会社探訪 〜土屋喜久が訪ねた障害者雇用の最前線〜

戸田建設株式会社 

皆さん、こんにちは。
5月から顧問を仰せつかり、SACEC(一般社団法人障害者雇用企業支援協会)の仲間に入れていただいた土屋喜久と申します。
これからいろいろお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、昨年9月に厚生労働省を退職するまでの間、労働行政を中心に様々な施策の企画立案に携わり、その中で三度にわたって、障害者雇用施策を担当する機会に恵まれました。特に2004年からの3年間、障害者雇用対策課長だった時には、企業の雇用や就労支援の現場に足繁く通い、様々なことを教えていただきました。
しかし、その後、なかなか現場に伺う機会もなく、私の認識は、あの時以降ほぼ更新されていません。ですので、SACECへの仲間入りを契機に、会員企業にお伺いする機会を積極的につくって、勉強していきたいと考えています。


第一弾は、戸田建設へ

そこで、さっそく第一弾。7月8日に、戸田建設株式会社を訪問しました。
実は戸田建設とはご縁があり、昨年秋にお声がけをいただき、同社が設立した一般財団法人戸田みらい基金(*)の理事に就任しています。

* 戸田建設が拠出し、若手建設技能者の採用・育成等に助成する事業を行っています。 
   https://www.toda-mirai.or.jp/

そんな中、SACECの会員名簿に、戸田建設が載っていることを発見しました。
「特例子会社ではなく、会社本体が会員に?」と少々不思議に思いつつ、戸田みらい基金の事務局を介してアプローチ。ご快諾をいただき、バリアフリー推進課の平野初枝課長と山田武史課長代理にご対応いただきました。


会社本体で雇用を推進

戸田建設の取組の特徴は、特例子会社を設立するのではなく、会社本体で雇用を進めていることです。
10年ほど前に会社の方針を固め、各拠点の取組とあわせて、本社内にビジネスサポートセンターを設けて、知的障害者を中心に雇用を進めてきたとのことです。
今回は、このセンターを見学させていただきました。


センターには、現在16名が在籍。本社のオフィスの中で、一般の社員からよく「見える」ところで、各フロアの会議室や打合せスペースの清掃、データ入力などの事務、郵便物の仕分けなどの業務に従事しています。インクルージョンの観点から、たいへん優れた取組であると感じました。


また、清掃の作業では、CHKの標準化されたシステム(*)を取り入れ、作業の質を意識して、デザインと機能性に優れた用具を使い、てきぱきと取り組んでいる姿が印象的でした。

* 一般社団法人チャレンジドハウスキーピングシステム協会(CHK)が取り組んでいる除菌清掃システム。


BPOの影響

近年の課題としては、近年、会社の方針としてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の推進が打ち出されたことに伴い、センターが担う事務的な作業が大きく減ってしまったことだそうです。これに代わる職域の確保・拡大に、たいへん苦慮されている様子でした。
知的障害者がパソコンを駆使して、様々な事務の作業を行うことが一般化している中で、もったいないことだと思いました。


今後の展開

戸田建設では、2024年に、新しい本社ビルの完成が予定されています。最先端の機能を備えたビルの、新しいフロアプランのもとで、上記のBPOの進捗も見据えつつ、新しい社屋でどのような仕事を担っていくかが、当面の大きな検討テーマとのことでした。

また、除外率の見直しへの対応も必要になってくると考えられます。建設業は除外率の適用対象業種ですから、6月17日の労働政策審議会の意見書で打ち出された一律10ポイントの引下げは、戸田建設における障害者雇用の展開にとって、大きな節目となる可能性があります。


SACECの講座を活用

対応していただいた平野さんは、社内で総務関係の業務に携わる中で、機構変更によりセンターのメンバーと関わることになったそうです。

一方、山田さんは管理者であるとともに、指導員としても活躍されていて、「以前は何を?」と伺ったら「社内の人事異動で」とのご回答。センターのメンバーとの自然なやりとりを見て、「福祉関係に・・」といった答えを想定していた私は、ちょっとびっくり。指導員の皆さんは、すべて社内の異動でセンターに配置されているそうで、SACECの「初任者講座」がたいへん役に立っているとのお話でした。
SACECのサービスも活用していただきつつ、戸田建設の障害者雇用がますます進展することをお祈りしたいと思います。


《自社PR》

顧客や社会の多様化したパーソナルなニーズを幅広く的確に把握し、社会で必要な価値やサービスを目利きし提供するためには、多様な価値観を持つ従業員の集合体こそ当社が目指すべき姿と考えます。それには、性別や国籍、人種、宗教、スキルなどが多様な人財の活躍が必要不可欠であり、人権方針の策定やLGBTQ(性的マイノリティ)が働きやすい環境の整備など、各種取り組みを推進しています。中でも障がいのある方の雇用について、当社では個々が職場に適応・定着できるよう、個々の状態に配慮した雇用条件、職場環境を用意し、また個々の能力を考慮した仕事・職場の提供に努めるなど、継続的に障がいのある方の雇用の促進に向けて取り組んでいます。また、軽度知的障がいのある生徒の企業就労を目標とした特別支援学校を中心に、職場体験実習を受入れ、新たな雇い入れを行っています。事務作業・清掃等を行うビジネスサポートセンターを設置するなど、職域拡大や雇用定着に努め、真のノーマライゼーション社会の実現を目指しています。

《会社概要》

*掲載した資料や写真は、各社からご提供いただいたものです。
*文中の「ショウガイ」の標記については、引用部分などを除き、法令と同様の「障害」としています。
土屋喜久(つちや・よしひさ)

株式会社FVP 執行役員
一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC) 顧問
学校法人ものつくり大学 顧問

1962年生まれ、群馬県出身。
厚生労働省において、障害者雇用対策課長、職業安定局長、厚生労働審議官を務め、障害者の雇用促進に深く関わった。
同省を退職後、2022年5月、SACECの顧問に就任。
本年10月、FVP・執行役員となる。
これからも障害者雇用へのかかわりを深めていきたいと考えている。