[エキスパート特別対談2] 特例子会社のミッションはグループ全体のダイバーシティ&インクルージョンの推進
障害者雇用の数だけでなく質が求められる時代の特例子会社はどうあるべきか。ダイバーシティ&インクルージョンの理念とどう統合していくのか。特例子会社の経営に携わり、現在も企業の障害者雇用の相談に対応している障害者雇用のエキスパート2人に、あたらしい時代の特例子会社の役割について語り合っていただきました。
(エキスパート特別対談1からつづく)
川上さん:特例子会社を設立することになった場合、とても大事なことがあります。「誰が経営を担うのか」ということです。特例子会社の経営者は本体の経営層や、各部門長と様々な調整を行うことができ、企業風土もよく理解していることが不可欠です。
企業事情にもよりますが、設立準備プロジェクト段階から推進責任者として着任することがベストだと考えます。特例子会社の経営者になる人物が準備段階から関わることで、会社の器を作るだけでなく組織に魂を入れることができます。
内藤さん:実際にご自身が実践されてこられただけに説得力が違いますね。川上さん:DX化など社会環境の変化も非常に早く、合わせてコロナを通して企業活動そのものにも大きな変化がみられる中、特例子会社における職域も大きな転換期を迎えています。どの時代においても、本社経営陣と特例子会社の存在意義や目指すことについての価値共有をしっかりと行い、グループ内の事業において特例子会社がどの部分を担うのかといったことについて十分情報共有をしておくことが大事です。内藤さん: 業務については、親会社と同様の業務、あるいは少なくとも親和性のある業務を基幹業務として考えた方が望ましいと思います。またどういう業務を行うかによって、採用する障害種別や障害程度も異なってきます。特例子会社はコストセンターであることがあたりまえという現状を直視し、プロフィットセンターとして位置づけられるように様々な取り組みをしていく必要があると思います。とはいえ一筋縄ではいかずとても難しい課題だとは思います。障害のある社員のための仕事という発想ではなく、親会社、あるいはグループ会社で扱っていた業務をそのまま特例子会社に移管して、収益面の柱にしていくとかです。川上さん:人事、総務、経理などのシェアードサービス部門を、部分的にでなくそのまま特例子会社に集約する方法がありますよね。私のいたワールドビジネスサポートはそのやり方です。内藤さん:あるいは、別グループ会社をベースにして、障害者雇用に特化した事業部をそのグループ会社の一部門として組み入れて、全体としての収益性を確保する方法もありますね。これは私のいた東京海上ビジネスサポートで取った方法です。障害のある社員だけを集めて、障害のある社員ができる仕事だけを切り出すという発想で業務を考えてはいけないと私は思います。
川上さん:特例子会社は、障害者雇用率制度のもとで企業が障害者雇用という責任を果たすためのきわめて現実的な動機に基づいた選択肢だとお話してきました。中でも人事制度が柔軟に運用できるメリットは大きく、障害のある社員本人にとっても安心して働き続けられる、別の言い方をしますと「障害のある人が幸せに働ける」環境を整えやすいと思います。内藤さん:私も同意見です。ただそのまえにいろいろと注意しておくべきことがあると思います。特例子会社というのは、設立段階での親会社のトップや関係者が退職していくと、特例子会社の存在意義が希薄になる可能性もあります。わが社には特例子会社があるのだから、障害者雇用の課題は解決した。障害者雇用は特例子会社で特化してやってほしいというベクトルが働きがちになりますよね。そうなってしまうと、世の中の流れとは全く逆の方向性に行ってしまいます。それを防ぐためには、設立準備の段階で様々な仕組みは盛り込んでおくべきだと思います。川上さん:共生社会の実現といった社会の要請に柔軟に対応できるようにするためにも、設立段階において、特例子会社の目的や目指すこときちんと確立しておくこと、そしてそれがグループ内で承継されていく仕組みづくりがとても大事だと思います。内藤さんが設立に関わられた際、そういった工夫をされたのではないでしょうか?内藤さん:はい。その通りです。最近の特例子会社の動きを見ていきますと、たとえば親会社では身体障害者を、特例子会社では、より手厚い支援が必要な精神障害者や発達障害者をという考え方をしっかりと持ち、特例子会社だけで障害者雇用を完結させることなくグループ会社合同で障害者採用イベントを開催している企業なども生まれてきています。そのリード役はもちろん特例子会社であるべきです。
