株式会社JFRクリエ(大阪府高槻市)
皆さん、こんにちは。
今回の訪問は、株式会社JFRクリエです。
技能五輪国際大会の見学と組み合わせた関西「遠征」の日程を考えていた時に、ダイキンサンライズ摂津の澁谷栄作社長から「もう一社、どこかいかがですか?」とお誘いをいただき、「距離的に近くて、異なる業種の会社で」という点から、10月14日、訪問させていただきました。
当日は、澁谷さんにご案内いただいて、JR高槻駅前の松坂屋高槻店の建物の中にあるオフィスを訪ね、紀ノ﨑広隆社長、業務グループスタッフの小谷紘美さん(PSW・社会福祉士)、営業グループマネージャーの熊田幸裕さんにご対応いただきました。
JFRクリエの設立は、2017年4月。これまで訪問した企業の中で、最も若い会社です。
親会社は、J.フロントリテイリング株式会社。紀ノ﨑社長からは「名前を聞いても、すぐにはピンとこないでしょう?」というお話が出ましたが、大丸・松坂屋・パルコを傘下に置く百貨店業界の大手です。
これまで着実に雇用を伸ばし、現在では社員41名のうち、障害を持つ社員は、知的障害・精神障害を中心に31名となり、就職1年後の定着率も89.5%と好調です。
そして今、6年目を迎える中で、2020年に社長に就任した紀ノ﨑さんは、職域の拡大に果敢に取り組んでいます。その背景には、親会社を含め、設立当初の盛り上がった機運がひと段落して、職務の切り出しも低調になってきたことがあるとのこと。このような状況は、特例子会社の安定した経営を確保する面から大きな課題であり、歴史ある多くの特例子会社も、試行錯誤を経て乗り越えてきたヤマなのだろうと思います。
職域の拡大(=仕事の確保)に関する紀ノ﨑社長の戦略は、明快です。
それは、小ロットで判断も必要というような業務ではなく、継続的に受注でき、マーケットプライス(一般企業並みの価格)で取れる仕事を確保すること。親会社の一定の支援がある場合であっても、このような考え方は、安定した経営に欠かせないものと感じました。
実際に新たに開拓した業務のひとつは、社用スマートフォンのセットアップ作業。最近は知的障害を持つ人でもスマホを使うことが多くなっている中で、この作業は、「みんなに誇れる仕事」として人気だそうです。
もうひとつは、各店舗のレシートや伝票の点検作業です。これは、レシートや伝票を突合して、誤った手続をしていないかを確認する作業。百貨店の信頼の確保にとって重要な業務です。各地の店舗からは、大量の紙データが日々送られてきますので、まさに持続的で安定した業務量のある作業でもあります。
JFRクリエでは、働きやすさに配慮し、始業時刻を午前10時として、実働は6時間、概ね1時間ごとに10分の休憩も取るようにしているとのこと。さらに1日2回、ラジオ体操をして、集中力が続きにくいメンバーだけでなく、頑張りすぎるメンバーにも配慮しているそうです。
また、障害を持つ社員との意思疎通や社員同士のコミュニケーションを重視して、重層的にその仕組を構築しています。具体的には、
・障害を持つ社員を「担任」する指導員を決めて、半期に一度の目標設定と毎月の面談を実施
・入社年次の浅い社員に、月に一回、外部の専門家(産業カウンセラー)が面談を実施
・月に一回、全員ミーティングを開催(相互理解を深める自己紹介やグループワーク)
・社員同士で、「ありがとうカード」や「いいねカード」を活用
などの取組が展開されています。
オフィスの一角には、社員が作った模型や絵を飾るブースもあって、社員の間の話題づくりに役立っているとのこと。作品に発揮された個性は、目を見張るものがありました。
これらのきめ細やかで多様な取組は、誰か専門家が全体をデザインしたのではないか?と思い、尋ねてみると、これらも紀ノ﨑社長をはじめ、社員から出たアイデアを順次具体化してきた結果とのこと。若い会社を成長させようとする皆さんの意気込みを、ここでも強く感じることができました。
ところで、大丸・松坂屋グループの特例子会社が「大阪でも東京でもなく、なぜ高槻に?」と思って聞いてみると、松坂屋高槻店の事情とグループ全体の戦略が背景にあることがわかりました。
