【2025年7月17日公開】就労継続支援のA型とB型の違いとは?就労継続支援について分かりやすく解説

「就労継続支援事業所」をご存知でしょうか。一般企業への就職が難しい方に働く場を提供するこの事業所には、「A型」と「B型」の2種類が存在します。
本記事では、就労継続支援A型とB型の違い、対象者や仕事内容、企業との連携方法まで、わかりやすく解説していきます。
就労継続支援とは?

就労継続支援には大きく分けて2種類あります。一つは「就労継続支援A型」で、利用者(障害者)と事業所が雇用契約を結んで働くタイプです。最低賃金が保証され、より一般企業に近い形態での就労が可能です。もう一つは「就労継続支援B型」で、雇用契約を結ばずに利用するタイプです。自分のペースで作業に取り組むことができ、体調や障害の状況に合わせた柔軟な働き方が可能となっています。
どちらのタイプも、障害のある方が自分の能力を発揮しながら社会参加できる貴重な場となっており、一般就労への移行を目指す方や、長期的に安定した就労の場を求める方など、さまざまなニーズに対応しています。
就労継続支援A型とB型 就労移行支援との違い

項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 |
概要 | 雇用契約に基づき、継続的に就労する機会を提供 | 雇用契約を結ばず、就労や生産活動の機会を提供 | 一般企業への就労を目指し、必要な知識・能力向上のための訓練を行う |
雇用契約の有無 | あり(雇用契約を結ぶ) | なし(雇用契約を結ばない) | なし(訓練が主目的) |
給料(工賃) | 給料(最低賃金以上保障) | 工賃(最低賃金の保障なし) | 原則として訓練のため発生しない(訓練手当が出る場合も) |
平均賃金・平均工賃 | 月額約83,551円(2023年度実績) | 月額約17,031円(2023年度実績) | 原則として発生しない |
対象年齢 | 原則18歳以上65歳未満(※) | 年齢制限なし | 原則18歳以上65歳未満(※) |
利用期限の制限 | なし | なし | 原則2年間(条件により1年延長可能) |
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、安定した収入が見込める一方で、ある程度の勤務日数や時間が求められます。それに対してB型は、自身の体調やペースに合わせて柔軟に働きやすいですが、雇用契約を結ばないため、工賃はA型に比べて低い傾向にあります。
就労継続支援A型とは

厚生労働省の資料によると、全国の就労継続支援A型事業所は令和6年7月時点で4,472箇所あります。
A型の事業所数が減少傾向にあったことの背景のひとつには、障害福祉サービス等報酬改定があります。特に令和6(2024)年度のこの改定では、経営状況の改善や一般就労への移行等を促すため、スコアによる基本報酬の区分が大きく見直され、スコアが低い事業所は、大幅な減収となったことで事業を廃止するA型も数多くみられました。
参考:厚生労働省|就労継続支援A型の状況について
以下では、A型事業所の利用対象者、利用可能期間、仕事内容、人員配置基準について詳しく解説します。
A型の利用対象者、利用者の障害種別の傾向、年齢層など
具体的には、以下のような方々が利用対象者として想定されています。
(1) 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
(2) 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
(3) 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
引用:厚生労働省|障害者福祉サービスの内容
障害種別の傾向としては、厚生労働省の調査によると、令和2年12月のデータでは精神障害者が約半数(47.8%)を占め、次いで知的障害者(34.5%)、身体障害者(16.5%)となっています。
参考:厚生労働省|障害者の就労支援について
A型の利用可能期間
A型の仕事内容
具体的な仕事内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 検品や組み立てなどの軽作業
・ 清掃業務
・ 工場の生産ラインや物流加工などの現場での組み立てや検品作業(施設外就労)
・ データ入力やWebデザインなどのPC業務
・ お弁当の調理・盛り付け
・ 農作業や園芸作業
・ レストランやカフェのホールスタッフ
一般企業での就労とあまり変わらない業務内容の場合もありますが、1日あたりの勤務時間が短めに設定されていたり、週の勤務日数が少なかったりするなど、利用者の状況に合わせた柔軟な働き方ができる点が特徴的です。
A型の人員配置基準について
職種 | 概要 | 配置基準 |
管理者 | 事業所の運営全般を管理する責任者 | 1事業所に1人 |
サービス管理責任者 | 利用者一人ひとりの個別支援計画を作成し、サービスの質の向上を図る役割を担う | 利用者60人以下の場合は1人以上配置し、61人以上の場合は40人増すごとに1人追加 |
職業指導員 | 利用者が作業を行う上で必要な技術や知識の指導を行う | 利用者10人につき1人以上配置(最低1人は必要) |
生活指導員 | 利用者の日常生活や社会生活上の相談に応じ、必要な支援を行う | 利用者10人につき1人以上配置(最低1人は必要) |
管理者以外の必要な人員数は前年度の平均利用者数に応じて変動するため、事業所の規模によって配置すべき職員数が異なります。これらの基準を満たすことで、利用者に対して適切な支援を提供する体制が整えられます。
就労継続支援B型とは

