人を2人の障害者と数えることができる(ダブルカウント制)などの特別措置が取られています。 
身体障害者であることの確認は「身体障害者手帳」の所持、または規定の診断書によって行われます。
 
 ●知的障害者 
「障害者のうち、知的な障害をもつ者であって厚生労働省令で定める者」をいいます。 
そのうち、「重度知的障害者」とされるのは次のような人です。
・知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定める者

重度知的障害者も雇用率の算定にあたっては、ダブルカウント制などの特別措置が取られています。 知的障害者であることの確認は「療育手帳」の所持、または知的障害者判定機関が交付する判定書によって行われます。 

 ●精神障害者 
「精神障害がある者であって、厚生労働省令で定める者」をいいます。 
この「厚生労働省令で定める者」とは、次のような人とされています。
・精神保健福祉法の定めにより精神障害者保健福祉手帳を交付されている者
・「統合失調症、躁鬱病またはてんかんにかかっている者」で「症状が安定し就労が可能な状態にある者」
なお、精神障害については、雇用率の算定にかかわる「重度判定」の規定はありません。 

 ●発達障害者 
「障害者のうち発達障害のある者であって、精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている者のこと」をいいます。
発達障害は、発達期(おおむね18歳未満)に様々な原因によって中枢神経系が障害されたために、認知・言語・学習・運動・社会性のスキルの獲得に困難が生じる障害と説明されています。

障害者雇用にあたり注意したいのは、障害者雇用率の対象となる障害者は、原則として障害者手帳の所持が条件だということです。

7. 障害者の採用3つのステップ

企業が障害者を採用する過程は、大きく次のようなステップに分けることができます。

ステップ1.採用準備
ステップ2.採用活動
ステップ3.受け入れ準備

ステップ1<採用準備>
障害者雇用において採用準備には、次のようなことがあります。
①障害者採用の方針や障害者採用計画の立案
②障害者スタッフが従事する業務を決める

ステップ2<採用活動>
障害者雇用において採用活動とは、文字通り、障害者採用選考となります。
複数の行事を通して一人ひとりの職業準備性や得意なこと、不得手なこと、業務とのマッチング等を確認していきます。

ステップ3<受け入れ準備>
障害者雇用において受け入れ準備とは、障害者スタッフを受け入れる企業側が、障害者スタッフが入社後、環境や仕事、メンバーになじめるようにするステップです。


《障害者採用の流れ(例)》
ステップ1<採用準備>

①障害者雇用の方針や障害者雇用計画の立案
企業における経営理念、ビジョン、業務内容は当然企業ごとにまちまちです。それらをふまえたうえで、自分の会社がなぜ障害者雇用を行うのか、自社の障害者雇用において目指すゴールイメージを社内で共有しておきましょう。

できれば障害者雇用を担当する部署、障害者スタッフを受け入れる部署だけでなく、経営層も巻き込んだ自社障害者雇用の共有イメージを持っておくことがカギです。そのうえでいつまでに何人採用するのかスケジュールまで作成し、全社的な経営計画に含めておきましょう。

②業務切り出し、職務設計
採用を開始するには、どの部署でなんの仕事をしてもらうかを決めなければなりません。そうでないと実際の採用活動に入る際にどのような人を採用したいのか明確になりません。


仕事を見つけるときは、〇〇さんの仕事を代わりにお願い、という考え方や、一般社員の70%くらいといった基準ではなく、仕事を分解して障害者スタッフが適正を発揮できる工程を切り出し、複数人分の切り出した工程を合体させて1人分の仕事にするというイメージです。

障害者雇用を行うにあたっては、総論賛成、各論反対(自社が障害者雇用をすることはいいことだと思うが、自分の部署にくるのは困る)の方も少なくないため、各部署から障害のあるスタッフにやってもらう業務を出してもらうよう依頼してもなかなか集まらないこともあります。仕事を出してもらうポイントは、やらなければならないが手が付けられていない仕事、担当の決まっていない仕事、や、派遣社員が担当している仕事、外注している仕事を見つけるとよいでしょう。

