障害者の離職状況、離職を防ぐためには?
1. 導入
しかし実際には、配属部署で周囲とコミュニケーションをとりながら、数年、10数年と安定して就業している方が多数いらっしゃいます。
ここでは障害者雇用の状況を知り、障害者の離職を防ぎ、安定して就業してもらうために企業ができることをまとめました。
2 .障害者社員の離職状況
また、障害者雇用率制度においては、障害者とは障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害保健福祉手帳)を所持している方をいいます。企業が障害者採用、障害者雇用の文脈でいうときは、この障害者雇用率制度でいう障害者、つまり障害者手帳を所持している方を指します。
現在、障害者手帳を所持している方はどのくらいいるのでしょうか。
資料1に身体障害者手帳交付大腸登載数(身体障害者)、療育手帳交付台帳登載数(知的障害者)、精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数(精神障害者、発達障害者)の平成23年度から令和元年度までの人数の推移が書かれています。
ご覧のとおり、身体障害者は微減、知的障害者は微増に対して、精神障害者(発達障害者も含む)の人数は約2倍と大きく増えているのがわかります。 では、障害者の就業状況はどうなっているでしょうか。
平14年から令和2年までの民間企業の障害者雇用の人数推移を示した表があります(表2)。平成14年の段階で、民間企業の障害者雇用者数は24.6万人(身体障害者21.4人、知的障害者3.2万人、精神障害者は平成18年からカウント(平成18年は1918人))、実雇用率は1.47%でした。
翻って令和2年の雇用者数を見ると、民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は57.8万人で、前年より1.7万人増加(前年比3.2%増)し、17年連続で過去最高となりました。
内訳は、身体障害者が35.6万人(対前年比0.5%増)、知的障害者が13.4万人(同4.5%増)、精神障害者は8.8万人(同12.7%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きいことがわかります。
実雇用率は、9年連続で過去最高の2.15%(前年は2.11%)、法定雇用率達成企業の割合は48.6%(同48.0%)でした。 では、障害者の職場定着はどのような状況なのでしょうか。
資料3では、障害種別の職場定着率を入社から1年後にわたってまとめられています。
それによれば、入社3か月時点で高い順に知的障害(定着率85.3%)、発達障害(同84.7%)、身体障害(同77.8%)、精神障害(同69.9%)ですが、1年後になると、発達障害(同71.5%)、知的障害(同68.0%)、身体障害(同60.8%)、精神障害(同49.3%)と、精神障害の離職率が大きいことがわかります。
3.障害者の離職理由
個人的理由の主なところでは、「職場の雰囲気・人間関係」、「賃金・労働条件の不満」、「仕事内容があわない」等が身体障害、精神障害ともに上位にきます。
一方で、「症状が悪化した」、「障害のため働けなくなった」という理由も2割を超えます。
それに対して、改善が必要な事項としては、「調子の悪いときに休みを取りやすくする」、「コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置」、「能力が発揮できる仕事への配置」、「短時間勤務といった時間の配慮」等が挙げられています。
4. 障害者雇用を取り巻く環境
業績の変化は企業の業態や主業務の変更、新しいことへの取り組みを促し、働き方では、社員のテレワークを押し進めました。業務の自動化、電子化が進み、社員間でのコミュニケーションが大きく減ったことは否めません。
この変化は、障害者にマイナスの影響が大きくなりました。業務面でいえば、「これまで行っていた仕事が減った、またはなくなった」「新しい仕事が用意できない」。マネジメント面でいえば、「体調不良や不安の高い障害者社員が増えてきた」「対面でのコミュニケーションが減少した」。
そのような逆境のなか、どうしたら自社の障害者社員に少しでも長く就業し、活躍してもらえるのか、多くの企業の共通の課題といえます。
5. 離職を防ぐ その1 採用時
(1)選考過程に職場実習を入れる
また、採用する企業側では、プロフィールシート等の書類や短時間では見えない応募者の性格や特性、得手・不得手な点等を確認するようにします。
(2)選考ではスキルだけでなく、就業準備性を確認する
(3)支援者から話を聞く
6. 離職を防ぐ その2 入社後のマネジメント
(1)体調管理を記録する
毎日の体調を記録することは、体調の悪くなるタイミングを知ることができ、対処方法が見えてくるようになります。
(2)業務指示
障害者の離職率を下げるために忘れがちなのが「指示の分かりやすさ」です。職種により業務フローは異なりますが、雇用した障害者に担当してもらう業務は作業工程や手順書などを用意したほうがよいでしょう。作業が明確になるため、就労する障害者が混乱することを防ぎ、業務の効率化も望めます。
② 指示を出す人を決める。
いろいろな人から仕事の指示がでる、指示の内容が人によって違う、複数の仕事を指示されて優先順位が立てられない、といったことはする元です。
(3)定期的な面談
・人間関係や業務で困っていることはないか
・業務日報で気になった点などを確認してみる
・その他、作業進捗や改善すべき点を話し合う
1回の時間は短くても、回数を行うことをおススメします。
(4)社内の理解
※障害の状況をどこまで共有すべきか
雇用した障害者の障害特性や必要な配慮に関して、配属部署へ共有する際に、どこまでの情報を開示・共有すべきか、チームメンバーにどのように理解をしてもらうかはなかなか難しい課題です。
必要なことは、障害の名称を共有するのではなく、業務を遂行する上で支障となることは何か、と、そのための配慮の仕方を共有することです。業務に支障のないことは、必ずしも共有する必要はありません。配慮がないと業務を進めるうえで支障が出る可能性があることを周知したうえで、配慮の具体的な内容を、人事あるいは所属長からマネジメント担当者、いっしょに仕事をすることになる人に伝えましょう。
その際は、事前に障害者本人と相談し、障害者本人が仕事をしやすくするという目的と誰にどこまで開示するか確認して進めましよう。
7. 離職を防ぐ その3 支援者との連携
(1)障害者就業・生活支援センター
(2)地域障害者職業センター
(3)就労移行支援機関
8.まとめ
障害をもつ社員とコミュニケーションをとり、支援機関とも連携する、本人も自分の障害を受容し、体調の波をできるだけ小さくするよう努力する。お互いが努力することで定着の先の活躍を目指しましょう。
ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。障がい者雇用に関するご相談メール info@fvp.co.jp
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