このサービスを通じて、利用者は働くことへの意欲を高めたり、生活リズムを整えたり、社会とのつながりを維持したりすることを目指します。B型では工賃という形で作業の対価が支払われますが、最低賃金の保障はなく、全国平均で月額約17,000円程度です。しかし、障害特性や体調に合わせた無理のないペースで働けるというメリットがあります。
以下では、B型事業所の利用対象者、利用可能期間、仕事内容について詳しく解説します。
B型の利用対象者
就労移行支援事業などを利用したものの一般企業などの雇用には至らなかった方や、一定の年齢に達している方などで、就労の機会や生産活動を通じて、知識や能力の向上、または維持が期待される方が対象です。
具体的な利用対象者の例としては、以下のような方が挙げられます。
(1) 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
(2) 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
(3) (1)及び(2)のいずれにも該当しない者であって、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている本事業の利用希望者
(4) 障害者支援施設に入所する者については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案の作成の手続を経た上で、市町村により利用の組合せの必要性が認められた者
引用:厚生労働省|障害者福祉サービスの内容
B型の利用可能期間
週1日からの利用や、1日数時間だけの利用など、体調や障害の状況に合わせた柔軟な利用形態が可能なのが特徴です。A型を利用したり一般就労をしたりするためのステップとして利用する方もいれば、長期的な就労の場として継続的に利用する方もいます。
このように利用期間に制限がないことから、利用者は自分のペースで無理なく社会参加を続けることができます。
B型の仕事内容
・ 商品の仕分け、袋詰め、ラベル貼りなどの軽作業
・ 施設内外の清掃や公園の除草作業など、清掃関連の業務
・ パンやお菓子、弁当などの食品製造や販売補助
・ 農園での野菜や花の栽培、収穫などの農作業
・ 部品の組立や検品
・ 手芸品や工芸品の製作
・ 簡単なデータ入力
これらの活動を通じて、利用者は生産活動に参加する喜びを感じたり、社会参加の機会を得たりすることができます。
また、B型事業所では工賃向上の取り組みも積極的に行われており、より高度な作業や付加価値の高い製品製造に取り組む事業所も増えています。
企業が就労継続支援と連携するメリット

事業所側も、一般就労に向けた支援を行っている利用者が通所している場合もあり、A型やB型の利用者(障害者)を採用対象として検討できる場合があります。具体的には、A型やB型の利用者(障害者)の実習を受け入れていくことで、A型やB型の利用者(障害者)が採用につなげられる可能性もあります。
実習とは
企業が就労継続支援事業所の利用者(障害者)の実習を受け入れることのメリットは次のとおりです。
・ 自社で採用できる人材の発掘ができる
・ 実習期間中に障害特性や適性を見極めてからの採用が可能となる
・ 実習した利用者(障害者)を採用した場合、就労継続支援事業所のノウハウを活かした職場定着支援が期待できる
・ 障害者雇用に関する様々な情報や助言を得られる
企業が就労継続支援の利用者を採用する際の留意点
就労継続支援事業所の中には、「就労定着支援事業」の指定を受けていない場合があります。就労定着支援事業とは、障害を持つ方が就職後最長で3年間、定着に向けた支援が提供される福祉―ビスです。定着支援事業所が、障害を持つ方に対して日常生活や社会生活における課題について相談にのったり、企業担当者との調整を行ったりするサービスです。
就労移行支援事業所は就労定着支援事業の指定を受けていることも多いため、就労移行支援事業所の6か月のフォローアップ期間が終了後、就労定着支援サービスの契約を事業所と障害を持つ方が締結し、定着支援サービスに引き継がれていくことが一般的です。
就労継続支援事業所が、就労定着支援事業の指定を受けていない場合は、障害を持つ方が就職してから6ヶ月間のフォローアップ期間(職場定着支援)が終了すると、基本的にはその事業所の支援は終了となります。
企業が就労継続支援の利用者を採用する際には、採用後の7ヶ月目以降の定着支援についてその利用者が通っていた就労継続支援事業所から就労定着支援事業所への引継ぎが行われるのか、それ以外の形での支援があるのかなどについてを事前に確認しておくことが望まれます。
参考:厚生労働省|就労系障害福祉サービスの概要
参考:厚生労働省|障害者就業・生活支援センター概要
【7月22日公開】「なかぽつ」「しゅうぽつ」と呼ばれる障害者就業・生活支援センターとは?
本記事では、なかぽつの役割、支援内容、企業がなかぽつと連携する場合の方法について詳しく解説します。障害者雇用に取り組む際、なかぽつとの連携は障害のある社員の職場定着や雇用管理に貢献します。この記事を読めば、なかぽつの仕組みや活用法を理解し、障害者雇用の質を高めるための知識が得られるでしょう。
まとめ
企業にとっては、就労継続支援事業所との連携は、障害のある方の雇用機会を創出し、多様な人材を確保する上で有効な手段となり得ます。採用を検討する際には、本記事で触れた利用者の特性や、採用後の定着支援の体制についても理解を深めていただくことが、ともに働く上での円滑な関係構築につながるでしょう。
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