【2025年7月25日公開】就労選択支援とは?目的や対象者など詳しく解説

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2025年10月から創設される「就労選択支援」、障害のある本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援することを目的としています。


就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所との連携により障害者雇用を推進している企業、または今後そうした連携を通じて障害者雇用に取り組む予定の企業の担当者の皆様に向けて、就労選択支援の基本的な仕組みから対象者の要件、そして具体的なサービス内容まで、わかりやすく解説いたします。

就労選択支援とは

就労選択支援は、2022年10月に改正された「障害者総合支援法」に基づいて新たに創設された障害福祉サービスです。働くことを希望する障害のある方が、自分の能力や適性、希望に最も適した福祉サービス等を選択できるよう、短期間の作業体験と専門的な評価を通じて支援する制度となっています。

従来の障害のある方の就労を支援する福祉サービスは、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)といったサービスが存在していましたが、利用者(障害者)自身がどの福祉サービスが自分に適しているかを判断することは容易ではありませんでした。また、一度特定のサービスの利用を開始すると、他の選択肢を検討する機会が限られてしまうという構造的な問題も指摘されていました。

「はたらく」というキーワードでの相談は多岐に渡り、 その相談窓口はさまざまですので、 関係機関ごとに「一般就労についての相談なのか」、 「就労系障害福祉サービスについての相談なのか」等、 本人の状況について丁寧に対応していきながら、 相談内容に応じて、 就労選択支援への利用につなげていきます。
就労選択支援では、原則として1か月(最大2か月)という短期間で集中的にアセスメントを実施し、その結果を基に本人が主体的にどのサービスを利用するのかの選択できるようになります。そしてこのプロセスには、ハローワークや相談支援事業所、医療機関など複数の関係機関が連携して関わりますのでより客観的で総合的な評価が可能となります。

就労選択支援の目的、経緯と背景

就労選択支援の最も重要な目的は、障害のある方が自分自身の働き方について深く考え、納得のいく選択ができるよう支援することにあります。厚生労働省の資料では、「働く力と意欲のある障害者に対して、障害者本人が自分の働き方を考えることをサポート(考える機会の提供含む)する」と明記されており、あくまでも本人の主体性を重視した制度設計となっています。

具体的には、個々の希望を丁寧に聞き取り、専門的な「就労アセスメント」(職業評価)という手法を用います。これにより、その方の能力や得意なこと、仕事をする上で必要となる配慮事項などを、本人と支援者が共同で一つひとつ整理していくのです。このプロセスを通して、障害のある方が心から納得のいく職業選択や、能力を最大限に発揮できる適切な福祉サービスの利用へとつなげていきます。



この制度が創設されるに至った背景には、就労系福祉サービスの利用において、本人の真の能力や希望が十分に反映されないまま、サービスの選択が行われてしまうケースが多く見られたことです。

さらに、福祉施設での就労から一般企業への就労への移行率が低いという課題も存在していました。就労継続支援B型事業所から一般就労への移行率は年間10.7%(令和4年)にとどまっており、潜在的に一般就労が可能な能力を持つ方が、適切な機会や情報の不足により、福祉的就労に留まっているケースが少なくないことが明らかになっていたのです。

参考:厚生労働省|就労選択支援に係る報酬・基準について≪論点等≫
参考:厚生労働省|就労支援施策の対象となる障害者数/地域の流れ

対象となる障害者と利用開始時期について

就労選択支援の対象者は、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)といった就労系障害福祉サービスの利用を希望している障害のある方、またはすでに利用している方となります。障害の種別や程度による制限はなく、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病など、幅広い障害のある方が利用可能です。上の表を補足するような形で、文章を整えてください
就労選択支援のサービスは2025年10月1日から、段階的な実施が計画されています。
まずは、新たに就労継続支援B型の利用を希望する方については、原則として事前に就労選択支援によるアセスメントを受けることが必要となります。

2027年4月以降は、対象がさらに拡大され、新たに就労継続支援A型の利用を希望する方や、就労移行支援の標準利用期間である2年間を超えて継続利用を希望する方も、原則として就労選択支援の利用が必要となる予定です。

一方で、50歳以上の方や障害基礎年金1級受給者、過去に一般企業での就労経験がある方については、本人の希望により就労選択支援を利用せずに就労継続支援B型を利用することも可能です。また、特別支援学校の在学生については、卒業後の進路選択に向けて、在学中から就労選択支援を利用できる仕組みも整備されています。

また、以下の場合は就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経た就労継続支援B型の利用が認められます。
・ 最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に就労選択支援事業所がない場合  
・ 利用可能な就労選択支援事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合

就労選択支援利用の流れ

就労選択支援の利用は、まず利用申請を行い、利用決定を受けた後、就労選択支援事業所と契約を結びます。

サービス開始後は、専門スタッフによる詳細なアセスメントが実施されます。このアセスメントでは、利用者の就労能力、職業適性、生活状況などを総合的に評価し、個別のニーズを把握します。評価期間は原則として6か月以内とされています。
アセスメント完了後は、その結果に基づいて就労移行支援、就労継続支援A型・B型など、最適な就労系サービスの選択についてアドバイスを受けます。事業所からの意見書も参考に、利用者自身が今後の進路を決定し、適切な就労支援サービスへと移行していく流れになります。

就労選択支援のサービス内容は?