また、最近のことなのですが、特例子会社を経営している方で、ユニークは意見をお持ちの方にお会いしました。障害者雇用の様々なノウハウをストックした後には、将来的には一旦は特例子会社を解散して、そのノウハウを親会社に浸透させたいと考えているとおっしゃるのです。
川上さん:面白いアイディアですね。国が求めている「障害者雇用の質」の向上に関連し、特例子会社で雇用している社員を親会社に出向や転籍させる制度が話題になっていますが、もっとドラスティックですね。
法定雇用率を達成するという観点だけで考えても、特例子会社をつくれば障害者雇用は大丈夫と言えなくなってくるのではないでしょうか。
内藤さん:特例子会社での障害者雇用のみならず、親会社と関連会社での障害者雇用を今後どう進めていけば良いかが大きな課題です。法定雇用率を達成する、社会的責任を果たすという観点からみても、もっと特例子会社の役割を広げていかなければなりませんね。先日も特例子会社のトップの方からグループ会社での障害者雇用の始め方の相談を受けました。川上さん:特例子会社の中には、障害者雇用についてのノウハウを、特例子会社から、親会社、グループ会社へ発信し、コンサルを実施されている会社も出始めていますね。内藤さん:グループ会社担当者に同行して、ハローワークや地域障害者職業センターを訪問したり、特別支援学校との関係づくりなどを積極的にサポートしている特例子会社もありますね。川上さん;今後の特例子会社は、障害者雇用の社会的責任をグループ全体でのどのように果たしていくのか、そして障害者雇用の質の向上にどう取り組むかといった経営課題の解決において、これまで以上に重要な役割を期待されていると思います。内藤さん:私もそう思います。加えて、本来は個社で取り組むべきダイバーシティ&インクルージョンについて、自社の現状を把握し、戦略を策定していく。さらには実践においてもリーダーシップをとっていく。それこそがこれからの特例子会社の存在意義のように私は思います。
(エキスパート特別対談1からつづく)
特例子会社の経営は誰が担うのか、利益を確保するために何をすべきか
企業事情にもよりますが、設立準備プロジェクト段階から推進責任者として着任することがベストだと考えます。特例子会社の経営者になる人物が準備段階から関わることで、会社の器を作るだけでなく組織に魂を入れることができます。
内藤さん:実際にご自身が実践されてこられただけに説得力が違いますね。川上さん:DX化など社会環境の変化も非常に早く、合わせてコロナを通して企業活動そのものにも大きな変化がみられる中、特例子会社における職域も大きな転換期を迎えています。どの時代においても、本社経営陣と特例子会社の存在意義や目指すことについての価値共有をしっかりと行い、グループ内の事業において特例子会社がどの部分を担うのかといったことについて十分情報共有をしておくことが大事です。内藤さん: 業務については、親会社と同様の業務、あるいは少なくとも親和性のある業務を基幹業務として考えた方が望ましいと思います。またどういう業務を行うかによって、採用する障害種別や障害程度も異なってきます。特例子会社はコストセンターであることがあたりまえという現状を直視し、プロフィットセンターとして位置づけられるように様々な取り組みをしていく必要があると思います。とはいえ一筋縄ではいかずとても難しい課題だとは思います。障害のある社員のための仕事という発想ではなく、親会社、あるいはグループ会社で扱っていた業務をそのまま特例子会社に移管して、収益面の柱にしていくとかです。川上さん:人事、総務、経理などのシェアードサービス部門を、部分的にでなくそのまま特例子会社に集約する方法がありますよね。私のいたワールドビジネスサポートはそのやり方です。内藤さん:あるいは、別グループ会社をベースにして、障害者雇用に特化した事業部をそのグループ会社の一部門として組み入れて、全体としての収益性を確保する方法もありますね。これは私のいた東京海上ビジネスサポートで取った方法です。障害のある社員だけを集めて、障害のある社員ができる仕事だけを切り出すという発想で業務を考えてはいけないと私は思います。