松坂屋高槻店で高層階にあった食堂を閉鎖することになり、そのスペースを有効活用するために、グループ数社のオフィスが配置されることとなって、JFRクリエもこの場所に本社を構えたそうです。
その結果として、JFRクリエの社員の皆さんは、グループ他社の社員と同じフロアで一緒に働くという環境に、恵まれることとなりました。
JFRクリエでは、設立5周年を記念して、「イロトリドリノコセイ」というシンボルマークを制定しました。マークは社員がデザインしたものだそうで、私は見た瞬間、思わず「きれいですね!」と一言。全国の店舗に納品される物品には、このマークを付けて、JFRクリエの存在をアピールしているとのことでした。
土屋顧問からJFRクリエの見学希望があり、紀ノ﨑社長に連絡を入れたところ快諾して頂き、私も一緒に見学させていただきました。JFRクリエとは2017年12月に当時の松林社長にお会いして以来のご縁ですが、職場を見せていただくのは今回が初めてでした。
紀ノ﨑社長から会社紹介をして頂いた後、職場を案内して貰いましたが、事業拡大のために多くの努力をされてきた事が良くわかりました。支援者の方に、大丸、松坂屋でよく目にする包装用リボンを作る職場、各店のレシートや伝票の確認をする職場等を案内していただきました。リボン作成の所では作業の正確さは素晴らしかったです。レシートの確認をする職場では、その正確さとスピードに驚きました。各職場で障害者社員の長所を生かし、大きく伸ばした良い事例が多々ありました。
わが社でも社員の長所を見つけて伸ばすのが大切だと思って取り組んでいますが、なかなか思い通りに行きません。JFRクリエさんを参考にして、もっと頑張らないといけないと思いました。
*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
今回の訪問は、株式会社JFRクリエです。
技能五輪国際大会の見学と組み合わせた関西「遠征」の日程を考えていた時に、ダイキンサンライズ摂津の澁谷栄作社長から「もう一社、どこかいかがですか?」とお誘いをいただき、「距離的に近くて、異なる業種の会社で」という点から、10月14日、訪問させていただきました。
当日は、澁谷さんにご案内いただいて、JR高槻駅前の松坂屋高槻店の建物の中にあるオフィスを訪ね、紀ノ﨑広隆社長、業務グループスタッフの小谷紘美さん(PSW・社会福祉士)、営業グループマネージャーの熊田幸裕さんにご対応いただきました。
《設立6年目、新しい展開に挑戦》
親会社は、J.フロントリテイリング株式会社。紀ノ﨑社長からは「名前を聞いても、すぐにはピンとこないでしょう?」というお話が出ましたが、大丸・松坂屋・パルコを傘下に置く百貨店業界の大手です。
これまで着実に雇用を伸ばし、現在では社員41名のうち、障害を持つ社員は、知的障害・精神障害を中心に31名となり、就職1年後の定着率も89.5%と好調です。
そして今、6年目を迎える中で、2020年に社長に就任した紀ノ﨑さんは、職域の拡大に果敢に取り組んでいます。その背景には、親会社を含め、設立当初の盛り上がった機運がひと段落して、職務の切り出しも低調になってきたことがあるとのこと。このような状況は、特例子会社の安定した経営を確保する面から大きな課題であり、歴史ある多くの特例子会社も、試行錯誤を経て乗り越えてきたヤマなのだろうと思います。
《明快な戦略で仕事を確保》
それは、小ロットで判断も必要というような業務ではなく、継続的に受注でき、マーケットプライス(一般企業並みの価格)で取れる仕事を確保すること。親会社の一定の支援がある場合であっても、このような考え方は、安定した経営に欠かせないものと感じました。
実際に新たに開拓した業務のひとつは、社用スマートフォンのセットアップ作業。最近は知的障害を持つ人でもスマホを使うことが多くなっている中で、この作業は、「みんなに誇れる仕事」として人気だそうです。
もうひとつは、各店舗のレシートや伝票の点検作業です。これは、レシートや伝票を突合して、誤った手続をしていないかを確認する作業。百貨店の信頼の確保にとって重要な業務です。各地の店舗からは、大量の紙データが日々送られてきますので、まさに持続的で安定した業務量のある作業でもあります。