ステップ2<採用活動>

障害者の採用活動は以下のような流れで行います。
 ①母集団形成
 ②職場見学会
 ③実習(インターンシップ)
 ④面接

①    母集団形成
ステップ1で何人がどのような仕事をするかを決めたら募集要項を作成します。募集案内はWebや紙の求人媒体に出稿したり、自社ウェブサイトで告知する方法がありますが、支援機関の協力を得ながら候補者を確保する方法も検討しましょう。

②    職場見学会
実際に働く場所を見て、実際に行う仕事を見てもらうことで、応募者ご本人のイメージの確認、修正をしてもらい、支援者にはその仕事が応募者の適性にマッチしているか、見てもらいます。

③    実習(インターンシップ)
職場見学をして希望される方には職場実習に参加いただきます。実際に勤務する時間に入社後行う業務を体験してもらいます。業務スキルのみならず、指示理解力、集中力なども知ることができます。応募者も、職場環境が自身に合っているか、体力の面できつくないかなど、気付くことができます。

④    面接
障害者の採用面接では、本人が希望する場合は支援者にも同席してもらうとよいでしょう。
確認することは、
・自身の障害についての理解と受容
・配慮してほしいこと
・通院頻度(通院している方のみ)
・体調の悪くなる時期、きっかけ
・体調が悪くなったときの状態
・不調のサイン
・手帳更新の意思(精神障がいの場合)
・服薬している薬(服薬している方のみ)
・ここ2~3年の状態
・入院履歴、怠薬履歴
などです。

中には立ち入った質問もありますので、ご本人の同意を確認して進めます。

ステップ3<受け入れ準備>

受け入れ準備とは、社内への情報共有・啓発です。具体的には、入社する障害者スタッフのプロフィールシートを作成し、一緒に働く方にその人を知ってもらいます。病気や怪我のことより、その結果として仕事をしていくうえで、何が得意で何が苦手か、どんな配慮が必要か、人事からお願いしたいこと等を伝えるようにします。

また、一緒に働く方に対して事前研修を行います。障害者雇用の現状や法制度、自社の障害者雇用の方針、入社される方の特徴、働くうえでの必要な配慮等をお伝えします。いっしょに働く方は、「どんな人が来るのか」「何と呼べばいいのか」「がんばれって言っていいの?」「間違っているときは注意してもいいの?」「お昼に誘ってもいいの?」等さまざまな心配ごとがありますので、入社までにできるだけ不安を解消できるように対応しましょう。

雇用体制については、各部署に少人数ずつ配属する分散型と、1か所にまとめて配属する集中型とありますが、仕事の性質、職場環境、障害のある社員の特性、今後の採用計画を視野に入れ、検討していくことが求められます。
精神障害者、発達障害者採用の最近の傾向としては、定着率や雇用管理の効率性の視点から、を考えますと、まずは1か所にまとめて配属し、働きやすい環境を提供していく、事務センター型の雇用が増えています。

8. 障害者の短期離職を減らすには

離職を防ぐ その1 採用時
離職を防ぐというと、入社後の話を思い浮かべますが、実際には採用段階でできることがあります。

(1)    選考過程に職場実習を入れる
応募者に入社後に行う業務を実際にやってもらいます。職場見学で見ているとはいえ、実際にやってみると想像とは違うことがえてしてあります。まずは応募者にイメージと実際のギャップを埋めてもらい、自分は入社したらこの仕事をやるんだと思ってもらうことが重要です。

また、採用する企業側では、プロフィールシート等の書類や短時間では見えない応募者の性格や特性、得手・不得手な点等を確認するようにします。

(2)選考ではスキルだけでなく、就業準備性を確認する
就業準備性とは、「健康管理」「日常生活管理」「対人技能(コミュニケーション)」「基本的労働習慣」「職業適性」の6つです。きちんと毎日出社できなかったり、自分の障害のことを正しく理解・受容していなかったり、周囲とのコミュニケーションが一切取れなかったり、報告・連絡・相談ができなければ、どんなにスキルが高くても、その場所で活躍することは困難です。