特例子会社がグループ全体の障害者雇用をリードしていく
川上さん:特例子会社の最大の資源は障害者雇用のノウハウですから、それをグループ全体にどう還元していくかというテーマで様々な活動をしていくことができるということですね。内藤さん:特例子会社の人事制度を変える必要はありますが、親会社を巻き込んで特例子会社から親会社への出向、親会社への転籍という制度を作られた会社や、それを目指して徐々に実践されている会社もあります。
また、最近のことなのですが、特例子会社を経営している方で、ユニークは意見をお持ちの方にお会いしました。障害者雇用の様々なノウハウをストックした後には、将来的には一旦は特例子会社を解散して、そのノウハウを親会社に浸透させたいと考えているとおっしゃるのです。
川上さん:面白いアイディアですね。国が求めている「障害者雇用の質」の向上に関連し、特例子会社で雇用している社員を親会社に出向や転籍させる制度が話題になっていますが、もっとドラスティックですね。
内藤さん:そうなんです。でも考え方には大賛成です。本来のダイバーシティ&インクルージョン、あたりまえに職場の中に障害のある人が働いていくことができる社会、共生社会の実現に向けた特例子会社というのが、そもそもの障害者雇用の基本理念だと思います。川上さん:来年(令和6年)4月には法定雇用率が2.5%になり、その翌年は除外率の引き下げが予定されています。そして令和8年には2.7%にまた法定雇用率が引き上げられます。
法定雇用率を達成するという観点だけで考えても、特例子会社をつくれば障害者雇用は大丈夫と言えなくなってくるのではないでしょうか。
内藤さん:特例子会社での障害者雇用のみならず、親会社と関連会社での障害者雇用を今後どう進めていけば良いかが大きな課題です。法定雇用率を達成する、社会的責任を果たすという観点からみても、もっと特例子会社の役割を広げていかなければなりませんね。先日も特例子会社のトップの方からグループ会社での障害者雇用の始め方の相談を受けました。川上さん:特例子会社の中には、障害者雇用についてのノウハウを、特例子会社から、親会社、グループ会社へ発信し、コンサルを実施されている会社も出始めていますね。内藤さん:グループ会社担当者に同行して、ハローワークや地域障害者職業センターを訪問したり、特別支援学校との関係づくりなどを積極的にサポートしている特例子会社もありますね。川上さん;今後の特例子会社は、障害者雇用の社会的責任をグループ全体でのどのように果たしていくのか、そして障害者雇用の質の向上にどう取り組むかといった経営課題の解決において、これまで以上に重要な役割を期待されていると思います。内藤さん:私もそう思います。加えて、本来は個社で取り組むべきダイバーシティ&インクルージョンについて、自社の現状を把握し、戦略を策定していく。さらには実践においてもリーダーシップをとっていく。それこそがこれからの特例子会社の存在意義のように私は思います。
内藤 哲 様
1975年東京海上火災保険株式会社入社。
東京海上時代は、企業営業や営業推進の部署を歴任、経営企画部CSR部門にも在籍。
2006年グループの人材派遣会社((株)東京海上日動キャリアサービス:TCS)の人事総務部に転籍後、障害者雇用を担当。
東京海上グループの特例子会社(東京海上ビジネスサポート(株):TMBS)の創設に携わり、2010年1月新会社設立、同年3月特例子会社の認可取得。大阪支社長(名古屋支社長、採用能力開発部長兼務)を務め、2016年9月TMBS社退職。
2019年4月より、公益社団法人全国障害者雇用事業所協会(全障協)大阪相談コーナーで相談業務を担当。
川上 知之 様
1982年株式会社ワールド入社。ワールド時代は、経理、人事、オフィスサービス等を担当。
2004年4月ワールドグループの特例子会社(株式会社ワールドビジネスサポート)設立と共に代表取締役社長に就任(2004年~2016年)。
2016年9月株式会社ワールド退職。
2017年6月より、公益社団法人全国障害者雇用事業所協会(全障協)大阪相談コーナーにて相談業務を担当。
ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。