《コミュニケーションをきめ細やかに》
また、障害を持つ社員との意思疎通や社員同士のコミュニケーションを重視して、重層的にその仕組を構築しています。具体的には、
・障害を持つ社員を「担任」する指導員を決めて、半期に一度の目標設定と毎月の面談を実施
・入社年次の浅い社員に、月に一回、外部の専門家(産業カウンセラー)が面談を実施
・月に一回、全員ミーティングを開催(相互理解を深める自己紹介やグループワーク)
・社員同士で、「ありがとうカード」や「いいねカード」を活用
などの取組が展開されています。
オフィスの一角には、社員が作った模型や絵を飾るブースもあって、社員の間の話題づくりに役立っているとのこと。作品に発揮された個性は、目を見張るものがありました。
これらのきめ細やかで多様な取組は、誰か専門家が全体をデザインしたのではないか?と思い、尋ねてみると、これらも紀ノ﨑社長をはじめ、社員から出たアイデアを順次具体化してきた結果とのこと。若い会社を成長させようとする皆さんの意気込みを、ここでも強く感じることができました。
《グループ他社とワンフロアで》
松坂屋高槻店で高層階にあった食堂を閉鎖することになり、そのスペースを有効活用するために、グループ数社のオフィスが配置されることとなって、JFRクリエもこの場所に本社を構えたそうです。
その結果として、JFRクリエの社員の皆さんは、グループ他社の社員と同じフロアで一緒に働くという環境に、恵まれることとなりました。
《イロトリドリノコセイ》
JFRクリエの皆さんが、同じフロアの仲間たちとともにイロトリドリに活躍し、会社もますます大きく成長されることを期待したいと思います。
~ 一緒に訪問したダイキンサンライズ摂津の澁谷栄作社長から、一言 ~
紀ノ﨑社長から会社紹介をして頂いた後、職場を案内して貰いましたが、事業拡大のために多くの努力をされてきた事が良くわかりました。支援者の方に、大丸、松坂屋でよく目にする包装用リボンを作る職場、各店のレシートや伝票の確認をする職場等を案内していただきました。リボン作成の所では作業の正確さは素晴らしかったです。レシートの確認をする職場では、その正確さとスピードに驚きました。各職場で障害者社員の長所を生かし、大きく伸ばした良い事例が多々ありました。
わが社でも社員の長所を見つけて伸ばすのが大切だと思って取り組んでいますが、なかなか思い通りに行きません。JFRクリエさんを参考にして、もっと頑張らないといけないと思いました。
《自社PR》
百貨店の「大丸」「松坂屋」、「パルコ」を展開するJ.フロントリテイリンググループの特例子会社です。
百貨店、商社、カード会社などグループ各社より40種類以上の業務を受託すると共に、より多くの障がいを持った方の活躍に向けてグループ会社の障がい者雇用の支援を行っています。
障がいにかかわらず従業員一人一人が持てる能力を発揮し、仕事を通じて成長することにより、社会に貢献できる人財の育成を目指しています。
《会社概要》
社名 | 株式会社 JFRクリエ |
主な業種 | 事務処理業務受託業 |
従業員数 | 43 名 |
うち障害者社員の人数 | 33 名 |
障害の内訳 | 身体: 1 名、知的:19 名、精神:13 人 |
URL | |
親会社の社名 | J.フロントリテイリング株式会社 |
主な業種 | 百貨店事業・SC事業ほか |
親会社のHPに障害者雇用に関する記述がある場合には、その箇所のURL | https://www.j-front-retailing.com/sustainability/materiality.html |
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)
株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 顧問
1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。