《就業準備性ピラミッド》
離職を防ぐ その2 入社後のマネジメント

(1)体調管理を記録する
主に精神障害のある方は日々体調や気分に波があり、それが仕事にも影響します。
毎日の体調を記録することは、体調の悪くなるタイミングを知ることができ、対処方法が見えてくるようになります。

(2)    業務指示
①視覚的な業務指示を基本に手順書(マニュアル)も用意する。
口頭での指示は一般の人でも、ずれが生じたりしがちです。業務を依頼する際は、作業の目的、留意点、手順などを明記した手順書(マニュアル)を用意することをおすすめします。障害のある本人にとっては、作業の途中で分からなくなっても、相談しにくい環境や特性の人でも、マニュアルを確認すれば作業を進めることができます。障害のある社員が安心して業務を進められる環境は離職防止にもつながります。
マニュアルと固く考えると面倒だと思うかもしれませんが、動画なども十分活用できます。


②指示を出す人を決める。
いろいろな人から仕事の指示がでる、指示の内容が人によって違う、複数の仕事を指示されて優先順位が立てられない、といったことは離職の元となります。

(3)    面談(定期面談、随時面談)
困っていることを自分から発信することが苦手だったり、自分の気持ちや体調を言葉にして伝えていくことが上手にできない障害者もみられます。
離職を防ぐという観点だけでなく、合理的配慮を提供するという視点でも、障害のある社員に対しての面談を実施することが望まれます。
体調や様子に大きな変化がなくても、定期的な面談を実施します。
その際は、
・人間関係や業務で困っていることはないかをきく
・業務や日頃の様子で気になった点などを確認してみる
会社として伝えたいこと、期待したいことを話す機会にもなります。

また、普段と様子が違う、業務やコミュニケーションでの指導が必要な場合は、その都度面談を実施することが必要です。体調不良、仕事の不安を小さいうちに対処することができ、離職防止につながります。

(4)社内の理解
障害者雇用は、採用担当者と就労する障害者本人だけではなく「社内理解」も重要です。採用後は人事担当者やマネジメント担当者だけが配慮するのではなく、周囲のサポートも必要になります。事前の周知や障害者雇用に関する研修を行っていれば、いざ障害者を雇用した後、周囲のバックアップにより離職率を下げる効果が見込めます。

※障害の状況をどこまで共有すべきか
雇用した障害者の障害特性や必要な配慮に関して、配属部署へ共有する際に、どこまでの情報を開示・共有すべきか、チームメンバーにどのように理解をしてもらうかはなかなか難しい課題です。


もちろん、障害のある社員本人の同意を得ることは前提ですが、関わる社員には、その社員に障害があること、一定の配慮が必要であることを理解してもらうことが望まれます。

必要なことは、障害の名称を共有するのではなく、業務を遂行する上で支障となることは何か、と、そのための配慮の仕方を共有することです。業務に支障のないことは、必ずしも共有する必要はありません。配慮がないと業務を進めるうえで支障が出る可能性があることを周知したうえで、配慮の具体的な内容を、人事あるいは所属長からマネジメント担当者、いっしょに仕事をすることになる人に伝えましょう。

その際は、事前に障害者本人と相談し、障害者本人が仕事をしやすくするという目的と誰にどこまで開示するか確認して進めましよう。

離職を防ぐ その3 支援者との連携 

障害者が長期的に安定した就業を行うためには、就業時間だけでなく、毎日の生活面での安定も重要になります。しかしながら、企業が社員の就業時間以外の生活面についてサポートすることは困難です。その生活面について、また就業面でのサポートをしてくれるのがいわゆる「支援機関」と呼ばれる機関です。主に以下のような組織があります。

(1)    障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的として、全国に設置されています。

(2)    地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。

(3)    就労移行支援機関
障害のある方の社会参加をサポートするために制定された「障害者総合支援法」に基づいて運営されている通所型の福祉サービスです。一般企業への就職を目指す障害者に対し、主に「職業訓練の提供」と「就職活動の支援」によって就職をサポートしています。事業所によっては、就職後3年6か月までの「就労定着支援」をサポートしているところもあります。