就労選択支援が提供するサービスは、単なる職業適性検査や面談にとどまらず、実際の作業体験を通じた包括的なアセスメントを中核としています。このアプローチにより、障害のある方の真の能力や可能性を多角的に評価し、本人にとって最適な福祉サービスの利用を検討(選択)することがが可能となります。

サービスの提供期間は原則1か月間で設計されており、この期間内に作業体験、面談、関係機関との連携会議、アセスメント結果の作成と共有といった一連のプロセスが実施されます。必要に応じて2か月まで延長することも可能ですが、あくまでも短期間で効率的に実施することで、利用者の負担を軽減しながら、質の高い評価を行うことを目指しています。

以降では、就労選択支援の具体的なサービス内容について、詳しく見ていきましょう。

就労選択支援のサービス内容

就労選択支援で提供される具体的なサービスは、障害のある方が適切な職業選択を行えるよう、多段階で包括的なアプローチを取ります。その内容は、主に以下の4つの柱で構成されています。
1.作業場面等を活用した状況把握(アセスメント)就労に関する適性、知識や能力の把握、就労に関する意向の整理
サービスの中心となるのは、実際の職場環境を想定した作業体験です。パソコンを使った事務作業、軽作業、清掃作業、接客対応など、多様な作業を体験することで、利用者の作業遂行能力、集中力の持続性、指示理解の程度、作業の正確性などを客観的に評価します。
この評価プロセスでは、単に「できる・できない」という二元的な判断ではなく、どのような環境や条件下であれば能力を発揮できるか、どのような配慮があれば課題を克服できるかという視点で分析が行われます。たとえば、騒音に敏感な方であれば静かな環境での作業が適している、視覚的な指示があれば理解しやすいなど、具体的な配慮事項が明らかになります。

2.多機関連携によるケース会議の開催
就労選択支援の大きな特徴は、複数の専門機関が連携してケース会議を開催することです。このケース会議には、利用者本人とその家族のほか、相談支援専門員、ハローワークの担当者、必要に応じて医療機関の専門職、現在利用している福祉サービス事業所の職員などが参加します。
会議では、作業体験で得られた評価結果を共有するとともに、各機関が持つ情報や専門的見地からの意見を交換します。医療的な配慮が必要な場合は主治医からの助言を得たり、家族から日常生活での様子を聞き取ったりします。

3.アセスメントシートの作成 
収集された情報を基に、利用者一人ひとりに合わせたアセスメント結果が作成されます。このアセスメントシートには、作業能力の評価だけでなく、本人の就労に対する希望や意向、生活リズム、通勤可能な範囲、家族の支援体制など、就労に関わるあらゆる要素が記載されます。
完成したアセスメント結果は、利用者本人と家族に丁寧に説明され、共有されます。この際、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明することが重視されており、本人が自身の特性を正しく理解し、主体的な選択ができるよう配慮することが求められています。

4.事業者等との連絡調整
就労選択支援では、地域の雇用情報や利用可能な福祉サービスに関する情報を継続的に提供することも重要な役割となっています。地域にどのような企業があり、どのような職種で求人があるのか、各福祉サービス事業所がどのような特色を持っているのかなど、進路選択に必要な情報を幅広く収集し、利用者のニーズに応じて提供します。
また、アセスメント結果を踏まえて、利用者が希望する進路を実現するための具体的な調整も行います。福祉サービスの利用を希望する場合は適切な事業所との橋渡しを行い、一般就労を希望する場合はハローワークと連携を行うなどします。

就労選択支援の実施主体は?

就労選択支援を提供する事業所は、新規に立ち上げられる専門機関ではなく、既存の障害者就労支援の実績を持つ事業所が中心となって担うことが想定されています。これは、これまでに蓄積された支援ノウハウや地域との連携体制を最大限に活用し、質の高いサービスを提供するための現実的な選択といえるでしょう。

具体的な実施主体としては、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所(A型・B型)のほか、障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体が設置する就労支援センター、障害者職業能力開発訓練事業を行う機関などが挙げられています。
実施主体となるためには、「過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用された実績がある」という要件を満たす必要があります
また、就労選択支援事業所には、地域の就労支援ネットワークへの積極的な参加も求められています。自立支援協議会への定期的な参加やハローワークとの連携を通じて、地域の雇用情報や支援資源に関する最新情報を収集し、利用者に提供することが義務付けられています。

人員配置は、利用者15人に対して1人以上の就労選択支援員を配置することが基準となっており、就労選択支援員は、専門的な養成研修を修了した者でなければならず、高い専門性が要求されています。研修では、アセスメントの手法だけでなく、障害特性の理解、労働法規の知識、企業との連携方法など、幅広い内容が扱われる予定です。

まとめ

2025年10月から開始される「就労選択支援」は、障害者総合支援法の改正により新たに創設された障害福祉サービスです。
実施主体は既存の就労移行支援事業所等が中心となり、多機関連携によるケース会議やアセスメントシート作成を通じて、利用者の能力や希望に最適な進路選択を支援します。
就労選択支援の創設によって、既存サービスとの連携も変化する為、障害者雇用に関わる企業や支援機関の関係者は、新しい制度として着目しておく必要があるでしょう。

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